実際は寒冷化?

黒点消失,宇宙線&雲量増大

実際は寒冷化?(黒点消失,宇宙線&雲量増大)

1月14日の午後は脱走犯逮捕と内閣改造のニュースで終始していた.

気分転換に教育テレビの「サイエンスZERO」を見ていたら,表題についての解説をやっていた.

1997年,デンマーク気象研究所の Svensmark と Friis-Christensen が発表した「地球全体の雲量と宇宙線の放射強度との間に相関性がある」[H. Svensmark and E. Friis-Christensen (1997) Variation of cosmic ray flux and global cloud coverage - a missing link in solar-climate relationships, Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physics, vol.59, No.11, p.1225-1232]という説の解説である.スベンスマルク効果 - Wikipedia

NHKの宣伝ともいえる「内容の説明」 私たち生命の活動を支える太陽に、今大きな異変が起きています。これまで11年周期で増減を繰り返してきた黒点が、減ったまま増えない状況が続いているのです。これは太陽の活動が低下していることを示しています。実は、17世紀の後半にも同じような時期があり、その時は地球が寒冷化していたことがわかっています。今回の太陽活動の低下は地球にどんな影響を及ぼすのか?謎を解き明かそうとする研究者たちを追います。

ゲスト 常田 佐久国立天文台 教授 竹内 薫 科学作家

学説発表から15年後の現在,NHKの教育番組でとりあげるわけだから,一頃よりも受け入れられているのだろうと思い視聴した.しかしNHKも最近は間違った報道(例 放射線量測定ミス)をすることもあるので,なるべく客観的に見せてもらった上に,さらに関連情報を調べるとそれなりに信頼?できる知見のようである.

気象変動の主な要因

大気中の二酸化炭素濃度変化,温室効果ガスだけではなく日照時間の影響,水蒸気の温室効果,火山噴火,さらには雲の量が関係し,雲量は宇宙線の量に左右されるなどである.

ところで,宇宙線とは,宇宙空間に存在する高エネルギーの放射線粒子のことであり,その放射強度は太陽から放射される電磁波(太陽束)の強弱の影響をうけるので,太陽黒点数や周期に応じて,雲量が変化するということになる.論文には15年間の観測データの図が掲載されていて,たしかに相関があるように見える.


最近, 太陽から黒点がほとんど消えているという事実に注目する必要があるらしい.太陽はガス球体でありながら自転している.したがって熱流体として規則性のある活動をしている.11年ごとに黒点が多くなるなどの規則性からのずれもあるが,それも地球の気圧配置と同じように変動する.黒点というのは黒い物質が浮かんでいるのではなく、強力な磁場の影響で周りの6000度より温度が低くなり4500度になっている部分である.磁場は内部の対流によって発生するので,すぐに消失するわけではなくある程度の時間安定に存在すると言われている.


黒点が観測されないということが寒冷化につながるメカニズムは以下のとおりである.

銀河からやってくる宇宙線(放射線)は電荷を持っている.地球にたどり着くまでに,太陽風の磁場の影響を受けて進路が変わる.ところが,太陽活動が盛んな場合は,磁気雲と呼ばれる磁場を伴った太陽風が惑星間を吹き荒れる.この磁気雲によって宇宙線は散乱され,地球にやって来る宇宙線は減少する.

太陽活動が低下し,黒点が消えると,

太陽を取り巻く磁場が小さくなる

宇宙から降り注ぐ宇宙線(放射線)に働く太陽の磁場の影響が小さくなり,地球に降り注ぐ放射線が増える

雲をつくる種となる放射線が増え,雲の量が増加する

雲量の増加で日照時間が減少し寒冷化する

近年,化石燃料の使い過ぎによる地球温暖化だけがクローズアップされているが,時間が経って振り返ってみたら,単なる「自然のゆらぎ」のひとつだったと言うことになるかもしれない.

以下のような気になる記述を太陽黒点 - Wikipedia で見つけた.

太陽黒点が少ない活動極小期に巨大地震の発生頻度が上昇することが,九州大学宙空環境研究センター の分析結果によって指摘されている.M8.0以上の巨大地震に至っては全28回のうち79%が最小期に発生していた.

調べるといろいろあるが,「だから地球や宇宙を調べる必要がある」と言いたい人達のやらせでないことを祈る.九電や食べログと同じと言うつもりはない. (2011/1/17)


追記 サイエンスゼロの主張には誤りがあり,「気候研究者のほとんどは,地球はさらに温暖化すると考えている」との見解とその根拠となる文献をいただきました(植野様より,2011/2/1).下記の文献の図1によると2000年までは宇宙線フラックスと低層雲量の間に相関がみられるが,2000年以降はみられないとのことです.

宇宙線と雲形成(片岡龍峰,地学雑誌 Journal of Geography119(3)519-526 2010)(全文)