総合討論

第39回 宗援連情報交換会「能登半島地震における宗教者による支援活動の広がりと現状」

8)総合討論

島薗:稲場さんは現地に8回も入られたということで、最近の状況についてお話を頂けますでしょうか。

稲場:1月6日に入ってから3月30日に戻り、8回26日間活動してきた。基本的には、今日ご報告のあった宗教者皆様との現地での活動と、学生を連れて七尾市内の拠点で寝袋で泊まり活動をしている。また行政、神社庁などに伺い、ニーズや現状を見てきた。

まだまだ厳しい状況が続く。水が出ていないところもある。圧倒的に人手が足りない。いま話にあった「能登に入るな」と石川県の初動からの発信がその後もずっと3ヵ月経っても影響があるのではないかと思う。

ただここにお集りの、あるいはオンラインで参加の宗教者は、いち早く現地に入り、継続しての活動をされてきた。それがあったから、どうにかこれで済んでいる。本当に悲惨で、取り残された方々が多い状況だと思う。

ただ、先週からやっとのと里山海道の柳田での検問が廃止となり、通行可能になった。一方で先日5日前に訪問した災害ボランティアセンターでは、SeRVさんが運営を担当されていたが10数名しかボランティアが活動していない。

ところが一方で、ネット等では「現地に入るな」「そもそもニーズがないのだからボランティアが行ってもやることがないのではないか」と声があがる。これも間違った認識で、人手が足りない訳でニーズはいくらでもある。そうした間違った情報がいまだに発信されているのは残念だと、先日も活動しながら感じた。

がれきや被災した建物が解体されていく。お寺・神社、様々な被災した建物を自分たちで解体するという話もありましたが、ある意味ではそれが片付くことによって地域の方々の気持ちが少し楽になると。一方で、公費解体、罹災証明の発行も遅れている。私が先週、現地で聞き取った状況では、基礎自治体によっては公費解体が増えると自治体の負担が増えるので早めに打ち切ると。またそこにお寺・神社・宗教施設は除外できないはずで、そういう動きが出てくる。こういった中に、超宗派での働きかけが必要ではないかと思っている。

基本的に、この公費解体は半壊・全壊とも環境省の予算で実施されるが、2.5%は基礎自治体が出さなければならない。ある自治体は早めに公費解体を打ち切るという情報もある。

しかし、被災された方々は解体を急ぐという気持ちと心の整理がつかずに待ってほしいとの気持ちの両面があり、熊本地震では数カ月待って公費解体の申請ということもあった。

自分たちの地域・コミュニティにとって大事な宗教施設がどうなっていくかを一緒に考える時間が必要で、その時に3〜5ヶ月先になっても行政が出すべきで、基礎自治体は予算から2.5%出さなければいけない。これは超宗派で働きかけていく必要があると感じている。

本当に今回は、いろいろと動きが遅い中に、先程もあった「現地に入ってはいけない」という声に躊躇している人も多い。こういった情報交換会で共有しながら声をあげていく必要があるのではと感じている。

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北村敏泰:ジャーナリストとしていろいろな宗教者の取材をするなかで、超宗派の連携は必須だと思う。宗門の動きが鈍い。行政に対するスクラムという意味でも必須。しかも超宗派というより、超教派だと思う。

先程、島薗先生の話からも東日本大震災では例えば「こころの相談室」のように、たまたまキリスト教や立正佼成会、いろんな人・団体がそのまま震災支援の団体になって、結果的に臨床宗教師を生み出す母体となった。今回もそれは必須ではないかとずっと感じていたが、皆さんの意見を聞いてやはりそうだと思った。

しかし、誰かが言い出さないと、いつまで経ってもできない。接着剤となる存在が大事だ。たとえば臨床宗教師会あるいは宗援連で連携の呼びかけはできないものか。

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島薗:宗援連でこのような情報交換会を開くことで横の連携を促進する大きなきっかけになってくれないかと感じている。連携の仕組みは作ってはいきたいが、組織化すると却って自由に動けないということもありうる。なかなか現地に入りにくい中に、宗教者においても多くの経験を積んだ方々が成果を上げている。これに学びながら、他の方々も入っていく。その場合に宗派・宗教の枠は自ずから越えていくのではないかと思う。

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稲場:北村さんはいろいろな被災地をずっと見てこられたので、まだまだ宗教者の取り組み、連携が物足りないと感じられるかと思う。今日他の方からも連携という声もあり、たしかにそういう面もある。

一方で、私自身は今回の能登半島地震を見ていて、今までにないような連携の動きもあると見ている。超宗派とか宗教者以外の災害NGO・NPO・社協・自治体と連携、仲良しグループでいつも一緒になって動くということが目的ではなく、被災者に一番大切な動きを取れるかどうかがまず第一である。

今回、ご報告くださった皆さん方も、各々で情報共有し可能なところでは連携して動いている。そうした事例も多く見られる。私はこれでいいのだと思っている。

北村:能登での連携も多く聞いており、既に発信もしている。今日の話を聞いて、さらにこれでもって強くなればと。

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宍野史生(日本宗教連盟):報告2点。先般2月13日に日本宗教連盟では、現在崩壊している宗教施設の復旧、再建について文化庁の宗務課と協議した。

指定給付金については、全国から集めた寄付金に関して出す側が控除される。

熊本地震・東日本大震災の時も指定給付金はあったが、膨大な書類の提出が必要となる。

受ける方は国税庁となる。これは行政として一本化して頂きたいと。

また3月4日には文部大臣と面談をした。とにかく倒壊等の被災状況は見れば分かる。実際には、書類をいかに簡便にして頂くか。この書類は煩雑・複雑で出そうと試みたが、心が折れてやめた方々が多くおられる。今回はそのようなことがないように強く要請をしている。

もう一つは、熊本地震の際に熊本県が「地域コミュニティ施設の再建補助金」を実施した。日本の建物を復旧、復興させるために、上限1千万円と若干低いのかと思うが、これを社寺仏閣も含めて補助金としては設定している。石川県でも是非いち早くこの制度を実行して頂きたいと日本宗教連盟からも強く所轄庁へ働きをかけている。

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岩崎:稲場先生にお伺いたい。稲場先生が大阪大学で開発された未来共生災救マップが今回どのような動きをつくったか。これをいろいろな宗派が知ることで被災地支援がよりスムーズになると思うが。

稲場:災救マップ(https://riccc.or.jp/respectmap/)はPC・タブレット・スマホでも利用できる。お寺・神社・宗教施設含めて30万のデータからの避難所情報・開設状況・通行止情報・ハザードマップも閲覧可。いくつもの自治体が導入し使用を開始している。

能登半島沖地震のあった珠洲市・七尾市にも3年前に行って説明した。自治体としてはなかなか新しい事はできないとの反応だったが、今回は災害が発生し避難所の情報がまったく分からない中に、Lアラートの情報も災救マップには入ってくるので、使用して頂き連携している。

誰でもあらゆる避難所の情報が確認できる。先程の創価学会の避難所も穴水の自治体が入力し、(2日の段階で避難所開設。100人と)データが入っている。今後は宗教施設も登録すれば、避難所となった場合も情報がいち早く分かるのではと考えている。また宗援連でもこういった研修会ができればと思っている。

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岩崎:前回の東京都防災フォーラムで、東京都が宗教施設を避難所として認めるという会議があったかと思うが。

佐原透修(世話人):東京都宗教連盟で理事を務めさせて頂いている立正佼成会の佐原です。東京都神社庁での講演だと思う。現在は東京都が認可し、実際には市区町村と教団が協定を結ぶ。そうして指定避難所となる。

しかし、宗教施設のほうは東京都から促しては頂いているが、市区町村の窓口が政教分離の問題を誤解されていて、なかなか難しい現状もある。

まだまだ進んでおりませんが、東京都の担当部局から市区町村の担当者へご連絡を頂いたり、宗教施設のほうも帰宅困難者受け入れの要望があるため、いまいまマッチングをしている。まだまだ数は十分ではないが、いま東京都宗教連盟を中心にそういった取り組みをしている。

もともと日蓮宗の新倉典生先生が中心だったが、自坊は足立区と協定を結んでいる。立正佼成会も杉並区と提携をしている。それ以外にもコロナのワクチンの接種会場に、立正佼成会と増上寺、PLさんも富田林市と協定を結んでいる。

いまいくつか宗教団体が社会貢献の一環として市区町村と協定を結ぶ取り組みとして進めている。

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島薗:また今後も続けて、長期的に取り組んでいかなくてはならないことだと思う。次は5月中旬に開きたい。今日は、皆さんから大変重要な情報をご提供くださり、また意義深いやり取りをさせて頂きありがとうございました。

以上