【研究員コラム】 2023.5.18

 海運と空運は兄弟

現代は海外への長距離旅行は飛行機がほとんどになりました。クルーズ船のような例外はありますが、海外旅行に出かける方は誰もが飛行機を利用する時代です。一部、環境保護のために化石燃料を燃やして飛ぶ飛行機に乗ることをよしとせず、列車を使う人もいます。

飛行機による旅行は船の代替手段として徐々に浸透しました。航空業界の黎明期の制度やサービスは、その多くを商船業界から移植して出来上がったのです。例えば、飛行機の客室をキャビン(船室)と呼ぶのはその名残ですし、運航乗務員のパイロットという呼称は、元々、船の水先案内人の名称です。船長のキャプテンも、現在では機長の呼び名として引き継がれています。飛行機の客室責任者の呼称のパーサーも、客船の客室責任者の呼称を借用したものです。一等船室のファーストクラスも同様です。


皆さんは飛行機で旅行する際に、飛行機のどちら側から乗り降りしますか?ほとんどの場合が進行方向に向かって左側のはずです。これも海運の習慣をそのまま引き継いでいるのです。船は右舷側をスターボード、左舷側をポートサイドと呼びますが、名称の通り、左舷側のポート側から旅客が乗り降りする習慣がそのまま飛行機でも続いているのです。乗り降りする橋をポーディングブリッジと呼びますが、この名称も共通です。ただ、船に乗り降りする橋の名称のギャングウェイという単語は船固有のもののようです。

庶民には中々手が出ませんが、船の旅に思いを馳せて、白いノリのきいたテーブルクロスとナプキンに、シャンペンやワインと共に楽しむ機内食が提供される国際線ファーストクラスの旅は、一度は体験してみたいものです。

江の島太郎