大学の生涯メールサービス

あちこちの大学で「生涯メールサービス」が始まっている.

友人に訊かれて,深く考えたことがなかったのでその存在意義を調べてみた.

大学が卒業生との繋がりを密にするために,従来行ってきた紙媒体による情報伝達をITを利用した形態に変えようということらしい.

ひとつだけメリットがあると思ったのは,「プロバイダー」を乗り換えるあるいは所属組織が変わっても,生涯変わらないメールアドレスを持つことができることである.

どこの大学でも無料で,「メール転送サービス」を行っている.さらに「メール送受信サービス」を行っている大学もある.勤務先のメールアドレス,プロバイダ提供の自宅メールアドレス等を登録しておけばそれぞれに転送してくれる.

メールアドレスが単純であるのもよい.abcde123@kyudai.jp, ijkl456p@kumadai.jpやqrs789xy@kadai.jpのような聞きなれた簡単なドメイン名を採用しているので分り易い.大学が開催する生涯学習のアナウンス等に利用すれば便利と思うが,学部レベルで「生涯メールサービス」を利用するという発想はまだないようである.

卒後のクラス会等も生涯メールを利用して一斉発信すれば便利であるが,同級生が「プロバイダ」や「就職先」等に変更が生じた際,登録内容を変更してくれないとどうにもならないことは言うまでもない.

入学時に取得したメールアドレスは情報教育の単位をとるとほとんど使用しないといっても過言ではない.ほとんどの学生が携帯メールの利用が主になるためであるが,就職活動時にメールアドレスの存在自体を忘れている学生もいる.このような状況であるから,卒業時に図書返却の督促を携帯電話に切り替えた大学図書館も存在する.ところが,大学の情報処理センターでは学部学生の情報教育やメールのため学部毎に専用のサーバーを設置しているところが多い.このようなハードウエア資産を活用するためにも在学中のメールアドレスの延長として生涯メールサービスを行うことは難しいことではないと思っていたら,すでにそのような試みが実施されているようである.ウエブ情報によると,在学中のメールアドレスの前半部分をそのまま利用して,卒業と同時に生涯メールに切り替えているようである.

メールアカウントを持っていても,たまにしか使用しない我々の世代をターゲットにしても無理であろう.情報処理教育を受けた世代に期待しているようだが,まだ認知度は高くないようである.


申請顛末記

私は学部と大学院が異なる大学のため,一方の大学に生涯メールの利用を申請してみた.手続きはすべてweb上で処理できるわけだが,在籍を確認するのに手間取り2ヶ月後に「在籍を確認できたので,メールのテストが可能」との連絡があった.正直言って驚いた.おそらく2ヶ月間だれも申請しなかったのだろう.今後のこともあるので,生涯メールを使って担当係に「対応が遅すぎるのでは」とメール(提言メール?)をしたら,複数の関係者から侘びメールが届いた.学部の教務担当者が紙資料を辿るのに時間がかかったということであった.古文書ならともかく民間では考えられないスローモーションである.


資料

周辺大学のサービスの概要を以下に引用した.それぞれに特徴がある.

九州大学

生涯メールアドレスサービスは、卒業・修了生、在学生、現教職員、名誉教授を対象とした無料のメール転送サービスです。

生涯メールアドレスサービスをお申込みいただくと、ご自身が希望する九州大学の名を冠したシンプルな転送用メールアドレス である生涯メールアドレス「@kyudai.jp」が提供されます。生涯メールアドレスは、プロバイダーや所属組織が変更しても生涯変わらない転送用メールアドレスとしてご利用いただけ、サービスを利用すると、すでにお持ちの職場や自宅、携帯電話などのメールアドレスを転送先として最大3つ登録することができます。また、毎月2回、教育研究などの大学の最新の取り組みや、大学が主催するイベント、同窓会などの情報が、メールマガジン(Qdai-mail通信)として生涯メールアドレス宛てに配信されます。

熊本大学

熊本大学生涯メールサービスは、卒業生と大学の直接の情報交換や連携を目的として、卒業生に生涯メールアドレスを発行し、大学からの最新の情報提供、卒業生から大学への意見・提言、卒業生同士の交流等を図るもので、「メール転送サービス」、「メール送受信サービス」及び「メールマガジン」の各サービスを 提供するものです。

卒業生を対象とした生涯メールアドレスの取得は、申請があり次第在籍確認を行い随時発行しています。

大学からの情報提供については、「熊本大学メールマガジン」を発行しており、主に熊本大学のホームページにリンクしながら掲載しますが、卒業生からの情報提供、同窓会・同期会及びサークルOB会などの開催等の案内等も行っています。

なお、本メールマガジンは隔月(年6回)の発行を行っておりますので、掲載のご希望があれば、下記までご連絡ください。

鹿児島大学

2008年3月より、マイクロソフト社のWindows Live@Edu により、卒業後も継続して利用できる生涯メールアドレスを発行しています。

メールアドレスは、学術情報基盤センター利用者ID + @kadai.jp (例: k12345678@kadai.jp)

マイクロソフト社のWindows Live(Hotmail) と連携しており、Web でのメールの送受信、スケジュール管理、オンラインストレージ、グループ作成等の機能が生涯メールアドレスを使って利用可能です.鹿児島大学から卒業生へ向けてさまざまな情報がこのメールアドレスに配信されています.

(2012/5/9)