浄土真宗本願寺派能登半島地震支援センター・センター長
川井周裕さん

第40回 宗援連情報交換会 「能登半島地震支援活動の新たな展開」

島薗(司会):能登半島地震が1月1日に発生しましたが、2月18日、4月1日に続き、今回は3回目の情報交換会となります。この間にも、事態は展開しております。私も3回目、4/30-5/1に伺いました。初めて珠洲市にまいりましたけれども、なかなか大変な状況でございます。現地で支援活動に携わっておられる方のお話を聞きながら、宗教者ならでは支援活動がどのように展開されているか。そのようなお話を伺ってまいります。

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1)川井周裕さん(浄土真宗本願寺派能登半島地震支援センター・センター長)

浄土真宗本願寺派の災害後対応について

1日直後から状況把握を行い、現在第40次復興支援隊が出動。宗派の教徒職員を派遣して頂き、随時情報収集や支援活動を行っている。また、宗派で設置の「たすけあい運動募金」から、災害義援金を5日から金沢市の石川教区に現地本部を設置し、宗派内の護持院における被害状況把握に努めてきた。同時に、能登半島地震支援センターを設置。現在、被災教区に応じたボランティア活動を展開している。

1月6日、能登町の本願寺派寺院へ5時間半かけて支援物資をお届けさせて頂いた。そこから要望を聞きし、物資搬送や清掃活動に随時入らせて頂いた。富山県高岡教区は液状化現象により本堂や山門が傾き、本堂は倒壊寸前。能登町では本堂の寸前まで津波が来た。

1月8日から支援センター長として金沢市内に着任した。本願寺宗派の活動は、当初支援物資の搬送がメインだったが、岐阜県亀山建設の協力を頂いて建物の応急処置や、独自の活動で片付け作業やブロック塀撤去を行った。引き続いて、近隣から片付けの要望を集めながら作業に回った。

スリランカ大使館の方々への炊き出し、能登町では在宅避難者に向けた物資提供。老人ホームへはニーズをお聞きし、支援センターから物資を搬送した。震災当初はおむつ等の提供がなく、直接にお届けさせて頂いた。現在、様々な問題が出てきている。

宗教法人また門徒宅について、行政の対応がまちまちということがある。門徒宅については、特に半壊以上は公費解体と進められているが、公費解体の場合はボランティアが入れないと聞いている。また過疎地域化が進んでいるのが現状。公費解体前の片付け、必要品の搬出・家財道具の片付け等を手伝うなどで宗派の対応を行っている。

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稲場:公費解体に関しての行政による対応がまちまちであるとのことですが、具体的に対応により困っていることがあれば、教えて頂きたい。また、宗教法人だからということで行政から一般宅とは異なる対応を迫られた等の具体的な事例はあったか。

川井:公費解体を行う場合、行政の税金を使用せずに解体を行うということで、片付けについては税金の二重使いになるのでボランティアを入れないという話を聞いた。そこで我々が、特に独居年配者の門徒宅の片付け手伝いに入っているのが現状。

宗教法人については、罹災証明書が発行されないことがまず問題。本堂、庫裡、付属建物、鐘楼、山門。こちらについては行政の方々があまり理解されていないので、罹災証明書がまず出ないということがほぼ現状。これが一番の課題となる。全日本仏教会等を通じての対応でいま動いている。墓地については、所有者が関わってくるので、修復が問題となる。第2回でご参加の真宗大谷派能登教務所竹原さんと相談しながら、応急処置や修繕について進めている。

稲場:自治体により対応が異なることは私も伺っている。公費解体については、宗教法人を含めた公益法人へ一律に差別なく適応されていくということで罹災証明の発行を渋っている。現場職員の理解不足も問題となっている。

川井:能登町、穴水町、志賀町では宗教法人の本堂と付属建物についても罹災証明が出たが、他の自治体では罹災証明は出せないとの返答だった。

島薗:本願寺の支援センターでは、被害寺院への支援か中心であると考えてよいか。

川井:はい、石川県内の本願寺98か寺への支援が中心となる。各お寺の住職からも、仏具等に関しても専門性のある僧侶が扱って頂きたいという要望がありますので、まずはお寺をず中心に支援活動を行う。そして近隣の門信徒へ広げていく。随時そのような進めている。地域的には、氷見から志賀町、穴水町、珠洲市の南側、能登町までは活動範囲となる。宗派内である程度の目途がたてば、大谷派とも連携をとって進めていきたいと考えている。

池田:参加させて頂き、お世話になりました。川井さんの川井さんのコーディネート力やブロック塀を外す技など経験が豊富であり驚いた。これまで災害支援活動でのご経験は。

川井:ボランティア元年といわれた阪神淡路大震災、福井豪雨、中越地震、中越沖地震、熊本地震、平成30年7月豪雨、他にも被害の大きい災害では随時現場で対応させて頂いた。

島薗:支援活動について、今後の見通しは。

川井:本願寺の中が片付いたから撤収という訳ではなく、長期的に関わっていくことになると思う。こちらは真宗王国とも言われますので、大谷派のほうも活動はされているが、今後は連携しながら行っていくと思う。

御手洗(東本願寺派教学研究所):津波で全壊した寺院が2か寺はそれぞれご住職がなくなっている。そのような中で法要、特に新盆の報恩講をどうするのかという話はあがっているか。

川井:門信徒の被害が多く、そういった話はまだ出ていない。門徒さんの所在も把握できていない状況が続いている。携帯も持たずに出ている場合もあり、どの避難所にいるかも分からない。その後に、1.5次避難2次避難となり、各寺院で門徒の把握ができていないことが今回の一番だと思う。

以上