5.アナキスト

ヘルメットに魅かれこの趣味の世界に入ったころ、「アナキストとノンセクト・ラジカルは黒ヘル」ということをどこかで読んだ。黒はアナキストにとってはアナキズムの象徴であり、ノンセクトにとっては「何ものにも染まらない」ことを表すという意味でノンセクトの象徴であるからだという。

このサイトのTOPのヘルメットがズラッと並んだ画像は警察の内部向け記念誌に掲載された警察資料の写真だが、黒ヘルの所には単に「アナキスト」とあるのみで具体的な団体名等は記載されていなかった。「アナキストは黒ヘル」という一般化を行なうことができるということは、逆に言えば一定数のアナキスト組織が黒ヘルを用いていたことに関して確認が取れているということなのだが、具体的な組織名について聞いたことはなく、私にとっては謎のままだった。ノンセクトについても全く同じで、黒ヘルを被っている具体的なノンセクト組織を私は知らなかった。(のちに「ポスト学生運動史 法大黒ヘル編」が出版されるが、各大学にこのようなノンセクトがあった。)

だが性分なのか、私はそれをそのまま受け入れるのが嫌で、具体的に探してみたが黒ヘルを被っていたことが確認できるアナキスト組織は中々なく、現在に至るまで見出せたアナキスト団体の数は僅かで、上に掲げた2団体のうち、背叛社は前述の記念誌に掲載されていた写真で確認できたが、ARFは元活動家千坂氏の証言を以て確認したのみで写真では確認できていない。

なぜこれほどまでにアナキスト団体を確認できないか。その理由は戦後日本(戦前や海外のアナキスト組織は知らないのでこのように限定する)のアナキスト組織が大集団を形成してこなかったことにあると思われる。ARFが構成員500名を数える大組織であったことが、その意味で例外的であったということを千坂氏は指摘している。

上に掲げた2団体の他に私が確認できた黒ヘルを被ったアナキスト組織としては、京大のアナキズム研究会(毎日の20世紀の記憶『連合赤軍・"狼"たちの時代―1969-1975』 163頁 1971.10.08 京大教養学部アナキズム研究会部室の捜索)くらいである。こういった小規模な研究会的なアナキズム団体が多数存在したと思われる。

警察の内部向け記念誌の中で見出せた黒ヘルの隊列写真を一応以下に転載しておく。当該隊列について心当たりのある方は是非連絡して戴けるとありがたい。

黒ヘルが最も注目を集めたのは、学生運動がその最盛期を過ぎ、翳りを見せ始めたころのことである。比較的少数で過激な行動をとり、その組織実態が把握しにくいため、警察は特に警戒した。群衆を扇動するために、一部の党派が敢えて黒ヘルを被り、過激な行動に出たこともあったという。

1970.06.23 無題