定期便の飛行機が目的地以外の予定外の空港に着陸することを業界ではダイバートと呼びます。英語の『転換する、そらす』を意味するdivertからきています。


ダイバートが発生する要因はいくつかあります。まず一番多いのは、目的地空港の悪天候により着陸が困難な場合に、近隣で着陸可能な空港に降りるケースです。この場合は、天候の回復を待って本来の目的地に向かうことが多いようです。


続いての要因は門限に間に合わなくなった場合です。大阪伊丹空港や福岡空港は騒音対策のために運用時間が限定されており、何らかの理由でその門限に間に合わなくなった場合には、運用時間に制限のない関西国際空港や北九州空港にやむなくダイバートすることになります。


本来あってはならないことですが、機材の不調により、稀には、予期せぬ空港にダイバートすることもあります。エンジンの不調や計器類に警告が出た場合で、安全運航の継続に問題があると判断した場合には、経路上、あらかじめ定められているダイバート候補の空港に着陸をすることになります。


機内で安全上の指示に従っていただけないお客様が発生した場合には、やむなく、近隣空港に着陸し、当該旅客には降りていただきます。これを業界では『アンルーリー(unruly, 規則に従わない)旅客』と呼んでいます。中には機内でアルコールを飲みすぎてアンルーリーと判断される方もありますので、機内での飲酒はほどほどがよろしいようです。


また、旅客や乗務員に急病が発生した場合にもダイバートする場合があります。機内の急病人発生の場合には、お客様の中に医師・看護師か搭乗していればご協力を得ることになりますが、命に関わる状況となった場合には、近隣空港に救急車を手配した上でダイバートします。


いずれのダイバートケースも予定外の着陸になりますので、自社の社員を配置している空港であっても営業時間外であったり、普段は着陸することのない空港に降りたりすることもあるわけです。その時のために、航空会社は『ダイバート契約』と言うものを必ず締結しており、万が一のダイバートの際には、第三者の支援が受けられる体制を取っているのです。ただ、普段は大型機が着陸することがない小さな空港にダイバートしてしまうと、人的資源、技術力、施設などが十分とは言えず、やむを得ず、お客様にご迷惑がかかってしまうこともあります。


(江の島太郎)