災害支援ネットワークIwaki[福島県いわき市]代表、浄土宗阿彌陀寺副住職
馬目一浩さん

第39回 宗援連情報交換会「能登半島地震における宗教者による支援活動の広がりと現状」

4)馬目一浩さん(災害支援ネットワークIwaki[福島県いわき市]代表、浄土宗阿彌陀寺副住職) 

稲場:馬目さんは東日本大震災でご自身も被災地域で大変な中に、はままるカフェなど傾聴活動に取り組まれた。その後も浄土宗のなかで、また社会福祉協議会とも連携しての支援活動をされてきた。以前にも宗援連で報告をして頂いたことがある。昨年の5月珠洲地震では、私も馬目さんと現地へ一緒に行かせて頂いた。今回も活動にされている。

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7〜8年前に宗援連でご報告させて頂いた。東日本大震災をひとつの機縁として様々な支援活動を行ってきた。いわきは不幸なことに、今年まで3回の大きな災害に見舞われた。その都度、災害対応をするうちにこなれてきた面もある。今後皆さんの何かしらお役に立てればありがたい。

浄土宗の被害状況と対応について
2/15宗務長から宗内教師向け発表(第2報)より
被害状況(2/13現在):新潟教区23ヵ寺、富山教区20ヵ寺、石川教区31ヵ寺
人的被害:無し
物資について:被災地のニーズが刻一刻と変化しており、供給ができるタイミングや量もふまえ、現段階での物資の募集はしていない。
ボランティア:寺院支援を目的としたボランティアは実施できる状況でないため受け入れしない。寺院支援に限定しないボランティアに関しては、各自の自由判断に任せる。能登地方への入域についてはなるべくなら入らないように。

この通達を見て、宗は支援に対して消極的で受け身であり、「相手からの要請があれば支援する」というスタンスである。

浄土宗全体での災害対応も遅かった。担当部局の現地入りが1月下旬。さらに宗内に災害専門部局、または災害に対応できる教師がいない。また、平時から備えるべき災害時の連携や準備が不足していた。これまでの災害時での反省が活かされていない。

残念ながら積極的な支援ができていないというのが実情。さらには「現地には行かないでほしい」という宗の要請があるので、最も行動力のある青年会が自由に活動できなかった。今の状況では、被災寺院は教師個々での対応なる。さらには外部支援が個人の活動に限られてしまう―という弊害が出てくる。

また、支援活動の依頼が入って来たとしても、現地での受け入れも被災者自身が対応しなければならず、その対応に謀殺されることによりお寺の復旧が遅れてしまう。お寺自身は片付いたとしても、残念ながら檀信徒との連携、または今後の方針について意思決定ができなくなってくる。そうした課題を危惧している。

また個々の対応となると活動に不慣れな場合、思わぬ怪我やリスクも伴う。また支援の偏りや分散という弊害が出てくる。これがいまの宗内での状況となる。

私は災害支援ネットワークIwakiの活動と並行(便乗)して、1月17日〜20日氷見市・金沢市内・能登地域の現地調査。さらに能登町・輪島市での支援活動を行った。更に、これまでの活動を踏まえて、宗内教師に向けた情報共有の場の設定した。2月22日には増上寺でオンライン併用で実施した。

被災寺院の現地調査では、宗の方で「なるべく現地に行かないように」とお触れが出ていたので、以前から連携しているいわき市社会福祉協議会が支援する能登町へ入浴支援車(給水支援車として活用)の提供に同行し、併せて能登地域の浄土宗寺院の現地調査を行った。

富山県(氷見市)の2ヵ寺は、墓地の倒壊や、本堂の荘厳や庫裏の壁の破損など被害は見られたが、庫裏・本堂の倒壊や被害はなし。しかし能登半島の11ヵ寺で被害が甚大。私が行った1月当時、寺族はほぼ避難中だった。(お会いできたのは七尾市の2ヵ寺のみ)山門・本堂・庫裏の倒壊または大規模な被害、石垣の崩壊、墓地はほとんどの寺院で倒壊が見受けられた。

3月には別の者が他団体の支援活動への参加に合わせ珠洲市に入り、ご寺院の方とお話する機会を頂いた。「まだ水が出ない。今後どうするかに関しても、寺院は檀信徒との共有財産であるので、この本堂を今後どう建て直すかについては、檀信徒も避難中のためなかなか意思決定ができない。いまだ手をつけることができない状態で、今後どうしていいか分からない」というお話を伺った。

能登町、輪島市での支援活動(2月16〜18日・3月15〜17日)では、中央共同募金「ボラサポ能登半島地震」災害ボランティア・NPO活動サポート募金を活用し、災害支援ネットワークIwakiの活動として行った。被災者ではなく、被災地を支える現地支援者を対象とした炊き出し活動を実施してきた(能登町・輪島市)。

これまでいわき市では3度の大規模な災害に見舞われた。これまでの支援に対し、いわき市から石川の被災地へ、被災地から被災地へつなぐ支援として、地元の協力を頂き行った。

支援者を支えていくことも、被災地での重要な課題となる。能登町も輪島市も職員が少ない中でやっている。その中に多くのニーズ、ボランティアの対応をする。ご自身も被災される中で、被災者を支援する。大変な立場にいる方々をを外部から支えていくことも重要な今後の支援活動になっていくのではないかと思う。

今回の支援活動のポイントとして、既に現地で支援に入っている団体や地元の社会福祉協議会を入り口に支援を行ってきた。能登町ではOPEN JAPANのベースで炊き出しを行い、役場等に配食した。能登町役場・社協には現地の情報を頂いた。輪島市ではコミサポ広島。その他に、NPO災害救援レスキューアシスト・BIGUP石巻とも連携し支援に入った。

既に入っている団体と連携することにより
・的確な支援につながる(ニーズ把握しやすい)
・リスクマネジメント(事前の情報収集)
・今後の支援につなげる
という利点があった。

さらに今回は、宗内の対応として宗内教師に向けた情報共有の場を提供し、被災寺院の状況を把握し今後の支援に向け、私達に何ができるか?みんなが必要性を共有してもらうことができた。

その情報共有ミーティングでは、1回目は50名ほどが参加して頂いた。内容として
・七尾市の被災寺院からの報告
・これまでの個人(団体)での活動報告
・今後の支援の可能性について

と関心の高さがうかがえた。こういった状況をふまえて、今後は宗とも連携していければと考えている。できれば、情報共有ミーティングは継続して行っていきたい。

今後の支援活動については、宗内の外部支援者へのアドバイス・つなぎという意味でのアテンドをしていきたい。これまで連携してきた外部団体とのつながりも大切にしたい。安全に的確な支援を行えるように外部支援を中つなぎする―そういった役割を担っていきたい。

いわき市からの後方支援、我々はつなぎ役という立場で、今後もいわき市内で宗内での情報共有ミーティングの定例開催などを実施しながら、地元のほうに支援の輪を広げていく。さらに、その広がった輪を的確に適切に石川につなげていく活動をしていきたい。

個人的には、被災地での運営支援に入りたいと考えているが、いま昨年9月のいわき市での水害の対応を行っている最中である。冬を越え、今後は夏に向けて、住宅や別のお困りごとへの対応が求められることも今後出てくる可能性がある。いまサロンを開きながら、住民のニーズを拾いコミュニティ形成などを行っている。

そうした状況を鑑みながら、能登に入る支援もしていきたいと考えている。

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稲場:浄土宗の動きがあまり見えない中に、馬目さんはこれまでの経験をもとに災害支援ネットワークIwakiとしての活動が前面に出ていたかと。しかし、浄土宗の僧侶として支援の形も作っていこうと

宗の情報交換会もされている。連携しての動きが素晴らしかったと思う。

金澤豊(仏教伝道協会):対人支援、心のケアへのフェーズ移行に関して、見通しのようなものを教えて頂ければ。

馬目:人的支援のフェーズはいろいろなものと重なりながら移行していくと考えている。冬を越えるまでは、何とか温かいものを食べて命をつなぐという炊き出しの活動が主だった。これが仮設住宅に移り自宅に戻るといった中で、そういうフェーズに移っていく前に既に人的支援が始まっていなければならないと感じている。

または、能登や輪島の一部でも水が出てくる。出てくるとみんな自宅に戻ってしまう。

戻ると逆に支援が届きにくくなる。そうした弊害も今度は出てくる。

本来であれば、戻る前に既に人的支援を始めて、そこでつながりを作っておく必要がある。そうしたフェーズを見据えながら、動いていくことも必要だと感じている

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東好章(浄土宗一向寺):いま正直、現地に行こうかどうか躊躇している。また、知り合いのお寺を通してか、あるいは一般の支援として入っていくべきかどうかとも検討中。当然浄土宗は当てにならないので、個人的に行くしかない。東日本大震災でもそうだった。馬目さんの肌感覚で今は入ってもいいか。またどこまで入っていくべきか。

馬目:入っていくのであれば、どこでもまったく構わない。やることは本当にいろいろとある。実際にはできるところから、手を付けていくのが今の現状ではないか。まずは現地に行くということが大事だと思う。

ただ、現地の入り方が問題となる。現地で活動する人たちを通じて入ることで、なるべく地元に迷惑をかけない。もし、行こうと思っておられるのでしたら、私のほうに連絡をして頂いても構わない。私のほうで、珠洲ならこの団体、能登ならこの団体にとおつなげする。現地を見て「何をしようか」とを検討できるかと思う。

以上