渥美公秀氏「ネパール大地震:現状と課題」
2016年1月30日(土)15:30-19:00
東京大学仏教青年会ホールA・B
報告 渥美公秀氏(大阪大学教授・(特)日本災害救援ボランティアネットワーク理事長)「ネパール大地震:現状と課題」
ネパール地震から半年 そして、これから
・自己紹介
・さまざまな災害ボランティア活動に参加。NPOの一員としても参加。
・日本災害救援ボランティアネットワーク
・ネパールは半年経過してから行った
○ネパール地震による被害
山岳部が被害。約8900名。阪神淡路大震災よりも多い規模
四日間のネパール(11月30日~12月3日)、防災の研究を分担
そのため、半年の期間をあけて出張
・支援先ではコンタクトパーソンがとても大事、SeRVネパールが窓口に
・ハリシディ、避難者がテント生活をしているボーダナート、ビドゥールへ。
ネパール語を通訳してもらって話を聞いた
・観光客にも見える被害が残っている。ユニセフが補修しているものの、未だに多くのがれきが残っている
・大きな余震が起きれば更に被害が拡大するかもしれない状況だった
・政治的な面でもめているところもある。インドからのガソリン供給遮断
→深刻なガソリン不足が起きている(人々の関心は震災復興よりも高い)
テント生活の方々よりも目の前のことへ関心が向いてしまっている
・テント村
90テント、300世帯
SeRVネパールの支援で子どもたちは学校に通うことが出きている
・ビドゥールのテント村
304世帯、継続的な支援がない状況。
・テント村での声
このままでは誰かが餓死するのも時間の問題(ボーダナート)
地震が起きてから子どもたちはただ遊んでいるだけ(ビドゥール)
ここにいたら、支援で子どもたちを学校に通わせることができる、残る理由はそれだけ。
※食べられないけど、学校にはいける(ボーダナート)
パイプラインさえあれば、野菜を育てたりして、後は自分たちで何とかできる(ビドゥール)
○課題
・支援が滞っている
・なにもすることがないのがつらい
○復興への見通し
・具体的な案はないものの、活動する意志はある。
○かすかな希望
・ハリシディのテント村
ヒビの入った住居に住み続ける人がいて、誰に聞いても笑顔で答えてくれる。
ある女性は2週間後から生計を立てている。
足の自由を失った女性も、若者がサポートしている。
自分で自宅を修復する少年、祭壇で祈りを捧げる男性
→活気に満ちた環境が戻りつつある。高い生活力がある。
○深刻な困難とかすかな希望が混在・・・どうするか?
→支援の継続(緊急支援)もはや人々の関心は低下
→復興支援:長期支援とはいうけれど
→防災支援:防災という言葉があることさえ知らなかった
正しい知識や防災意識がなかったからなのか?
→そんなことはない。科学の力、知識の力、意識と、研究者はいうが、実践的にはどうか。この方々の死生観などを知りいっしょに考えていくことが必要では
○宗教団体の強み
とても緩やかに結びついている。真言宗の足湯、曹洞宗とも密な関係をもっているNGOも。海外でもパワフルな活動をしているところも。
>現場で強みに見えたこと
1.複層的なネットワークによる活動の拡がり
そもそも本職以外・多様な職種(学生にはない多様性)
2.日常活動による活動の深み
信仰に基づく活動:社会活動、自省
・SeRVはいちばん人のいやがるトイレ掃除から始める。
日々教えの中でしているとスムーズに実践にうつせる。
・ひのきしん、は会合を開催。活動そのもの教えに照らしてのこと。場を設定しなくてもされているので、翌日の活動が生き生きしている
3.動員力
いざ困ったというときに来てくださる
財源
○これからの長期的な関係作りに向けて
・被災者の声を聴く
→足湯ボランティア(文化的配慮は必要)
被災者の話をゆっくり聞いていくことが大事。でも中々その機会を持てない
※被災者の手をマッサージする。世間話を楽しむ。
孫のような年齢の子と話す、話が進む。そのための足湯。
※なんでもないことをしながら、話をしていく。
・被災者とともに語っていく
→復興曲線
話のきっかけづくり。ツールとして活用。
・被災地で長期的に
→長期滞在型関係(現地に融け込んで支援)
田植え、稲刈り交流会、盆踊り、
学生と行って教えてもらい田植えをする。それをしながら、盆踊りも。
学ぶ場も必要「塩谷分校」「芒種庵」→闘牛、錦鯉の話も。
・現地に信頼できる人を(チーム北リアス現地事務所)
□現地事務所を建てさせてもらった
八戸、弘前の人とともに。被災地のことも学ぶ。
現地の方と日々連絡を取りながら進められる。
まだまだ支援が滞っている
スリランカ、チベット密教からも支援があったという。
キリスト教からも。今はNGO、宗教者の支援もなく、たいへんな状況。
<質疑応答>
島薗進氏からの質問
先生の行動力がすごい。新潟の話ですが、災害支援であると同時にこれからの日本が抱える人口減少もある。東日本大震災でもそうだが、ネパールでの支援活動を通し、日本社会が抱える問題を考えるきっかけでもある。
渥美氏の回答
限界集落、少子高齢化が見えてくる。
学生を連れて行くと、気づいてくれる。ただそこでずっと活動するのは難しい。いかにインパクトを以て過疎に気づいてもらうか、近代化について社会学や心理学などの勉強につなげていってほしい。
企業につとめても現地に帰ってくる学生もいる。限界集落をどうしたらいいのか、と考えているOBもいる。
現地を訪れて感じること、何をそこから学ぶべきなのかを深めてもらいたい。
蓑輪顕量氏からの質問
大学生は話をしても中々ついてこれない方もいる、何か工夫は?
渥美氏からの回答
学生にはそういう風潮はある。ただ、すぐ反応する子はいる。報告会ではその学生に報告してもらうようにしている。学生同士で考えてもらえる。
呼びかけて反応した子に応えていっている。