皆さんは観劇に出かけた時、幕間をどのように過ごしますか。演し物、各劇場のルールにもよると思いますが、日本伝統の文化として、歌舞伎に代表される演し物の場合には、客席又は劇場内の食堂でお弁当などを食べる文化が根付いています。観劇ではありませんが、相撲観戦の際にも、焼き鳥を肴にお酒を飲んだり、お弁当などを食べたりしながら観戦する、と言う楽しい習慣があります。


一方、西洋から渡来した演し物の場合には、幕間に食事をする文化は余り無いようですが、シアターバーでワインやシャンパン、その他の飲み物を楽しむことは多いようです。


私は日本でコンサートやオペラの夜の公演(ソワレ)に出かける際は、いつも食事が何となく中途半端になってしまいます。日本の場合、帰宅の電車に間に合うように開演時間が設定されているため、ヨーロッパやアメリカに比べると開演が1時間以上早くなっています。午後6時開演などざらですが、そうなると晩御飯を食べてから出かけるには早すぎ、終演後になるとそれこそ電車の時間がありますのでそそくさと帰路に着くことになり、結局晩御飯にありつけずに空腹を抱えて帰ることになります。


ヨーロッパやアメリカの多くの劇場のソワレの開演時間は早くとも午後7時、短い演目の場合には午後8時になることもあります。劇場近辺のレストランには、『プレシアター』と銘打ったメニューが用意されており、短時間で食事を済ますことができるようになっていることもあります。スペイン、イタリア、フランスなどのラテン系の国では、元々夕食の時間が日本よりもはるかに遅いことから、終演後に食事に出かける人も多く見かけますが、これは日本人の私から見ると、胃の負担が大きいようで、気が進みません。開演前後に食事があるわけですから、幕間は飲み物などを楽しみながら、会話を楽しんだり、劇場の中のそぞろ歩きをしたりする人が多いようです。


私は幕間に同行した家人、劇場で久しぶりに会った友人から芝居や演奏の感想を聞くのがとても楽しい時間です。自分では気づかなかった発見があったり、全く異なった感想を聞いたり、その通り!と膝を打ちたくなったり、たわいのない会話が芝居や演奏と同じくらい楽しいのです。気に入らなかった芝居や演奏に接してしまった時には、こっそり悪口雑言で鬱憤ばらしをすることもあります。


私が半世紀近く前に初めてウィーンの国立歌劇場でオペラを観た時に、終演後に素敵なシーンを見て感心したのを今も鮮明に覚えています。当時はまだ観劇に出かける大人はかなり大袈裟な服装でした。女性はロングドレス、男性はタキシードに蝶ネクタイなどの出立ちが主流で、まだ若く、タキシードも持っていなかった私はかなり気後れしたものですが、その着飾った紳士・淑女の皆さんが終演後、何の躊躇いもなく、市電に乗って帰路につく姿を見て、観劇が生活の一部になっている文化を目の当たりにしたわけです。


さて、皆さんは観劇の幕間や食事はどのように過ごしていらっしゃるでしょうか。

(江の島太郎)