畠山浄(真宗大谷派能登教区常福寺[石川県七尾市]住職)
畠山浄(真宗大谷派能登教区常福寺[石川県七尾市]住職)
250109 宗教者災害支援連絡会シンポジウム
発題者:畠山浄(真宗大谷派能登教区常福寺[石川県七尾市]住職)
島薗(司会):
宗教者災害支援連絡会は、2011年東日本大震災直後に発足。まもなく14年となります。
昨年元旦に発生した能登半島地震は、残念ながらこれまでにない災害の難しさを経験する機会となりました。9月21日には相次いで水害が起こり、いま関連死も含めて500人を超えるの方々が亡くなっておられます。それ以前の災害で命を失われた方々のことも偲びつつ、まず最初に黙とうを捧げたいと思います。
(黙祷)
今日は、主に現地で活動されてきた4人の宗教者の方々にお話を伺います。併せて、文化庁宗務の山田課長もお越しになり、討議に参加して頂きます。早速プログラムに入ります。
畠山:
2024年元旦の震災発生を受け、「北陸門徒ネット七尾」という団体を立ち上げ、被災者として、また支援者、地域住民として活動を続けてまいりました。
私の寺院は、2007年の地震で本堂が全壊し、その後解体・再建を経た経験があります。当時、七尾も甚大な被害を受けながら、広く周知されることがなく、十分な支援を受けることができませんでした。その経験を踏まえ、2011年の東日本大震災では、福島県における放射線防護の支援や物資の提供活動に携わり、多くのご縁をいただきました。そのご縁が、2024年の震災直後の炊き出し支援へとつながり、全国の仲間が駆けつけてくださいました。
七尾旧市街地に位置する私の寺院では、地域の方々とともに炊き出しを行い、東北の大谷派の支援者より提供された炊き出し設備「まかないくん」を活用し、七尾・穴水・門前・輪島・珠洲といった能登各地で食の支援を行いました。この活動を通じて、避難所で暮らす方々とのつながりが深まり、地域社会の結びつきの重要性を再認識する機会となりました。
震災後の宗教活動は困難を極めています。多くの寺院が甚大な被害を受け、門徒の皆様もまた厳しい状況に直面されています。その中で、門前町の仮設住宅の集会所をお借りし、毎月「朔日講」を開催しております。この場では、共にお勤めをし、その後に茶話会を開き、地域の方々が心を通わせる場を提供しています。新潟の大谷派の仲間が毎回炊き出しに来てくださることで、食を共にする機会も生まれました。
2007年の震災後、寺院再建を通じて「お御堂の存在意義とは何か」を問われました。ただ建物があるだけではなく、人々が集い、共に手を合わせ、お念仏を唱えることが大切であると学びました。今回の震災を経て、再びその本質を見つめ直し、地域とともに生きる寺院の在り方を模索しています。
震災の影響により、過疎化が加速し、寺院を取り巻く環境も厳しさを増しています。しかしながら、こうした状況の中でも、寺院は地域の拠り所としての役割を果たし続けるべきと考えます。現在、「朔日講」を通じて人と人をつなぐコーディネートを行い、また物資支援の橋渡しをする活動も継続しています。能登は真宗門徒が多い地域であり、地域寺院同士が連携しながら、コミュニティの再生を目指していくことが不可欠です。
2025年元旦には、震災発生から一年を迎えるにあたり、16時10分に全国のご縁ある寺院に「朔日の鐘」を鳴らしていただくよう呼びかけました。これは、東日本大震災の「勿忘の鐘」に倣い、能登の震災を忘れず、共に歩み続けることを誓う行事です。全国30カ寺以上の大谷派および本願寺派の寺院が賛同し、それぞれの地で鐘を鳴らしてくださいました。
七尾旧市街地では、私の寺院を含め、鐘楼や本堂が大きな被害を受け、使用不能となっている寺院が多数存在します。地域の集落においても、家屋の解体が進み、再建が困難な状況が続いています。そのような中でも、門徒の皆様と共に歩みを進め、地域の存続を願う声が高まっています。
また、全国の支援者の皆様より、物資の支援も継続的にいただいております。名古屋の支援者からはお米の提供があり、定期的に仮設住宅の方々へ配布する活動を行っています。これらの支援を通じて、被災地の長期的な復興に向けた歩みを進めてまいります。
北陸門徒ネット七尾の活動については、Facebookページにて随時報告を行っております。今後も、支援活動の継続と、地域コミュニティの再生に向けた取り組みを続けてまいりますので、引き続きご支援・ご関心を賜りますようお願い申し上げます。
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島薗:
能登半島は真宗大谷派のお寺が圧倒的に多いため、コミュニティの再建と大谷派の門徒さんの集まりは重なる部分があります。そうした中で、地域のために、また全国からの支援をお寺を通して広げていくことが重要です。
以上