アルファベットの綴りの読み方

 日本人にとって英語の綴りを読み上げるのは難しい面があります。「B」と「D」、「M」と「N」などは英語が母国語の人でも聞き違えることがあります。

 英語ではなく日本語でも、飛行機の機内でお客様の飲み物の希望を聞いて牛乳をお持ちしたところ、怪訝な顔をされた、という笑い話を聞きます。これは日本語では「ミルク」という音と、「ビール」という音が似て聞こえるからなのです。機内の騒音の中では思いもしない聞き違いが生ずるものです。


 皆さんは英語の綴りを読み上げる(=spell out)際にどのような言い方をしているでしょうか。

 航空業界にはいくつかの決まりごとがあります。いずれも単語の頭文字を示すもので、「A」「B」「C」「D」を「Able」「Baker」「Charlie」「Dog」のように聞き取りやすい英語の単語に置き換えて読み上げる方法が一つ。この方式は第二次世界大戦中の連合国軍が共同作戦を実施する際に使用した「フォネティック・コード=Phonetic Code」が土台になっているようです。北大西洋条約機構(NATO)方式では少し呼び方が異なり、「Alpha」「Bravo」「Charlie」「Delta」となります。いずれも軍事目的に開発されたものです。

 一方、出所はわかりませんが、日本の観光業界では国名や地名を使い、「America」「Britain」「China」「Denmark」などの呼び方をします。


ドイツ語圏では主に人名が使われるそうで、「アンナ/アントン」「ベルタ」「シーザー」「ドーラ」となり、この呼び方は観光業界とは全く関係のない、音楽の世界でも使用されています。楽譜には「練習番号」がふられており、楽曲の途中からでも練習を再開しやすいように、音楽の区切りに「A」「B」「C」「D」などが印刷されています。ドイツやオーストリアでは、オーケストラの指揮者は、『「Otto」の8小節前からもう一度』などとオーケストラに指示をして、練習をしているようです。

(江の島太郎)