コンルリキュウバンタケ (紺瑠璃吸盤茸

Mycena lazulina Har. Takah., Taneyama, Terashima & Oba, in Takahashi, Taneyama, Kobayashi, Oba, E. Hadano, A. Hadano, Kurogi & Wada, The fungal flora in southwestern Japan, Agarics and boletes 1: 155 (2016)

 

和名の由来: コンルリとは柄の根元が美しい紺瑠璃色を呈する性質を表します。ガーネットオチバタケとともに鮮やかな濃い色素を持つ美しい発光菌です。

小さな白い花のような子実体。


ヒダの形は花蓮根を彷彿とさせます。

2020/12/27, Ishigaki Is. 

サツマサンキライ()の枯れた茎上で発光するコンルリキュウバンタケ。

補助光(反射光)を加えて撮影し、カラーバランスと色温度を調整してみました。高感度ノイズも補正しました。

Basidiomata of Mycena lazulina emitting green light on a dead stem of Smilax bracteata (?)

2020/12/10, Ishigaki Is. Collected by Keiya Yoshino. Photo by me

主な形態的特徴

) 子実体は微小 (傘の径 2 mm以下) で全体に白色を呈し, 濃青色の台状基盤から発生する。


) 傘は扇のヒダ状の溝線を表す。


) ヒダは明瞭な襟帯を形成し, 疎で互いの間隔がきわめて広く, 外観は花蓮根を連想させる。


) 担子胞子はアミロイド。


) 縁シスチジアは広こん棒形~類円柱形で, 上部が微突起に被われる。


) 傘表皮組織はアカントシスト様末端細胞が子実層状被を成す。


) 柄シスチジア (アカントシスト様細胞) は広こん棒形または上部が嘴状に伸びた片膨れ状で, 頂部は微疣に被われる。


) 柄実質は偽アミロイド。


) 菌糸体並びに子実体全体が黄緑色に発光し, 通常菌糸体の発光性の方が強い。

 

コメント: アカントシスト型の表皮シスチジアの存在, 非ゼラチン質の傘の表皮組織, アミロイドの担子胞子, そして台状基盤を有する微小で白色の子実体は, 本種がクヌギタケ属シロコナカブリ節(Mycena section Sacchariferae) に属することを示唆しています。節内において紫色の毛状基盤を持つと言われる東アフリカ産Mycena arundinarialis Pegler (Pegler 1977) は本種に最も近縁と思われます。

オーストラレーシアおよび南米チリに分布するMycena interrupta (Berk.) Sacc. (= Mycena cyanocephala Singer) (Hooker 1860; Singer 1969; Horak 1980; Grgurinovic 2003) は吸盤形の根元と濃青色の色素を持つ美しい種類として知られていますが, 発光性を欠き, 傘の径16 mm (Grgurinovic 2003) に達するより大型の子実体を形成し, 湿時粘性を表す濃青色の傘, 青色の縁取りがある上生のヒダ, そしてより大型の担子胞子: 8.4–11.6 × 5.7–8.8 μm (Grgurinovic 2003) を形成します。

与那国島から採取された標本 (TNS-F-52274) については、柄実質の菌糸が膨大しないことまた台状の基盤を構成する組織に褐色の細胞内色素が存在する点で同定にやや疑問が残ります。

生態および発生時期: 朽ちた竹およびコミノクロツグ, ビロウなどのヤシ科植物またはユリ科のサツマサンキライに群生, 6月~12.

分布: 沖縄 (石垣島, 西表島, ?与那国島), 台湾(), Tom May氏によるとオーストラリアにもコンルリキュウバンタケ類似菌があるとのこと。

分子解析に用いた標本並びにGenBank登録番号: TNS-F-52275, AB971703.

 

References 文献

Desjardin DE. 1995. A preliminary accounting of the worldwide members of Mycena sect. Sacchariferae. Taxonomic monographs of Agaricales. Bibl Mycol 159: 1–89.

 

Grgurinovic CA. 2003. The genus Mycena in South-Eastern Australia. Fung Diver Research Series 9: 1–329.

 

Hooker JD. 1860. Botany of the Antarctic Voyage III. Fl Tasman 2: 1–422.

 

Horak E. 1980. Fungi, Basidiomycetes. Agaricales y Gasteromycetes secotioides. Fl criptog Tierra del Fuego (Buenos Aires) 11 (6): 1–524.

 

Pegler DN. 1977. A preliminary agaric flora of East Africa. Kew Bull, Addit Ser 6: 1–615.

 

Singer R. 1969. Mycoflora australis. Beih Nova Hedwigia 29: 1–405.

 

Singer R. 1986. The Agaricales in modern taxonomy, 4th edn. Koeltz, Koenigstein.

 

Yoshie Terashima (supervisor), Haruki Takahashi (editor), Yuichi Taneyama (editor). 2016. The fungal flora in southwestern Japan: Agarics and boletes. 『南西日本菌類誌 軟質高等菌類』Tokai University Press. 349p.