以前にも、日本はトイレ天国、と言うタイトルでコラムを書きましたが、今回はその続きです。


日本語ではトイレ、お手洗い、化粧室。その昔は、はばかり、ご不浄(ごふじょう)、厠(かわや)などとも呼ばれました。英語の表現もさまざまで、トイレット(Toilet)、レストルーム(Restroom)、バスルーム(Bathroom)などの表現があります。少し古い言葉では、Water Closet(WC)と言う言い方もありますが、ルー(Loo)と言う呼び方は聞いたことがあるでしょうか。これはイギリス英語固有の単語で、イギリスを始め、オーストラリアやニュージーランドで頻繁に使われています。フランス語とドイツ語は同じ単語で、トワレット(Toilette)と言うのが一般的ですが、英語と同様にWC(ヴェーセー)という呼び方もあります。


大学生時代に、東京の某百貨店のお歳暮コーナーでアルバイトをした時のことです。デパートの店員間ではトイレのことを「さんさん」と呼ぶことを知りました。お客様に聞かれるかもしれないリスクを考慮して一種の隠語として使われていたようです。「さんさん」の語源は、その昔、日本のトイレの個室のサイズが縦横三尺(約90センチ)だった歴史を引きずっているとのことです。当時の店員さんはトイレに行くときに同僚に「ちょっとさんさんへ行ってきます」と声をかけていました。


私がはじめて英語でバスルームという単語に接した時の反応は、お風呂がどうしたの?というものでした。日本人にとって『バス』はお風呂ですから、バスルームがトイレを意味するのはピンと来なかったわけです。西洋の自宅やホテルではバスルームにお風呂とトイレが同居していることが多いので、考えてみれば驚くほどのことはないのかもしれません。

 もう50年以上前ですが、はじめて香港へ行ったときのことです。空港の待合室に洗手間という文字を見つけた時は、一瞬でほぼ間違いなくトイレであると確信しました。漢字文化のおかげです。


最近の日本は、西洋式が多くなってきましたが、場所によっては和式も根強く生き残っています。実は和式トイレの形状は、日本固有ではありません。少なくとも、中国、タイ、フランス、スペインなどには形状こそ若干異なるものの、スクワット式にしゃがむタイプの物があるのを目撃しました。


日本がコロナ禍を克服して観光立国を目指すためには、日本の観光地、列車、鉄道の駅などにまだ残されている和式のトイレを洋式に変換していく必要性を感じます。日本のおもてなしの重要な要素だと思います。外国からのお客様が高く評価していただいている一つは、細部まで気を配るおもてなしだと思います。皆様、どうかトイレの整備もお忘れ無く。

(江の島太郎)