海外旅行では、何かお土産を買って帰る方は多いのではないかと思います。ところが、旅の思い出や家族・友人へのお土産として海外のお店や空港の売店で手軽に売られているものの中に、実は日本には持ち込みが禁止されているものがあることに注意が必要です。


これは日本国内でも浸透してきましたので多くの方がご存じと思いますが、いわゆるブランド品のコピー商品は全面的に持ち込みができません。これは本物と信じて購入したものの、コピー商品であった場合も同様です。一部の国の店頭にはいまも多くのコピー商品が大手を振って並べられています。時計、バッグ、財布、洋服、靴などがその代表です。


コピー商品以外で日本への持ち込みに注意が必要なのは動物関連と植物関連です。日本の空港の国際線到着ロビー内に動物検疫、植物検疫のカウンターが設置されているのをご記憶の方も多いのではないでしょうか。


犬や猫のペットの日本への持ち込みは、狂犬病やレプトスピラ症(犬のみ)について輸入検査が必要です。輸入条件を満たしている場合には短時間で検査が済むのですが、条件を満たしていない場合には最長180日間の係留検査が必要になる場合もあります。その他の生きた動物については各々細かな規則が設けられていますので、余裕をもって事前確認をしておく必要があります。肉製品(ハム・ソーセージ・点心など)は、出発国で事前に検疫を受けた限られた商品をのぞき、ほとんどが日本への持ち込みができません。おいしそうな生ハムやサラミなどについ手が伸びがちですが、ご注意ください。また日本から海外に旅行する際に引っ掛かりやすいのは、肉製品(エキスを含む)が素材に使われているカップ麺です。ホテルの部屋で簡単に食事を済ませるためには便利な食品ですが、アメリカやオーストラリアをはじめとする国は厳しい制約がありますので、日本から無理に持ち込むのではなく、現地で調達することをお勧めします。アジアはもちろんのこと、欧米でもカップ麺は広く流通していますので、都市であれば、スーパーなどのアジア食品コーナーで容易に手に入ることが多いようです。


動物と同様に植物の持ち込みも検疫が必要です。東南アジアのランなどの切り花や果物は基本的には持ち込みができない、と考えた方が良いようですが、肉製品と同様に出発国で検査証明書を発行してもらったものは持ち込みが可能な場合もあるとのことです。パイナップル、ココナッツ、ドリアンなどの果物は、証明書を提出して到着時に植物検疫を通過できれば持ち込みが可能とのことです。うっかりしがちなのは、オランダの空港でたくさん売られているチューリップの球根や植物の種です。土のついている植物は、切り花や果物よりさらにハードルが高いと考えた方が良さそうです。


大昔の話ですが、私が在住していたアメリカから帰国する際に、きちんと申告をして植物検疫を受けたうえでお米を持ち帰ったことがあります。その年の日本は稀にみる冷害の年でお米が大変な不作に見舞われました。外米の輸入や古米の活用を余儀なくされた1993年のことでした。アメリカから帰国する引っ越し荷物の中にかなりの量のカリフォルニア米を入れて帰国したのです。カリフォルニア米は、当時、すでに日本のお米と遜色のない品質のものが売られており、そのおいしいお米を持ち帰ったことで家族には大変喜ばれました。ただし、日本へのお米の輸入は過去1年間に100Kg以下という制限があり、これを超えた輸入には関税がかかります。


海外旅行の思い出や、家族・友人へのおすそ分けのお土産選びをする際には、日本到着時に残念な経験をしないために、ぜひ動物・植物検疫のことを思い出してください。

(江の島太郎)