キジムナハナガサ
Mycena comata Har. Takah. & Taneyama, in Takahashi, Taneyama, Kobayashi, Oba, E. Hadano, A. Hadano, Kurogi & Wada, The fungal flora in southwestern Japan, Agarics and boletes 1: 155 (2016)
和名の由来: キジムナハナガサは材から発生するので、沖縄の樹木(ガジュマル)の精霊「キジムナー」に因んで命名しました。
本種並びにコガネハナガサは、傘が平開すると一晩で萎れるヒトヨタケ型の子実体に加え, ウラベニガサ型の子実体および偽アミロイドに染まる厚壁の毛状皮嚢体を持つ性質においてクヌギタケ属として異質です。従って将来的にキヌカラカサタケ属Leucocoprinusに近縁と思われる熱帯性コガネハナガサ属(Corrugaria Metrod 1949)の仲間として独立する可能性があります。
ヤマケイの「日本のきのこ」（新版）にコガネハナガサとして掲載されている石垣島産サンプルの写真はキジムナハナガサです。 May 2002, Ishigaki Is．
Immature basidiomata of Mycena comata, 16 Oct. 2011, Ishigaki Is.
キジムナハナガサの幼菌, 2011年10月16日, 石垣島.
原基および幼菌の傘は写真の様に時に中丘(umbo)を形成することがあります。マレーシア産近縁種 “Trogia”crinipelliformis (Corner 1996)も原基が鋭い突起状の中丘を形成すると言われています。 Oct. 2011, Ishigaki Is．
Basidiomata and primordia of Mycena comata (holotype), 20 Oct. 2011, Ishigaki Is.
キジムナハナガサの成長した子実体と原基 (正基準標本), 2011年10月20日, 石垣島.
主な形態的特徴
ア) 子実体はウラベニガサ型で橙黄色の毛被に被われ, 華奢で脆い。
イ) 傘は扇のヒダ状の明瞭な条線を表す。
ウ) ヒダは白色、離生。
エ) 柄の根元に発達した菌糸体並びに基盤を形成しない。
オ) 担子胞子は無色, 弱アミロイド。
カ) 縁シスチジアは2形性, 毛状の付属糸を持つかまたは欠く。
キ) 表皮シスチジアは厚壁, 偽アミロイド, 毛状付属糸を持つ。
コメント: マレーシア産近縁種 “Trogia” crinipelliformis Corner (Corner 1996) および本州産コガネハナガサ Mycena auricoma Har. Takah. (Takahashi 1999) は非アミロイドの皮嚢体とより長い150 μmに達する縁シスチジアを有する点でキジムナハナガサと有意差が認められます。さらにマレーシア産種は非アミロイドの担子胞子およびしばしば分岐した付属糸を持つ縁シスチジアを形成すると言われています。
生態および発生時期: 広葉樹の落枝上に孤生または散生, 5月～10月, やや稀.
分布: 沖縄 (石垣島).
References
Corner EJH. 1996. The agaric genera Marasmius, Chaetocalathus, Crinipellis, Heimiomyces, Resupinatus, Xerula and Xerulina in Malesia. Beih Nova Hedwigia 111: 1–175.
Metrod, G. 1949. Ⅲ. Les Mycenes de Madagascar (Mycena, Corrugaria, Pterospora). Paris. 146pp.
Singer R. 1986. The Agaricales in modern taxonomy, 4th edn. Koeltz, Koenigstein.
Takahashi H. 1999. Mycena auricoma, a new species of Mycena section Radiatae from Japan, and Mycena spinosissima, a new record in Japan. Mycoscience 40 (1): 73–80.
Yoshie Terashima (supervisor), Haruki Takahashi (editor), Yuichi Taneyama (editor). 2016. The fungal flora in southwestern Japan: Agarics and boletes. 『南西日本菌類誌 軟質高等菌類』Tokai University Press. 349p.