ヒメホタルタケ

Marasmiellus lucidus Har. Takah., Taneyama & S. Kurogi, in Takahashi, Taneyama, Kobayashi, Oba, Hadano, Hadano, Kurogi & Wada, The fungal flora in southwestern Japan, Agarics and boletes 1: 155 (2016)

ヒラタケ型の小型発光菌で、無柄もしくは発達の悪い偽柄 (pseudostipe)が存在し、子実層托は一般に浅いヒダ状～脈状に退化します。類似菌のヒメヒカリタケは発達したヒダの間に側脈を形成し、根元に通常剛毛状の菌糸体が存在します。

最近(2022年)ヒメホタルタケに近縁と思われる未知の発光菌が鳥取県内で見つかっています。


Etymology: The specific epithet comes from the Latin word for “lucid, shining”, referring to the luminescence of the basidiomata.

Basidiomata of Marasmiellus lucidus (holotype), on a dead branch of L. hypoglauca, 8 May 2006, Miyazaki-shi, Miyazaki Pref. Photo by Takahashi, H.

キダチニンドウの枯れ枝上に発生したヒメホタルタケ (正基準標本), 2006年5月8日,宮崎県宮崎市.

2006年5月6日＃宮崎市

Miyazaki Pref. Photo by Mr. Kurogi, S.

主な形態的特徴


ア）子実体は発光性を持つ小形 (4–8 mm) のヒラタケ型で, 淡褐色～類白色, 無柄または退化した微小な偽柄を持ち, 側生もしくは時に背着生.


イ）子実層托は浅いヒダ状～脈状に退化する.


ウ）担子胞子は楕円形～長楕円形, 非アミロイド.


エ）縁シスチジアを欠く.


オ）側シスチジアは上部に結晶物が付着する偽シスチジア形.


カ）傘周縁部の末端細胞は部分的に複数の瘤状～短指状突起に被われた断続的なラメアレス構造を形成する.


生態および発生時期: キダチニンドウ, ツクバネガシ, ハマニンドウの枯れ枝上またはモミの枯れ葉上に群生または散生, 3月～6月.

分布: 九州 (宮崎).

コメント: 根元に綿毛状菌糸体を欠き, ヒラタケ型で非アミロイドの子実体, 脈状に退化した子実層托, 不連続なラメアレス構造を形成する傘表皮組織, そしてクランプの存在はツキヨタケ科Omphalotaceae に分類されるシロホウライタケ属Marasmiellus, ディスタンティフォリイ節section Distantifolii Singer (Singer 1961, 1973, 1986) との類縁関係を示唆している. しかしながら, 退化した子実層托および結晶物に被われる側シスチジア (偽シスチジア) の特徴はシロホウライタケ属として異質であり, 分類学的位置については疑問が残る.

属内において本種は退化した子実層托と小形のヒラタケ型子実体を形成する東アフリカ産Marasmiellus afer Pegler (Pegler 1968, 1977) に類似するが, 後者は傘が純白色を呈すること, 不規則な短指状突起に被われた縁シスチジアを持つこと, そして側シスチジアを欠く性質において本種と異なる.

またヒメホタルタケの発達の悪い子実層托を形成するヒラタケ型の子実体はシロホウライタケ属に近縁とされる退化系のCymatella属 (Patouillard 1899; Singer 1986) を想起させるが, Cymatella属は発達した柄を有し, 子実層托並びにシスチジアを欠くとされている.


References 引用文献

Patouillard NT. 1899. Champignons de la Guadeloupe. Bull Soc mycol Fr 15: 191–209.


Pegler DN. 1968. Studies on African Agaricales: I. Kew Bull 21 (3): 499–533.


Pegler DN. 1977. A preliminary agaric flora of East Africa. Kew Bull, Addit Ser 6: 1–615.　


Singer R. 1961. Diagnoses fungorum novorum Agaricalium II. Sydowia 15 (1-6): 45–83.


Singer R. 1973. The genera Marasmiellus, Crepidotus and Simocybe in the Neotropics. Beih Nova Hedwigia 44: 1–517.


Singer R. 1986. The Agaricales in modern taxonomy, 4th edn. Koeltz, Koenigstein.

Yoshie Terashima (supervisor), Haruki Takahashi (editor), Yuichi Taneyama (editor). 2016. The fungal flora in southwestern Japan:　Agarics and boletes. 『南西日本菌類誌　軟質高等菌類』Tokai University Press. 349p.