アミヒダタケ属

Campanella Henn., Bot. Jahrb. Syst. 22: 95 (1895)

基準種:C. buettneri Henn., Bot. Jb. 22: 95 (1895)


アミヒダタケ属の主な特徴 (Singer 1986による):

1) 子実体は小型 (傘の径30 mm以下)のヒラタケ型で, 一般に少なくとも幼菌の段階では白色~類白色を呈する;


2) 柄は著しく偏在生~側生, もしくは無柄あるいは背着性(dorsal)の偽柄を持つ;


3) 実質は著しくゼラチン化し, 非アミロイド, 菌糸はクランプを持つ;


4) 傘の上表皮層は発達したラメアレス構造もしくはアステロストロメラ様構造 (二叉状構造:dichophysoid) からなる;


5) メチュロイドが時に存在する(Sect.2.Diplocystides);


6) 担子胞子は非アミロイド, 楕円形, 亜球形, 非コットンブルー染色性, 薄壁, 時に外側に突出部を持ち, または不明瞭な多角形になるかあるいは不規則な形状になるが, 星形にはならず, 平滑;


7) 子実層托は著しい網ヒダ状(strongly anastomosing)を成し, しばしば連絡脈が放射方向に走るヒダと同じ高さに発達してやや管孔状(poroid-alveolate)に見えるが, 発達の浅い連絡脈が混在するため通常典型的な管孔の様な規則的配列にならない.


8) 切り株や落枝などの材上に発生.


分布及び既知種: 熱帯~亜熱帯及び南半球温帯を中心に分布し, 世界に50種以上知られている.

コメント: Horak (1984, 1986)は, 不整形の担子胞子を持つ本属の一部の種類とアシグロホウライタケ Marasmiellus nigripes Tetrapyrgos 属に統合している. 分子系統の解析結果 (Moncalvo et al. 2002)によれば Campanella属はTetrapyrgos 属とともにホウライタケ科Marasmiaceaeに置かれている.

青木実氏のニカワアミタケ(日本きのこ図版 no.331)はゼラチン化したヒラタケ型の子実体および管孔状の子実層托を形成する性質は本属と共通するが, 子実体は有色で, 子実層托は典型的な管孔状を成し, 傘の上表皮層はラメアレス構造を欠き, アミロイドの担子胞子を有する点で明らかに異なり, むしろスズメタケ属 (Dictyopanus) もしくは ラッシタケ属 (Favolaschia)に類似する.


参考文献

1) Bougher, N.L. 2007. The Genus Campanella in Western Australia. Mycotaxon 99: 327-335.


2) Parmasto, E. 1981. On the Asian Species of the Genus Campanella (Tricholomataceae: Collybieae). Nova Hedwig. 34: 437-447.


3) Singer, R. 1975. The neotropical species of Campanella and Aphyllotus with notes on some species of Marasmiellus. Nova Hedwig. 26: 847-896.



節, 亜節の概念および日本産既知種

Sect.1.Campanella: メチュロイドを欠く.

Subsect. Gigantosporae Sing: 担子胞子は大型(11-15.5×9.5-12μm); シスチジアは短指状に分岐する(diverticulate). 基準種 (単一タイプ): C. gigantospora Sing.


Subsect. Elongatisporae Sing: 担子胞子は長形 (長さ10μm以上, 幅5.3μm以下); 傘は白または黄色で, 緑色にはならない. 基準種:C. elongarispora Sing.


Subsect. Aerugineae Sing: 担子胞子の大きさは標準的 (5.5-10.5×3-6μm), 通常担子胞子の形態は様々; 子実体は少なくとも成熟時において緑色または灰緑色(glaucous)を帯びる. 基準種:C. aeruginea Sing.


Subsect. Campanella (Albae Sing): 担子胞子は長さ 6.5μm以上, 長形ではなく, 時に不均衡な突出部 (acymmetrical bulges) を持つかまたは欠く; 子実体は無色または灰色を帯びるが灰緑色ではなく, もしくは時に淡黄褐色~帯褐色を帯びる. 基準種:C. alba (Berk.& curt.) Sing.


アミヒダタケ Campanella cf. junghuhnii (Mont.) Singer, Lloydia 8(3): 192 (1945): 傘は膜質, 表面はほぼ白色, 網状の皺がある; 柄は細短く, 側生; 竹類の枯れた稈上に発生; 分布は東アジア, インド~中国, マレーシア, フィジー諸島, オーストラリア北東部.


Subsect. Floridanae Sing: 胞子は短楕円形~亜球形, 長さ6.5μm以下, これより長形の場合, 担子器は2胞子性. 基準種:C. floridana Sing.

ムニンチヂミタケ Campanella boninensis (S. Ito & S. Imai) Parmasto, Nova Hedwigia 34(3 & 4): 438 (1981) (Basionym: Dictyolus boninensis S. Ito & S. Imai, Trans. Sapporo nat. Hist. Soc. 16: 20. 1939): 傘は紫褐色を帯び, 担子胞子は広楕円形~類球形(長さ4.8-6.4μm),

腐木上に発生. 分布は小笠原父島, ロシア沿海州 (プリモルスキー).


Sect.2. Diplocystides Sing.: メチュロイドが存在し, しばしば薄壁で分岐物のある細胞と混在

する. 基準種:C.diplocystis Sing.

アミヒダタケの仲間(石垣島産) Campanella sp.