八本俊之氏「真如苑の保養プログラムの報告」

宗教者災害支援連絡会第32回情報交換会

2018年1月15日(月)16:00-20:00

上智大学

報告

八本俊之氏(真如苑)

「真如苑の保養プログラムの報告」

真如苑は80年の若い教団で、私も若造ですので、報告のつたないことお許しください。私の自己紹介。1996年に職員になってから、都内支部や、奨学金財団の職員などつとめてから、2010年に現職(社会交流部)に移りました。従って、震災直後や保養の始まりについては伝えぎきの部分が多いので、現在にスポットを当てての報告をさせていただきたい。

保養プログラムのこれまで

震災復興支援の中でいろいろな方に出会った中で、福島で子ども達が外で遊べないことの問題、新陳代謝のよい子どもには数日間外遊びするだけでもよいと聞き、勉強を2012年の2月からはじめた。青梅に郊外の森があり、木工などを提供するNPOがあり、武蔵村山市で高校生のスポーツ交流(サッカーなど)を提供したり、京都の寺院で若い女性を対象とした保養プログラムを提供したりした。代替毎年500名ぐらいをお招きして、五年半で延べ3000人ぐらいをご招待したことになるかなと思う。酒井先生が先に日常の居場所の報告をしてくださったが、この保養プログラムは日常を離れてふだんできないこと、土遊び、はじける時間を提供することかなと思う。いずれにせよ家族の方々の希望の灯火になれればうれしいと思ってさせていただいている。以後、三つの取り組みについて語る。

週末保養ツアー

シャロームさんと真如苑ボランティアのServが連携。虫を追いかけたり土いじりをしたりということは、福島ではできない。

協力団体の声

保養プログラムではたくさんのことを学べる意義がある。福島県の公式な見解では帰宅困難区域を除き除染はほぼ完了という認識なのだが、福島市内の憩いの場(たとえば雑木林など)でも放射線量が高いままのところもある。

保養をやる団体は減っているが、まだやる意義があると考えて続けている。

青梅の杜の保養

東京の西の青梅の杜という場所。360ha、結構起伏のある場所の森林の保全のために取り組んでいるベルデというNPOがあるのだが、そこに子ども達を招待して木工細工などしてもらっている。子ども達の中には真如苑の信徒と、シャローム経由で募集した人も混ざっている。家族単位。ついでにディズニーランドにも遊びに行ってよい。

参加者のさまざまな思い。除染の進行状況や放射能の強い場所の広がり、放射能による病気の広がり? 日常の中で元気に外で走り回って遊ぶということと無縁で過ごしてしまいました。こういう機会を提供していただき有り難い。

高校生のスポーツ交流

体育館で高校生男女バスケ、グラウンドで高校生男女サッカー。もともと日産がもっていた土地を購入して自然豊かな環境が持続できるように努力。時間をかけて整備しながら、横田基地や昭和記念公園にならぶ地区。

高校生は保養プログラムの対象外が多いという話を教育委員会からいただいたので、部活まるごと招待するような支援を考えて、都内の高校との試合企画。

福島の高校が閉校したりもしているので、合同チームもあり。バスケは、最初にアイスブレイクをしたあと、だんだんと打ち解け合って、最後は一発芸大会とか、主催者の意図を越えて楽しんでいた。東京側の顧問の先生が福島出身で、聞きつけて参加してくださったり。東京の高校生がこのことを通して福島の現状を学び、高校生同士だからLINEなどで友達になって現地のことを知らせあったりしている。

始まりはサッカーからだった。メンテをしてJリーグの試合ができるくらいに芝を整備している。いろいろな福島の強豪のチームが参加されてよい会になっている。自分もサッカーをやっていて審判資格もあるので、質が高いのが実感できて楽しい。放射性ストレス云々もあるが、サッカーでの交流を楽しんでもらう。近隣の都立高校は勝負にならなかったのだが、何回かやっているうちにレベルが上がっていき、明らかに強くなっていて、都立高校の学生にはとてもよい機会になった。

参加高校の先生からのお礼の手紙。「この高校〔強豪校!〕は来年度をもって一時休校となりますので、今年度は最後の活動になりますが、忘れられない思い出になると思います」云々。多くの方に支えられたことへの感謝、いまあたりまえのように過ごせることがあたりまえでないという感謝。今年も継続したい。

課題

サーブの20周年誌での苑主の言葉。福井地震の時に、開祖以下、困っている人を助けたいと思ったDNAが真如苑にはある。そこからのサーブなどの活動を、今後も続けていきたいと思っている。

保養プログラムが減少している現状。参加の機会が減っている中に、継続している意義があろうとおもう。ただ、福島県に在住の方にもさまざまな保養プログラムへの考え方があり、同一家族の中でも立場が異なる。簡単な構図ではなくなっているので、慎重に見たい。状況を細やかに的確に把握していくことがこれからさらに重要になると思われる。これが非日常ではなく日常にある日が早く来てほしいと思う。

質疑

  • マンチェスターユナイテッドがカゴメと連携して子どもの支援活動をしている例もある。そのような方々との連携もある。

  • 是非個人的にもお聞かせください。

  • 酒井:サッカーがお好きなのが伝わってきた。Servの軽やかな動きはこれまでもうかがってきたが、宗教色はどのように考えているか、また出しているかいないかを教えてください。

  • 八本:宗教団体の主催ということを承知できてくださっているという前提で言葉づかいなどをていねいにしているが、それ以外は特に。また宗教団体としてはいるよりも「真如育英会」などの外郭団体を介するなど工夫して県にお願いしたりもしている。招待した人に宗教的な話をすることはない。が、迎え入れたキャプテンなどの話を聞きながら、たいへんな状況でやっているのがわかって忘れずに心一つにやっていきたいなどのことを高校生が自らやったりしていて感心している。

  • 私たちは鎌倉で保養プログラムをさせていただいているが、熱意や頻度が結構ある。スタッフ数や経費など教えてほしい。また参加者はリピート可能なのか刷新されるのか。スタッフはトータルでコアは10人ぐらい、高校生は結構自分たちでやってくれる。審判は氏の公式の審判がボランティアとして有償で協力いただいたり、高校のアナウンス部が実況中継のお手伝いなど、結構参加者の自主的な活動がある。青梅は10人程度が毎回関わり、木工やピザ焼きなど。福島保養はシャロームが現地で受け入れ団体となる中にServが乗らせていただいている。参加者はリピーターもいるが新規が適度に混ざっているのが感想を見ると確認できる。福島の高校は懺法の教育委員会に選考をおまかせしているので、新旧複数混在。

  • 島薗:ベルデというのは真如苑の中の自然体験や森林保護などをやるグループなのか?(八本:そうだ。森林オンリーの活動をするグループ。だが、こういうこともできるんじゃないか、と提案してやってもらっている。被災地にまな板を届けたりとか)。Servの活動は印象的だが、今日、併せて印象的だったのは、この保養プログラムはServの活動ではあまりない、サーブはこれにはあまりコミットしていない、別の人たちがいる、ということだ。

  • 米川:山形や青梅にはSERVがでている。が、サッカープログラムは高校生が実動してくれているので、中に少し入っているぐらい、一緒にさせてもらうぐらいで十分。

  • 島薗:ちなみにServのいまの活動は、全体像としてはどこに向かっているか。

  • 西川:Servは基本は緊急救援。ただ、継続するということを私たちは重視しているので、Phaseを変えながら維持している。なお、ベルでの責任者は私だが、針葉樹林の保存をしていくことを主眼に置きつつ、一部を広葉樹林にしたり、生態系を調査して記録したり、一般のハイカーのための道の整備をしたり、炭を焼いたり木工でベンチを作成して寄贈したり。東日本の時には仏壇や下駄箱を御用聞きしてお届けするというようなことをしていた。真如苑はその場でいろいろな体制をその場でとっていくという形をとっている。

  • 堀江:シャロームというのはどんな団体ですか。また、福島の状況について詳しいお話しを。シャロームが公募している対象やコネクションはどうなっているか教えてほしい。

  • 八本:シャロームは街作りのNPO。現地で紹介してもらい、現地で動ける団体とお会いして相談した中にシャロームさんとのご縁ができた。いまも放射線量を量ったり、子ども目線ではかったりして、データを地道にとっている団体。そういう活動のネットワークがある。私たちは現地にまんべんなく広がるネットワークを持っていないので、シャロームさんのネットワークで呼びかけをして集めてもらっている。保養は市内全域。高校は県の教育委員会を紹介してもらって。最初は原発エリアが多かったが、現在は会津の高校生も入ってきていて、主旨が変わってきているが、原発にこだわらずに高校生の交流ということを重視していく方向性も考えている。