新倉典生氏「東京都仏教連合会の防災備災の取り組み」
宗教者災害支援連絡会5周年シンポジウム「宗教者の実践とその協働」
2016年6月19日(日)14:00-17:40
東京大学情報学環・福武ホール ラーニングシアター
報告3
新倉典生氏(東京都仏教連合会事務局長)
「東京都仏教連合会の防災備災の取り組み」
東京都仏教連合会
都内各宗派2,600近く寺院が所属し、55箇所の地区からなる連合体。
結成以来、仏教による教化活動の興隆発展を目指し、社会問題や、
被災地支援などにも積極的に活動している。
自然災害への対応について歴史は古く、両国の東京都慰霊堂に関東大震災を記録した絵画があり、当時の仏教僧が犠牲者に対し慰霊している場面が描かれている。
以来90年にわたり、仏教の慈悲に則った利他の心で、悲しみ、不安に寄り添う救援活動を実践。
近年の災害については義援金の募金活動を実施し、東日本大震災では2,000万円を支援。
阪神淡路大震災までは、義援金の対応がメイン。
東日本大震災では募金だけでなく、救援・復興支援ができないかと活動を検討。
東京都の「火葬支援」の犠牲者受け入れに対応。
東京都、仏教連合会の間で火葬供養に関してともに祈れるように交渉し、
約900名の宗教者が、火葬場で祈りを捧げた。
他にも東北各地において復興支援に関する活動を実施。
被災地寺院との接点。
被災仏教会(福島県、仙台、名取市、石巻市、塩釜、気仙沼寺院)との交流会や情報交換から防災意識が高まり、平成26年の9月に首都圏で発生する大地震を想定して、都内約2600寺院への防災アンケートを実施。約半数が回答(被災者受入・備蓄についてなど)
アンケート調査に際しては、大阪大学の稲場さんのご協力を得た
本来寺院にアンケートをとること自体、レアケースであった。
防災についてや被災者の受け入れに関して、寺院での意識がとても低いことを感じた。
都内寺院の防災意識を深めるために継続してセミナーを実施。
都内寺院のうち、半分以上が建物に倒壊の危機にあることがわかっている。
減災の意識をたかめていく大切さ。
被災体験者の声を通し、避難所運営の意識の低さを改善。防災意識の標準化を目指す。
東京都帰宅困難者の事例。
東日本大震災のとき500万人の帰宅困難者が首都圏にいたとのこと。
一時避難所として都内の寺院のスペースを有効に使えるように働きかけを。
備蓄も帰宅困難者対策にしぼってお寺で対応していけるように。
建物・施設の耐震性と境内の安全性の向上。現状把握・安否確認などの情報収集に関する情報を発信。
地域連携、行政との連携に関して
東京都「火葬支援」の際にも感じたが、宗教者と行政との協働作業の困難さ、宗教アレルギーがかなり強い。
宗教施設は帰宅困難者受入ガイドラインにも掲載されていない。
今後、いろんな方面の方々と理解、信頼をつくりあげていければと考えている。
災害における我々寺院、僧侶の役割に関心が高まってきているため、
被災者への精神的ケア(宗教的な安心)、犠牲者への祈りも含め
今後も災害対策に合わせて防災備災に取り組んでまいります。