チャールズ・マクジルトン氏「フードバンク運動とその可能性」

宗教者災害支援連絡会第31回情報交換会

2017年9月30日(土)15:30-19:00

常圓寺

報告

チャールズ・マクジルトン氏(セカンドハーベスト・ジャパン事務局長)

「フードバンク運動とその可能性」

1984年に来日。当時は米軍に所属し、2年間駐留した。その後1991年に再び日本に戻ってきた。修道院で生活したいと神父に願うと、東京の山谷でフィリピン人、インド人と生活することが条件に出され、そこにしばらく住んだ。その経験から、ホームレス問題に関心をもった。それからフードバンク運動にかかわり、1995年から2年間ホームレスと隅田川沿いでダンボールハウスの生活をして、人の尊厳、食べ物の重要性を学んだ。その後2002年にセカンドハーベストジャパン(Second Harvest Japan: 2HJ)を設立した。

セカンドハーベストジャパンは、日本でのフードセーフティネットの構築を目的とし、児童養護・ひとり親支援・障害者支援等の福祉施設や生活困窮者などに食品の提供を行っている。スタッフ25人。トラック10台。倉庫4棟、ボランティア毎週100人。取り扱い量は昨年(2016年)2,500トンに達している。フードバンクの全世界的な定義はない。イギリスは支援者を個人に限定し、フランスは団体に限定している。常温、冷蔵、冷凍、在庫、賞味期限・消費期限、内容、量など取り扱う際に考慮すべき点も様々である。2002年から500団体以上の施設を訪ねた。東日本で東北地方や、昨年からは熊本地震や豪雨被害に九州へと支援した。

一方、運営では営業は行わずに、信頼関係、対等関係を重視する。企業からの提供も「お願いする」のではなく、支援は自分達のためでもあるという姿勢で。会社と対等な関係であり、支援者は「有利な存在」ではない。そして支援者がヒーローになるためでもない。

支援者がセカンドハーベストジャパンと関係をもつ利点は、食品寄贈者はひとつだけのフードバンクを窓口にすれば他の地域の連携フードバンクにも届けられる。2016年に企業の廃棄経費削減に2億500万円相当、重量で2,504トン、それを価格にすると約7億2153万円相当の食料を配った。

フードバンクは、これまで災害支援も行ってきた。東日本大震災では当日夜に浅草橋で帰宅困難者4,000人に対して炊き出しを行った。翌日、12日には上野で炊き出し、その後は大船渡、気仙沼、石巻、仙台、いわきで支援物資の提供を行った。

災害支援活動で、支援活動の障害として「平等性」へのこだわりがあった。当時、行政との連携が欠如し、NPO法人は信用されなかった。ある避難所に食料の提供を相談したところ、行政は不公平にならないように物資を配給する義務があり、結果、「間に合ってます」と断られたが、後日、その市長が「物資が足りない。ボランティアに来てください」とビデオにて発信していたことを知り、さすがにショックを受けた。また、被災者の「遠慮」も障害となった。支援物資が機会でなく、配給しなければならないという「問題」になってしまっていた。社会におけるNPOの立ち位置、行政とどう関係していくかが次の課題となった。

私たちはフードセーフティネットが既存の公共施設や制度の一部としてあるべきだと考えている。「今日、食べるものがない」「明日から食べ物を得ることができない」こうした事態が生じたときの支えでありたい。

食べ物を誰もが手に入れることができるというセーフティネット(安全網)には、各々のニーズに、またその国の文化に合ったものでなければならない。海外で緊急に食品を受け取れる場所が、ニューヨークでは1,100箇所あるのに対して東京は10箇所とまだまだ少ない。アクセスポイントを多く作り、2020年までに10万人が食べていける明日を提供したい。この『東京2020:10万人プロジェクト』を進めるには、企業、行政機関、NPO法人、学校、宗教団体など、様々なステークホルダーの参画が不可欠な状況である。

将来の可能性を信じること。あなたができることとして、拠点の提供、食料の提供、寄付、本活動の他への紹介、ボランティアへの参加などがある。他人任せにするだけでなく、自分の範囲でできることを行う。1960年代にできた日本の医療保険制度で(日頃、日本人は当たり前に思っているかもしれないが)私の娘は心臓手術をうけて救われ感謝している。次の世代に「よかった」と言われる食料のセーフティネットを構築したい。それはまた、日本の「おたがいさま」の精神ではないかと思う。

<質疑応答>

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Q) 『東京2020:10万人プロジェクト』を進めるには、拠点を多く設ける必要があるとのことですが、その取り組みは?(GLA :鈴木悠紀子氏)

A)いかに備蓄を活用し、拠点を増やすか。このプロジェクトをまだ知らない人へ紹介、取り組みの継続も大切。受け入れ側も自分たちで仕分け、配分などのシステムも検討中。受益者も受け身でなく、自主的な活動を構築する。

Q) 緊急時は平等性が問われるのに対して、平常時に活動において平等性の確保は難しい面はないか?(世話人:篠原祥哲氏)

A) 例として、①毎週土曜日、上野で炊き出しを行っている。並んでいる男性から「まだか?」と苦情。それに私は「自分のお金で買ってください」と返答した。これには二つの意味がある。対等と信頼。ただ謝ることは相手を上から見下ろすことにならないか。多少の衝突があってもやがては解消される。これも路上生活での経験があってのことだと思う。