キアミズキンタケ Lysurus aff. periphragmoides (Klotzsch) Dring

 

今のところ国内において石垣島のみで分布が確認されている超珍菌です。他のスッポンタケ類と比較して柄が短い性質があります。


キアミズキンタケに近縁とされているLysurus periphragmoidesは、アフリカ(モーリシャス島)、スリランカ、インド、西パキスタン、インドネシア、豪州、ニューギニア、ドミニカ、北米、東アジアなどに分布し、キアミズキンタケの和名は、台湾産の標本に基づいて沢田兼吉氏(1931)によって命名されました。その後、学研写真部の矢島勲氏が1972117日に石垣島で発見し、写真撮影された標本に基づいて大谷先生(1974)が日本新産種として報告しました。


学名Lysurus periphragmoidesに相当する種は色の違いによって赤色、黄色、白色(日本では未確認)3タイプあることが判明しています。以前はそれぞれ別種として扱われてきましたが、基質(土壌)の水素イオン濃度によって色が変化することが確認されており、分類学的な有意差として認められるような形態学的に安定した性質とは言えないので、現在は3タイプとも同一種と考える説が有力です。


本種に類似したコナガエノアカカゴタケ Simblum sphaerocephalumについては、キアミズキンタケの学名に採用されているLysurus periphragmoidesと同一種とする説もありますが、柄の長さおよび頭部の構造(コナガエノアカカゴタケの網目は幅が広く、7個前後)において相違が見られるので、分布域並びに生態環境の違いによって種分化している可能性があると考えられます。吉見昭一さんも別種と考えていたようです。

 

キアミズキンタケとされる黄色型の国内における採集例は限られますが、コナガエノアカカゴタケとされる赤色型は2001年以降千葉県の海岸で浅井さんらによって多数のサンプルが確認されているので、世界的規模での分布域の広さを考え合わせると"まぼろし"と呼ぶほど稀な種類ではなさそうです。研究者が少ないこともあり、特殊な環境下(リンゴなどの果樹園、芝生上、牧草地、海岸の砂地など)の調査が不十分だったため採集例が少なかったのではないかと推測されます。


文献


大谷吉雄.1974.沖縄石垣島で発見されたキアミズキンタケ.日菌報(Trans mycol. Soc. Japan) 15: 243-245


石垣島産キアミズキンタケ

2023年11月2日.  撮影: 吉野圭哉氏 

石垣島産キアミズキンタケ

2023年11月. 撮影: 高橋春樹