【研究員コラム】 2022.12.07

最近気になる「市松模様」

 今年の夏、京都の桂離宮を初めて見学しました。

17世紀に宮家の別荘として造営された桂離宮は、ドイツの建築家ブルーノ・タウトも絶賛した、洗練された日本の美意識が息づく建築と庭園です。


 建物の金具や歩道の敷石、石灯籠など、園内の至るところに様々なデザインが施されていることに感銘を受けましたが、中でも印象に残ったのが「松琴亭」の襖障子の市松模様です。青と白の幾何学模様がアクセントになって、茅葺き屋根の簡素な茶屋がとても現代的な建築物のように見えます。


 先月は仕事の空き時間を生かして、東福寺の夜間参拝に出かけました。

ライトアップされた紅葉と天通橋の見事な美しさは言うまでもありませんが、重森三玲が作庭した石と苔の市松模様が暗闇に浮かび上がる幻想的な風景に、またしても魅了されてしまいました。


 2色の四角形が交互に繰り返し並ぶ市松模様。タイミング良く放送されたNHKの番組「美の壺・市松模様」によれば、縄文土器や古墳時代の埴輪に見られる格子状のデザインは市松模様の源となる文様で、無限の広がりや再生を表わしており、これが「市松模様」と呼ばれるようになったのは、江戸時代の歌舞伎俳優・佐野川市松が、好んでこの模様を衣装に使ったからだそうです。


 人気アニメ「鬼滅の刃」では、キャラクターの着物に描かれた柄や模様に、それぞれの個性が込められています。主人公の炭治郎が着ている羽織は、黒と緑の市松模様。四角が繰り返すはっきりしたデザインは、主人公の力強いイメージを印象づけています。


 そういえば、自宅で良く使う蕎麦ちょこや江戸切子のグラスも、市松模様。毎日見ても飽きないデザインで、食卓の色彩を引き締める良いアクセントになっています。


 サッカーW杯の決勝リーグに進んだ日本チームの対戦相手は、赤と白の市松模様がユニフォームのクロアチアでした。この時ばかりは市松模様推しを封印し、青いORIGAMIに声援を送りました。 (Memie)


注:サッカー日本代表2022のユニフォームのコンセプトは “ORIGAMI”。(adidas公式ウェブサイトより)日本で初めてW杯が開催された2002年、決勝が行われた横浜では、約270万羽の折り鶴が舞いあがりました。その時の歓喜をもたらす祈りを折り紙の模様に込めたそうです。

(Memie)