園崎秀治氏「社協の災害ボラセンの活動と宗教者との連携」

宗教者災害支援連絡会第28回情報交換会

2017年1月9日(月・祝)14:00〜17:40

於 東京大学仏教青年会ホールA・B

報告

園崎秀治氏

(全国社会福祉協議会地域福祉部全国ボランティア・市民活動振興センター副部長)「社協の災害ボラセンの活動と宗教者との連携」

稲場氏)園崎さんは、災害が起きた際に、災害ボランティアセンターを立ち上げる活動のバックアップ、人材育成に従事された。

園崎氏)フェイスブックにて、稲場さんとご縁をいただき、今日の場をいただいた。

本日は災害ボランティアセンターのこと、また、社協とは何なのかをあわせてお話しする。

自己紹介

1994年~2005年 総務部人事担当

2005年~2012年 ボランティアセンター 中越地震から

2014年~ 再度現職

災害発生時には、先遣として現地入り。

混乱の中に見極めをし、これまでに107の災害ボランティアセンターを回ってきた。

中越地震以降10年以上にわたって担当。

(熊本地震において)

・支援P(災害ボランティア活動支援プロジェクト)運営支援の調整 → 約900人/日

・社協ブロック派遣の調整 → 約6,700人/日

・全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)運営。

・災害ボランティアセンター関連の研修会の企画・実施。

私自身は、無宗教の家に生まれ、宗教と縁がなかったが、子どもの誕生以後仏教関係、宗教関係の方に研修会で顔をあわせるようになった。

台湾地震における宗教者が支えた支援

最初に接した地震。発生直後に派遣され、ビルの倒壊時に現地入り。

支援金を届けるために入る。

1999年9月21日 マグニチュード7.6 「台湾中部大震災(921集集大地震)」

死者:2,415人

印象に残ったことは、宗教者が寝食を忘れて支援している現場。

台湾には日本のように、社協もなく、軍隊以外に特に宗教者の姿が目立っていた。

災害ボランティアセンターを通じた被災者支援

地震・台風・大雨・噴火など、様々な中規模・小規模の災害は、全国各地、無数に発生している。行政の支援だけではどうにもならないことから、ボランティアの必要性があり、災害ボランティアセンターの設置が必須となった。

災害ボランティアセンターの起源

阪神・淡路大震災「ボランティア元年」

1995年 阪神淡路大震災

1997年 ナホトカ号重油流出

1998年 福島・栃木水害、高知水害において「水害ボランティアセンター」を設置。

現在のような協働型災害ボランティアセンターが整ってきた。

・ボランティア・市民の力を活かすため。

・2004年の中越地震以降、被災地域の自治体ごとに社会福祉協議会が中心になって災害ボ

ランティアセンターが設置されることが一般化。

・東日本大震災以降、「公的化」が進んでいる。

・「公的化」は本当にいいのであろうか。

・法律で定められているわけではなく、腹をくくってやっているので限界がある。

・ハブになるのは確かであるが、どう他のボランティア団体と連携するのかが重要。

特に、東日本大震災において、社協がその運営主体となり、196箇所のボランティアセンターを設置。普段からボランティアマッチングを得意としてきた社協ではあったが、福祉が中心のため、災害支援に対する経験が不足していた。また、地域によっては、社協の人員が2〜3名のところもあるので、なかなか心が定まらなかった。しかし、経験の蓄積によって、行政からの公的な要請で社協が動く役割におさまっていった。

災害時、ボランティアセンターに多くの情報が集まる事実があり、支援のハブになっていくことは明らか。ただし、社協だけでは限界があるため、他組織と連携して手厚い支援を形にしていく必要があると常に感じた。

災害ボランティアセンターの三原則

「被災者中心」「地元主体」「協働」

社協が災害VCを運営する意味

・地域を基礎に活動を展開

・地域福祉を推進する団体としての機能・事業

・全国的なネットワークを有する組織

一方、社会福祉協議会の法的な位置づけは、多様な社会福祉に携わる組織で、さまざまな組織が関わるため、協議会と名付けられている。

全国段階での支援とネットワーク

災害支援

災害によって、被災範囲や、地域特性があり、季節での影響もあり、支援の仕方は多種多様のため、重層的知見をもとに、次の災害に備えている。

社協のネットワーク

社協の社会的認知によって、社協に連携してくれる大きな組織(日本赤十字社、ピースボード、日本生協連など)がでてきている。その中でも宗教の災害支援団体(SeRV、ひのきしん隊、全国曹洞宗青年会、全国日本仏教青年会)も研修会に参加してきている。

「災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)」

・中越地震の検証作業を契機に、2005年1月に中央共同基金会に設置

・企業、NPO、社協、共同基金会が協働し、円滑な支援の実現のなめに、人材、資源・

物資、資金の有効活動を促す仕組みづくりと環境整備

「全国災害ボランティア活動支援ネットワーク(JVOAD)」

・近い将来に起こるといわれている大震災や集中豪雨などに備えるため、2013年7月から

民間セクターと行政等で、平時から連携できる体制づくり

・被災地行政は、被災者の厳しい声にさらされることが多い。行政と住民とをつなぐため

の組織としても有効

・平成28年11月に特定非営利活動法人を取得

災害に際して、現地の情報を整理し、伝えていく災害ボランティアセンターの人が必要になってきている。災害ボランティアセンターでは、まったく今まで関係がない人とも、JVOADを通し、支援の濃淡の情報を的確に伝え、支援の少ないところに派遣できるように取り組んでいる。

しかし、行政と社協はあまり情報が共有できていない状況のため、他組織との連携会議を設定することで、行政の方も加え、直近の情報をシエアできる場が作られはじめている。

災害ボランティアセンターの運営における宗教関係者との連携

宗教者にしかできない支援があり、また、寺院や信者などは全国にいるので、ネットワークができている。そうした宗教関係者との協働が必要。研修などに宗教関連団体に参加してもらうようになってきた。連携を密にして協働することが増えてきた。

・災害ボランティアセンターの運営支援

・団体での災害ボランティア活動への参加

・重機専門ボランティア活動での連携

・被災者への行茶活動 等

宗教者との連携を考える上で、例えば、仏壇が倒れているなどの、被災者の悩みに、宗教者の役割は大きい。

真如苑(SeRV)は災害ボランティアとして現地で活動してくださっているが、被災地からとても評判がよく、また信者さんが全国にいるので、研修会にも参加していただき、ご縁を深めている。

天理教(ひのきしん隊)も、重機を扱える方々がいて、ボランティアセンターでも活躍。災害ボランティアセンターの中でも、かなり密に宗教者との連携がとれてきている。なかでも、繰り返し支援をしてくれる中心を担う方たちが集まってきている。そのため、ボランティアセンターを情報源として、様々な組織の方に活用していただきたいという願いがある。さらに、被災者への傾聴ボランティアとして協力を宗教者の方にいただいてる。

多様な支援を行うための連携

社協として多様な支援をしたいが限界がある。災害が発生すると、先ず、社協の災害ボランティアセンターが大きな注目がされるようになり、マスコミも押し寄せる。大量のボランティアが全国から来るが、地震発生直後は、出来る活動が限られているため、すぐには動けない。

・「公認災害VC」的風潮が問題となっているのではないか。

・一般ボランティアを中心とした窓口である社協災害VCは、活動内容等に一定の方針(制限)をせざるをえない

例)鳥取地震の際のニーズとして、「ブルーシートを貼ってくれ」というものであったが、こうしたことは一般ボランティアにはお願いできない。専門的な建築関係のところに打診して対応してもらう。

・直後の「熱」があるボランティアではなく、中長期的なボランティアとしての役割を冷静に考えていく必要がある。

・専門性のあるボランティア活動のための調整役としての機能・連携が必要

あらためて協働とは

災害ごとに、まったく様相が異なるため、マニュアル化しにくい状況。協定を結んだり、マニュアルを策定しても、いざというときに発動されていないことも多々起こっている。

構成員が主体性をもって考えたり、動かないとストップしてしまうことを意味する。

「マニュアル」「協定」は、『考え方ガイド』であるべき

・書き込みすぎのマニュアルは動きを制限する。

・自発的にどれだけ動ける人がいるか、普段からどれくらい議論しておけるかが大事。

・ものや形を作ることにこだわったとしても、災害時にはあまり役に立たない。

公助・共助の役割・機能、官民連携の意味

公的サービスの都合のよい補完になっていないか。

行政からの支援が「指示待ち」の素人。知恵のあるところ(民間)に人が頼ってくる。

例)災害ゴミの問題

制度に関する保障などの基礎知識

地元の生業を阻害していないか

宗教者の役割として考えること

・被災者の心のケアがかなり大事で、心の専門のボランティアも必要である

その役割として、宗教は重要。

・ボランティアの精神は、宗教と共通することが多くある

菩薩の四摂法の実践の大切さ

・「死」と向き合うことを積極的に位置づけてきた宗教の役割が大事

中村元先生も、死に対して“退化した”現代文明にいる私たちに必要なことを教えてくれている。

稲場氏)熊本地震の際に、SeRVと現地入りし、新たなボランティアセンターの立ち上げにも関わらせていただいた。現地の社協、支援Pの方々が、連携して活動しているのを見た。一方で、うまく連携がとれない現状もありました。

質疑応答

Q.京都市右京区のケースについて、地域の学区の社協はどの程度市の社協と関わりを持っているか。地域の防災訓練で炊き出しにきているが、社協のボランティアセンターとの違いは?また、毎年のようにメンバーが代わっていくが、どういう役割分担がなされているのか?(野宮神社懸野氏)

A. 京都は災害ボランティアセンターの常設化をしている特殊な地域です。社協職員を中心としているため、地域(学区)社協との関わりは、区ごとに違うかもしれない。運営協力を仰ぐだけの関係をもっている地区もあれば、ただボランティア活動の依頼をするだけの地域もある。それぞれで違いがある。市と区の違いは現地で伺っていただくのがよいのでは。

Q.全社協より災害対策、行動計画を出されていると思いますが、熊本地震でその方針はどのように役にたったか。宗教団体との連携を全社協ではあまり打ち出してはいないと思うが、本日の発表と少し違うのではないかと、いかがでしょうか?(浄土宗 石田氏)

A. 私の印象は中越地震以降進化し続けてきた災害ボランティアセンターの他組織との連携が、何年も前に戻ってしまったという感覚があった。これは方針の問題というより、地域性というものが大きく影響している。普段からどれだけ他の組織との連携をとっているかがそのまま災害時に表面化する。全社協全体の行動計画の打ち出し方に関していえば、無数にある社会資源を列挙して連携先にあげることはできないのが実際。対して、ボランティアセンターは社協のフロントと言われており、福祉関係者以外とも幅広い連携を行うことを目標に掲げているが、全国のNPOや宗教団体も含めて全社協でアンケート調査したとき、宗教関係者に対して実はあまりつながりを求めてないことがわかった。そのため、研修会にお坊さんなど宗教関係者の皆さんにできる限り参加いただき、お寺とも連携がとれるようにと平時から工夫している。社会資源の活用という観点から、お寺なども考えていかなければならない。ボランティアセンターでは、しっかり連携を今は強めていく必要性があると感じている。

稲場氏)熊本での調査を含めて渥美先生からもコメントをいただければ。

渥美氏)園崎さんの話を聞いて、なんで熊本はこうなってしまったのかと、現場で感じた。中越地震以降、他組織との連携を強めてきたことをお話しの内容からわかる。しかし、社協さんの考え方として鳥瞰図(俯瞰図)をみたくなり、目の前の支援に対して動けなくなってきているのではないか。それは組織を作ろうとしてしまっている結果かもしれない。ボランティアセンター中心といいながら、地元主体ということで、地元に責任を押し付けている感もある。協働ということで、枠の外に対して、連携や協力をとる姿勢が少ないのではないか。

・記録はしっかりとっておいたほうがよいのではないか。学者の人たちがインタビューし記録を残している反面、社協で写真記録などをとっている人はいないのではないか。

・文字にしていくことも大事。

・つながらないことを考えてみてはどうか。例えば、重機のことで、ひのきしん隊とだけと連携していくと公言してみる方法もあったのでは。

・支援Pの中で見られるが、社協の中で認められたと思い、暴言をはく人がいる。この場は、公認でないことを伝えたほうがよい。

・ボランティアセンターを手放すという選択肢も考えてみてはどうか。

Q.地元の社協をどうしていきますか。ニーズ表はなんとかならないか。(渥美氏)

A.BCPの観点からも、社協は平時の業務でとめることができない業務があるわけで、それを外部支援者が支える視点が必要と考えている。

ニーズ表はとりかたも含めて課題が多いと問題を感じている。過去の内容を参照にして使い回している状況。被災者の必要としているものを知るのにこの一律のやり方でよいのか、現在の悩みの種。