【研究員コラム】 2022.12.12

宿泊施設の新形態

下のグラフは、令和4年版『観光白書』に掲載された「Tripadvisorにおけるホテル検索数(対前年比指数)」です。シティやビジネス、リゾートといった既存の宿泊施設が軒並み前年の検索数を下回っているのに対して、キャンプ場、貸別荘の検索数は前年の2倍以上に増えています。

コロナ禍で「密」を避けた宿泊形態として、自然の中、オープンエアーのキャンプが注目されたのがきっかけでしたが、ブームは一過性のものに止まらず、コロナへの対応が「共生」へと移っても、その人気は依然高まり続けているようです。

 日本オートキャンプ協会によると、2021年に1泊以上のオートキャンプに参加した人は前年のマイナス成長から増加に転じ、23%増の750万人と大きく回復、キャンプ場の経営には異業種からの参入も拡大しているとのことです。


 全国最多のキャンプ場がある北海道では、2020年からの2年間に新たに30施設が開業、愛好者が急増している「ソロキャンプ」はもちろん、「未経験者でも手軽に楽しめる」をウリにしたキャンプ場や「地元の食材とジビエが味わえる」施設など、キャンプの楽しみ方、参加者も多様化しています。

また、これまでオフシーズンだった冬も、あえて北海道の厳しい自然を体験してもらう「雪中キャンプ」を提案するなど、キャンプ場は通年の宿泊施設となりつつあります。


 東京・茅場町のオフィス街の一角に位置するカフェは、キャンプ場を運営する企業が「都会でもっと気軽にキャンプ体験ができる場所を」と、2020年6月にオープン。キャンプ場をイメージした店内では、ホットサンドメーカーやメスティン、スキレットなどのキャンプ道具を使った本格的な「キャンプ飯」が楽しめます。オープンエアーの店内には人工芝が敷き詰められ、照明は木漏れ日をイメージ。日没後は、虫やカエルの声をBGMに、ランタンの光がテーブルを照らす。「忙しくてキャンプに行く時間がないキャンパーが雰囲気を味わいに来ることもある」人気のスポットに。

 さらに全国の直営キャンプ場8カ所、提携キャンプ場17カ所で、本格的なキャンプをサポートする新たなビジネスも生まれています。テントの設営や撤収、火起こしからキャンプ場での過ごし方までスタッフがサポート、キャンプ初心者でも安心してキャンプデビューできるサービスを提供、さらにその裾野は広がっています。

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