航空業界では世界各地の空港や都市の名前を頻繁に使用します。英語が共通言語として使用されていますが、各地の地名の綴りは長さが異なり、長いものから短いものまで様々です。その多彩な空港名を予約管理に使用するのは余りに煩雑なので、航空会社の業界団体である、国際航空運送協会(IATA)という組織がアルファベット三文字の組み合わせで略号を作りました。これがスリーレターコードと呼ばれるものです。地名には同じものもあるため、スリーレターコードはその区別にも役立ちます。例えばイギリスの首都ロンドンヒースロー空港(LHR)とカナダのオンタリオ州のロンドン(YXU)や、アメリカのミネソタ州ロチェスター(RST)とニューヨーク州のロチェスター(ROC)、オレゴン州のポートランド(PDX)とメイン州のポートランド(PWM)などです。

NRT(成田)やHND(羽田)ITM(伊丹)の様に、容易に空港名が想像できるものもあります。それではKIXはどこでしょうか。実はこれは関西国際空港(関空)なのです。

JFK(ニューヨーク・ジョン・F・ケネディ空港)やCDG (パリ・シャルル・ド・ゴール空港)の様に空港名となっている人名の頭文字がスリーレターコードになっているものもあれば、FRA(フランクフルト空港)やHKG(香港国際空港)の様にわかりやすいものも数多くあります。

それではYYZ、YUL、YVRはどうでしょうか。これは実はカナダのトロント、モントリオール、バンクーバーなのです。カナダの空港は、世界でも珍しく、必ずYで始まります。

元々、第二次世界大戦前には、アメリカやカナダでは空港を示すコードはアルファベット二文字だったそうです。これは気象予報に使われていたものを転用したものだったそうですが、アルファベットは26文字なので、最大、676都市にしか充当できないため、その後アルファベット三文字に増やし、17,576都市まで対応できる様に変更されました。

その際、カナダはそれまで使われていた二文字のコードの前にYをつけ、そのまま今日に至っています。ただ、カナダ以外にもYで始まるスリーレターコードが少しだけあります。アメリカのワシントン州のヤキマ(YKM)やアリゾナ州のユマ(YUM)などです。紛らわしいですね。Yが付されたのは、二文字から三文字になった際に、カナダの空港はすでにほとんどが気候測候所と無線施設が完備していたため、「安心してください、完備していますよ、Yes!」、のYが使われました。

航空会社の新入社員の訓練は、このスリーレターコードと、航空会社を識別する二文字の略号を覚えることから始まります。

(江の島太郎)