アンテナ代わりにCATVを利用せざるを得ないユーザ

アンテナ代わりユーザーには割高なCATV料金

熊本市の西側に聳える天然のスカイツリーとも言える金峰山(665メートル)山頂のテレビアンテナ群は,我家からは隣家の建物等に遮られて直接見ることができない.そこで隣家の屋上にVHF, UHFのアンテナを設置させてもらってテレビを視聴していたが,平成元年に熊本ケーブルテレビ(熊本市が出資した第三セクター)が開局した際,ケーブルに切り替えた.以後,台風が来てもアンテナの保守など気にせずに利用している.平成23年7月に実施された地デジ移行時も特に意識する必要はなかった.

ケーブルテレビ開局当時は,電話回線でインターネットに接続していたので,ケーブルならインターネット回線網もすぐに実現するものと期待していたが,まったくの見込み違いであった.

当時,熊本大学では生涯学習センターの構想が練られていた.その委員をしていたので,ケーブルインターネットを利用した学習(薬剤師の卒後教育等)を提 案した.ところが,ケーブル運営会社に問い合わせたところ,「計画はあるが,開始時期は未定」との回答を得て,インターネットを利用した学習構想を取り下 げざるをえなかった.

ケーブルインターネットが実現したのはテレビ網敷設から12年後の平成12年になってからである.

現在はケーブルテレビとインターネット接続サービスは一体化してセットで契約することが普通になった(地デジの双方向機能を活かすためには必須である)が,ケーブルテレビ敷設時は,熊本市域においてインターネットの需要を過小評価したためか,大幅な遅れが生じたと考えることができる.その3年後の平成15年末には,我が国の電話線を利用するADSLは1000万回線を突破した.急速な社会の情報化に刺激されて,慌ててCATVインターネットサービスを開始したためか屋外で分岐した裸の同軸ケーブルを化粧壁にステップルで固定する簡易配線(牛小屋の電球配線的な感じ)であった.見苦しいのでモールで隠したのはずっと後のリホーム時である.

ケーブルテレビは,オプション契約のチャンネルは別にしても70以上のチャンネルを見るこ とができる.ところが,数多あるチャンネルの中で普段見るのは,地デジ,BS程度である.このような「アンテナ代わり」の利用者に対する料金体系があって もよいのではないかと思っていたら,最近「お年寄り向きの安価なサービス(65歳以上限定テレビメニュー・スマイル65)」が提供されることになった.視聴できるチャンネルは,地上デジタル放送(7ch), BSデジタル放送(10ch), CSデジタル放送(9ch)に限定され,条件としてインターネットまたはケーブル電話とのセットで65歳以上の人が同居している必要がある.

昨年7月に実施された地上デジタル放送への移行によって,「アンテナの代わり」としてCATVや光ケーブルによるFTTH (Fiber To The Home)のセールスが行われていることを考えると,お年寄り世代のみではなく,「アンテナ代わり」のユーザに対してチャンネルを限定した格安サービスを実施すべきである.

アンテナの代わりにNTTのフレッツ光回線を使って,地デジ対応テレビで地上波デジタル放送/BSデジタル放送を見ることができるサービス(フレッツ・テレビ)のセールスも激しくなり,CATVユーザの切り崩しが始まった.地デジ・BS視聴中心のユーザにとって,CATV以外の選択肢をようやく手にすることができたと言える.


テレビを視聴する方法

1)アンテナを設置する

2)CATVを利用する

3)フレッツ光を利用する

地デジへ移行する際,国営放送?のNHKおよび民間テレビ放送各社は1年以上前から地デジ移行キャンペーンを行った.その元締めである総務省はホームページ,地上デジタルテレビ放送のご案内で各種の情報を提供してきている.そのなかで個別アンテナ以外の選択肢としてCATVの利用を薦めていることを考えると,アンテナ代わりのCATVユーザ向けの料金設定を指導すべきではないだろうか.

CATVの場合,インターネットの料金(速度を勘案した場合)も他社に比べると割高である.最近,報道されている「光ケーブルの値下げ」がきっかけになり,サービス改善が図られることを期待したい.

追記)JCN系列の他のケーブル会社では,地上デジタル・BSデジタルのみ視聴可能なサービスを提供している会社も存在する.

追記)ケーブルテレビを利用している親戚,知合いに尋ねてみたが,ほとんどが「アンテナの代わり」ユーザであることが分かった.利用料金はインターネット(スタンダード)込みで月額約8000円である.

追記)地デジ用の画像をハイビジョンで視聴することに慣れると,ブラウン管用に制作された映像は画質が非常に悪い(どう仕様もないことではあるが).そのことも提供される各種のチャンネル(映画,時代劇など)を選択しなくなった理由のひとつと考えられる.


参考資料

地上デジタル放送 地デジを観るには? ケーブルテレビで、地上デジタル

CATVで地デジを視聴中の方(NTT西日本の「フレッツ」公式ページ)

月額682.5円でCATVからの乗り換えを狙うフレッツ・テレビ - ITmedia

(2012.12.31)