2016年5月1日(日)14:30-18:30
東京大学山上会館
報告 金田伊代氏(神主さんと京の社を巡ろうの会代表)「京都での避難者支援活動」
皇學館大学神道学専攻科を修了後、神職(神社神道)として奉職。
東日本大震災において、京都に避難された方は1,000人以上。
現在は700名ほどに減ってきたがまだ多い。
◯神社とは何をしていることろか
神社は世の中の平和。人々の幸せについて祈っているところ。
神社の数は約8万社。コンビニが5万。郵便局2万5千。比較しても非常に多い。
包括しているのは神社本庁。各都道府県に神社庁がある。
震災が起こってすぐに神社本庁から神社庁、そして全国の8万社に復興の祈願祭をするようにと通達があり、各神社で祈願が行われた。
◯神主とは何か
神様と人をつなげる“ナカトリモチ”と言われる。
人の感謝や祈りを神様に伝えて、神様の御心を人に伝える仲介者。
震災避難者の概要、支援活動の目的・内容、今後の課題について順番にお話する。
震災が発生したとき京都の神社に奉職していた。京都でも揺れた。社務所にいたが、船に乗っているような揺れ。テレビをつけすごい地震がおきたと感じた。
京都への避難者は現在約700名。これは京都府に登録している数。この他登録されていい方もいらっしゃるので、これより現実には多い。
避難元は、福島県が7割、その他宮城、茨城、栃木など。
現在は行政の斡旋による新規受入をしていないので減少しているが、沢山の方がいらっしゃる。避難先は、京都市に7割、その他宇治市、亀岡市など。
年齢層(平成24年に京都府がとったアンケート)
子どもと親世代が多い。家族構成は母子が多い。厳密な数は分からないが母子避難が多いといわれている。
避難者を取り巻く状況について(アンケートや聞き取りの結果)
どのようなことに困っているか
憂鬱で気分が沈む。気分転換できない。京都での交流が少ない。知らない土地。家族が離れ離れ。お母さんとお子さんだけで避難。
このような状況を通して宗教者として、同じ女性としてなにができるか。
そこで、「神主さんと京の社を巡ろうの会」を立ち上げた。
◯目的
不安の軽減。心の休まる時間をもってもらう。避難者同士の交流。京都を知る。日本の良い所を見直す。京都の人にも避難者が身近にいるということを知ってもらう(風化防止)。
◯活動内容
社寺巡り。京都府避難者支援プラットフォームへの参画。広報活動。
◯社寺巡り
京都府では京都府支援情報定期便として、毎月2回避難者に避難元と避難先(京都府)の支援情報を郵送している。支援者は支援情報があればチラシを作成することで避難者に直接お知らせすることができる。この定期便を利用して社寺巡りの案内をしている。
具体的には、社寺巡りをして神主さんやお坊さんに案内してもらい、神社やお寺で行われている祈りを知ってもらい京都や日本の良いところを見直すきっかけになるように、また茶話会をして交流を行っている。
◯参加者・支援者の反応
参加者
祈願祭に参列して、涙ながらにお礼をいう人、日々祈ってくれてありがとうございますというお声。晴れやかな表情など、否定的な発言・反応がみられない。
支援者
京都にいると避難者がいるという実感がなかなか無いが、目の前で避難者にあうと身近に感じる。
◯参加者の感想
神主さんやお坊さん直々に案内していただいて貴重な経験。心の支えになる。気にしてくれる方がいるだけで嬉しい。
避難者の方の中には、支援されてばかりで申し訳ないという方もいらっしゃる。
祈願祭、世界平和を一緒に祈ろう、という中で、私にもできることがあってうれしいと言われる方もいる。なにかを与えるだけでなく、役割を見出してもらえるような支援も大切だと感じる。
◯京都府避難者支援プラットフォーム事業への参画
京都府庁に事務局。情報交換会がある。私も支援団体の1つとして情報交換や現状、課題、行政の方とともにやりとり。
◯広報活動
風化防止のためにも新聞に取り上げてもらって、被災者はまだ京都にいるということを多くの方に伝えてもらうよう考えている。
◯今後の課題
避難生活の長期化。数ヶ月で戻れると考えていた方、今後どうしたらよいか。
住宅の退去。公営住宅の入居期限の延長がなくなり、入居から6年で退去しなくてはいけなくなった。早い方では平成29年3月で退去しなくてはならない方もいらっしゃる。皆さん今後どうしていくか、ここ1、2年で避難者をめぐる状況もかわってきている。
現状から、私の主催している活動の方向性や内容も再検討していく必要性を感じている。
最初に神主について、“神主=ナカトリモチ”とお話した。神様と人だけでなく、避難者や支援者、京都や神社をつなぐナカトリモチとして活動できたらと考えています。
◯司会(黒崎世話人)より
京都に避難している方が700人。初めて知りました。京都府に。認識したうえで、しっかりと悩みを把握しながら、京都の社寺をめぐるという活動をされていらっしゃる。
神職の役割、ナカトリモチだという。以前この宗援連の情報交換会で阿部明徳宮司(下谷神社))も神職は“ナカトリモチ”だといってご自身の活動を紹介されていらっしゃったが、重なる部分があると感じた。
質疑応答
Q.実際に避難している方に具体的にどのような形で情報を流しているか?
A.京都府の情報定期便に、神社巡りなどのお知らせをチラシとして入れてお知らせしている。
Q.神社とお寺さんとのご縁というのはどのようについていったか
A.石清水八幡宮では東寺や清水寺と合同の祈願祭をしていて、東寺や清水寺で行われる合同祈願祭にもお招きいただくようになった経緯から。
Q.実際に社巡りに参加された方々はお互いに見知っているわけではない。お互いのコミュニケーションをとってもらうことになるが、それをサポートする工夫などあれば。
A.初めは名前を紹介させていただいたりしていたが、回数を重ねることで同じようなメンバーになってきている。同じ避難者同士、出身地や境遇が似ていることから親近感がわくようでお互い自らコミュニケーションをとってくださることが多い。最近は見守っているような状態。
Q.金田さんが会の代表ですが、どれくらいの神主さんの協力体制で行っているのでしょうか(島薗代表)
A.最初は避難されたお母さんと一緒にやっていたのですが、方向性の違いなど試行錯誤しながら現在は独立して行っている。神主の友人たちは会に入ってもらうというよりは、窓口になって協力してもらうような関係。