山梨県自元寺住職、全国曹洞宗青年会副会長
山崎秀典さん

秋田県勝平寺副住職、全国曹洞宗青年会副会長

髙柳龍哉さん

第39回 宗援連情報交換会「能登半島地震における宗教者による支援活動の広がりと現状」

7)山崎秀典さん(山梨県自元寺住職、全国曹洞宗青年会副会長)

全国曹洞宗青年会の災害復興支援部を中心とした活動について報告する。

曹洞宗の青年会が全国にあり、各地から出向者が選出される。私山崎は山梨、高柳は秋田から出向している。我々は連絡協議会という横のつながりで連携し、この組織は成り立っている。出向者は支援部に属しており、これまでの災害でも試行錯誤しながら活動と修正を重ねてきた。団体と支援部自体の機能を見直しながら、これまでやってきた。毎年度ボランティア基金を積み立てており、今回の活動もそこから捻出しながら行っている。

曹洞宗宗務庁長、婦人会、シャンティ国際ボランティア会(SVA)などと連携し、日常より情報交換も行っている。今回、機能したひとつとして、災害情報のメーリングリストがあった。540人が登録し、寺院の被害状況・現地で必要な物資・様々な活動報告を登録者はお互いに発信し情報を共有することができた。JVOADへも加入しており、そのメーリングリストからも情報を入手できた。

全国曹洞宗青年会(全曹青)が50周年を今年迎えることもあり、災害支援に関する研修会も記念事業の一環として実施した。OpenJapan、レスキューアシストさんといった現地で活動される団体をから講師に迎えての活動の基礎知識を得るものから、炊き出しの実習、パネルディスカッションという内容で全国九管区に展開している。また我々は僧侶でもあるので、慰霊、復興祈願という法要も進めさせて頂いている。

具体的な活動について

発災災当初、夜にはLINE等で情報交換、会議を招集した。石川県への出向者から必要な物資を確認し、まずは高柳さんも含めて3日には現地に数人で入ることができた。物資を届けることから開始したが、なかなかニーズを聞き取ることが難しかった。

石川県内に120弱ある曹洞宗寺院の多くが被災した。ネットワークにより被災者の情報も共有し、先程のメーリングリストで支援者にも呼びかけたことで、全国から多くの物資を頂けた。

同時に、拠点づくりも行った。1月24日から羽咋市にある永光寺(ようこうじ)を宿泊拠点とした。永光寺のポンプで独自に組み上げることで、水の断水に影響を受けることなく提供できた。

永光寺をベースにしながら、炊き出しも行った

2月13日には、永光寺に加え、輪島市の総持寺祖院の2か所を全曹青の拠点とさせていただきながら支援活動を進めている。ここからは長期間にわたり現地支援に入られる高柳さんからのお話となる

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髙柳龍哉さん(秋田県勝平寺副住職、全国曹洞宗青年会副会長)

1月18日に2回目の現地入りで、石川県庁でサポートに入っているNPOから「人手が足りない。私達のほうで各避難所の現状把握をしてほしい」という連絡があり、そのお手伝いをさせて頂いた。

穴水町・能登町を中心に14、5の避難所を見て回り、避難者数・炊事・衛生管理の状態など確認した。少しの距離で行政からの支援にも大きな違いがあるんだと感じてきた。また(全曹青として)SVAとも協働し、避難所での炊き出し・足湯など行った。

足湯では、地元の葬祭場や避難所となった公民館で行った。葬祭場では発災当初はご遺体も数体安置しながら、その横で避難生活を送っていたという話を伺った。足湯で気が緩んだ時に、ほっと愚痴を言ってくださる方も多くいらした。

炊き出しでは、現地で普段煮炊きをするお母さんたちと一緒に作らせて頂き、世間話をしながら、「いまこうしたものが足りない」「これはありがたい」といったお話も聞き取りし、味見もして頂きながら現地の方々のお口に合うような炊き出しをさせて頂いた。

現在、輪島市門前では400戸の仮設住宅が建設予定だが、希望者は約900名いるとのこと。4月末には入居予定だが、半分以上は避難所に残ってしまう。当会としては、仮設住宅に移られた方、そして避難所の残った方々にも支援を続けたいと考えている。

総持寺祖院は回廊の倒壊や多くの建物が被災した。どこの宗教施設もそうだが、社会福祉協議会を通じての一般ボランティアは入りづらい。設置物(仏具)の扱いも専門的知識を必要とするため、寺院側からも分かる方に入って頂きたいとの要望もある。その中で、全曹青が交代でボランティアに入らせて頂いている。

全曹青は、石川県宗務所、石川県曹洞宗青年会と連携しながら現地のニーズをお聞きし、出動申込のあった青年会とおつなぎする。全国各地から支援に入り、傾聴、行茶、サロン活動等を行っている。2月中旬からは少しずつ七尾市・珠洲市へも活動に入っている。

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稲場:全国各地で災害に関しての研修会を外部から講師を呼んで実施していると。SVA茅野さん、支援Pの米沢さんなどと素晴らしい災害経験を積んだ方が多くおられるが、どうして外部講師を呼ぶのか。

全国に1万ほど葬祭会館があると私共も調べて把握している。その中で全日本葬祭業協同組合連合会は全国で180ほどの自治体と協定を結んでおり、冠婚葬祭互助協会は200を越える協定を結んでいる。

今回、葬祭会館が避難所になり、そこに支援に入られた。それは会館から情報を頂き支援に入ったのか。行ってみたら、たまたまそうだったのか。日頃から僧侶してそのような会館と連携があるので情報共有がいち早くできたのか。

山﨑:外部講師に関して、私が伺う範囲ではJVOADへの加盟など僧侶以外の災害時連携

が深まってきていると感じている。そうした団体から得ることも多く、現在活動中であり進行形の方々である。そうした方々から学んで、いろいろと感じて頂きたいという意図もある。またこれを通して、組織どうしの連携も深めたい。

高柳:葬祭所が避難所になった件。門前に拠点のSVAからの情報で知った。SVAでは門前町から委託をされて常駐し、1月半ばの時点ではまだ避難所情報(所在・箇所数・避難者数)を把握している段階ではなかった。SVAがひとつひとつ足を運んで、情報を集約した。その中で葬祭所が避難所となった情報があり、足湯をさせて頂いた。

東好章(浄土宗一向寺):総持寺祖院や真宗大谷派の寺院もが大変な状況である。そうした中に、一般の人は撤去などの作業になかなか入れない。であれば、宗派を問わずにもう少し連携し、お手伝いに行ったり、情報を分かち合ったりとできはしないか。青年会が中長期で積極的に行動できるのではないかと。東日本大震災ではそうだった。青年会が出てきて、後から宗が着いてくる。そのような展望ができるのではないかと思った。

岩崎:全日仏青など超宗派のなかで活動していくことに課題があるか。高柳さんが行政・社協の仕事として避難所運営をされた。これは一つの宗派ではなかなかできないこと。苦労話があれば。

山崎:(宗門について)動きがないのが実情だが、複数回にわたり、多額の支援金をいただいている。また社会福祉協議会のボランティア保険では、寺院内での被害、怪我に保険が適用されないため、東日本大震災の活動時と同様に、宗門でまとめて保険に入って下さった。その取りまとめを全曹青が担っている。そうした形でのサポート、連携もしながら活動も進めていきたい。

高柳:(被災地の水に関して)輪島市門前町では上水が通っている地域でも、それが使用可能かどうかも避難所により状況が異なっていた。

(連携に関して)全曹青としては、連携して何より避難されている方々に寄り添った支援続けていければと考えている。私達二人とも全日本仏教青年会(全日仏青)の理事を務めている。全日仏青の救援委員会では、4月に奈良県東大寺での托鉢を企画した。後方支援という形になるが、またその場での情報交換であったりも活発になってくると思う。長期化すると、現地に入っての活動がすべてではないと考えている。様々な宗派で手を取り合い、支援を継続していきたい。

島薗:東日本大震災ではサロン活動、曹洞宗でいうと行茶は超宗派でされていたかと思う。今後は現地でも全日仏青と協力する可能性は十分あるのではないか。

高柳:そうした可能性も十分にありえると思う。当初「現地に来ないでください」という石川県の発表もあり、なかなか行きたいけど行けないという方々がお坊さんの中にもいらっしゃる。そうした方々の窓口にもなれるように当会としても活動を継続していきたい。

以上