アシグロカレハタケ

Gymnopus phyllogenus Har. Takah., Taneyama & Terashima, in Takahashi, Taneyama, Kobayashi, Oba, E. Hadano, A. Hadano, Kurogi & Wada, The fungal flora in southwestern Japan, Agarics and boletes 1: 155 (2016)

西表島産アシグロカレハタケは温帯産アシグロホウライタケやシモフリアシグロタケに似ていますが、子実体がより微小(傘径11.5 mm)で、シロヒメホウライタケ型箒状細胞が傘表皮とヒダの縁部に存在し、柄表皮が偽アミロイドに染まるユニークな性質を持ちます。

Oct. 2011, Iriomote Is.

主な形態的特徴

子実体は微小なホウライタケ型; 傘はやや粉状で純白色; 柄は黒褐色で, 白色粉状物に被われ, 根元に発達した菌糸体はない; 胞子は非アミロイド, 長楕円形~類アーモンド形; 偽担子器はこん棒形または紡錘形; ヒダ縁部と傘表皮組織にシロヒメホウライタケ型箒状細胞が存在する; 柄シスチジアは類円柱形~不規則な形状を成す; 柄表皮組織と柄実質は偽アミロイド; スダジイの枯れ葉上に発生.


生態および発生時期: スダジイの枯れ葉上に散生, 10月.

分布: 沖縄 (西表島).

供試標本: TNS-F-52270 (正基準標本), スダジイの枯れ葉上, 沖縄県八重山郡竹富町西表島, 2011年10月14日, 寺嶋芳江氏採集.


コメント: ホウライタケ型の子実体, 非アミロイドの担子胞子, シロヒメホウライタケ型箒状細胞の縁シスチジア, 箒状細胞が混在した平行菌糸被からなる傘表皮組織, そして偽アミロイドに染まる柄表皮組織の性質は本種がモリノカレバタケ属Gymnopus, オチバタケ節section Androsacei (Kühner) Antonín & Noordel. (Mata et al. 2004; Noordeloos and Antonín 2008; Antonín and Noordeloos 2010) に近縁であることを示唆している. 節内においてコンゴ産Marasmius kisangensis Singer は小形で白色の傘と粉状暗褐色の柄を有する点で本種に似ているが, 暗褐色の根状菌糸束を伴うこと, 不規則な形状の縁シスチジアを持つこと, そして剛毛体型柄シスチジアの存在において異なる.

根元に発達した菌糸体を欠き, 非アミロイドの担子胞子および紡錘形の偽担子器を形成する性質はSingerの分類概念 (Singer 1986) によるシロホウライタケ属 Marasmiellus Murrillと共通するが, 箒状細胞を持つ傘表皮組織および偽アミロイドに染まる柄表皮組織の性質は明らかに異質である.

マレーシア産 Mycena parsimonia Corner (Corner 1994) は微小で白色の子実体と非アミロイドの担子胞子を形成する点で本種に類似するが, マレーシア産種は材上生で, 直生~垂生のヒダを持ち, 縁シスチジア並びにクランプを欠くと言われている。

本種はまた上生する丸山形~水平のヒダ, 非アミロイドの担子胞子, 4胞子性でクランプを持つ担子器においてMaas の分類概念 (Maas Geesteranus 1980, 1991) によるクヌギタケ属Mycena, ウスズミコジワタケ節section Hiemales Konrad & Maubl., ウブゲオチエダタケ亜節subsection Hiemales Maas Geest. と一致する. しかしながらホウライタケ型の子実体の類型, シロヒメホウライタケ型箒状細胞, 紡錘形の偽担子器, そして偽アミロイドに染まる柄表皮組織はクヌギタケ属に見られない特徴の組み合わせである.


文献

Yoshie Terashima (supervisor), Haruki Takahashi (editor), Yuichi Taneyama (editor). 2016. The fungal flora in southwestern Japan: Agarics and boletes. 『南西日本菌類誌 軟質高等菌類』Tokai University Press. 349p.