【研究員コラム】 2023.1.12

日本のお土産文化

 お土産の起源を調べてみるといくつかありましたが、室町時代に神社仏閣へお参りしたことを家族等に報告する品として、寺社からの「授かりもの」を持ち帰った、というのが有力のようです。

 「みやげ」という言葉は、江戸時代、庶民の夢であったお伊勢参りに簡単には行けないため、村人がお金を出し合い、くじで選ばれた代表者が行くようになり、代表者は伊勢神宮でみんなの分も祈願し、その時にもらったお札をはる板「宮笥(みやげ)」を村人分もらって帰ったことに由来するそうです。

 その後、参拝する人が増えると「宮笥」だけでは間に合わなくなり、神舎仏閣の門前や街道で売られたその土地の名物を買って帰るようになり、「土産」として現在にその風習が続いています。

 

 お土産を買うのは日本人独特と言われていますが、少し前には中国人の爆買いが話題になりましたし、海外の人も日本でたくさん買い物をして帰国されます。私も海外の友人からお土産をもらったことが多々あります。決して日本独特ではない気がしますが、日本の文化が海外に広まったのかもしれません。


 しかし、日本と海外ではお土産の位置づけが少し違うようです。海外の人の多くがお土産を買うのは、家族や仲のいい人に限られていて、「お土産」というより「贈り物」です。それに比べて日本人は、職場はもちろんお得意先の分までお土産を買うこともあり、儀礼的にお土産を用意する傾向にあります。

 職場の人全員にあたるようその旅行先で有名なお菓子を買うことが多く、日本には北海道の「白い恋人」、鎌倉の「鳩サブレー」、福岡の「博多通りもん」と全国に有名でおいしい、もらって嬉しいご当地のお菓子が目白押しです。

 日本のお土産文化が経済効果に影響を与えているのは明らかです。


 職場の人にお土産を買うのは、「休みをもらって迷惑をかけたから」「いつももらっているので(お返し+職場の暗黙のルール)」という日本人らしい理由がありますが、「職場の人に喜んでもらいたいから」といういい意味で「ビジネスとプライベートは全く別」と割り切れない日本人らしい理由もあるようです。


 私にとって、喜んでもらいたいと考えながらお土産を選ぶのは楽しい時間です。また、お土産をもらった時は、旅先でも私のことを考えてくれたのかと思うと嬉しくなります。日本に代々続くお土産文化、儀礼的な部分も否めませんが、ホスピタリティに繋がるものと言えるのではないでしょうか。


           (Spike8