家電品リコール&不当表示(IT)

「避雷針=導雷針」の稿で,落雷からPCなどを保護する機器(電源とPCとの間に挟みこむアダプタ)がリコールの対象になっていることを紹介した.

早速,当該商品を販売している会社のホームページを見たが,トップにはリコールの記載はなく,「会社案内」などと列んで設置されている「重要なお知らせ」というボタンを押すとPDFファイルがダウンロードされて初めて内容を確認することができる.メーカーによっては,ホームページトップにリコール情報を配置し,一目でわかるように赤字で掲載しているところもある.たとえば,IOデータ社はトップページに赤文字でリコール社告を掲載してい る.パナソニックも石油暖房機のリコールをトップページに掲載している.

表題の件に関する最近の傾向としては,節電対策に便乗したLED電球拡販時の光量不当表示が目立っている(12社に措置命令).独立行政法人国民生活センターの「回収・無償修理等のお知らせ」に対応の詳細が掲載されている.該当する製造(販売)会社の「電球形LEDランプ【消費者庁の措置命令に基づく公示】」によると,実際の明るさは白熱電球の半分程度であることを指摘され,下記の内容の新聞広告を掲載させられている.

消費者庁の措置命令に基づく公示

前半省略

実際に は、「商品名?」の全光束(光源が全ての方向に放出する光束の総和。単位はルーメ ン。)は440ルーメン、「商品名??」の全光束は320ルーメン、「商品名???」の全光束は420ルーメン、「商品名????」の 全光束は380ルーメンであって、日本工業規格に定められた一般照明用白熱電球(以下「白熱電球」という。)の60W形の全光束810ルーメンを大きく下 回っており、本件4商品は、用途によっては白熱電球の60W形と同等の明るさを得ることができないものでありました。

当該表示は、本件4商品の内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものでした。

本件により、お客様をはじめ、関係各位に多大な迷惑をおかけしました事をお詫び申し上げるとともに、今後は再発防止のため、社内体制を一層強化して参りますので、何卒ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。

「用途によっては白熱電球の60ワット形と同等の明るさを得ることが出来ないものでありました」という文言があるが,常識的に言って理解できない.LED電球のすぐ傍で使用すれば目的を達するということであろうか.ほとんどの会社が,判で押したような定型の文章を用い,再発防止のため管理体制の強化を図るという文章で締めくくっている.

本来なら無償交換すべき事例である.商品のレビューには不当表示を示唆する意見も散見できたので,購入者の責任ということになるのかもしれない.

ところで,大震災前の昨年2月後半のテレビニュースで,「家電品リコール問題」が話題になっていた.

話題の中心はコロナ社製の石油ストーブのリコール問題であった.かなりの時間が経っているのに,ほとんど回収できていないとのことである.結論としては,販売店が購入者向けに広報するとか,メーカーがガソリンスタンドにチラシを貼るなどの努力をしていると言っていたが,不思議でならない. この種の家電品は購入する際に,保証書を発行する.販売店から宅配する通販も同じである.誰が何時購入したかはあちこちに記録が残っているはずである.

ある量販店の店主が,自分たちの方がユーザーの購入履歴情報を持っているので,メーカーよりユーザーに近い,そこに目をつけリコールの呼びかけに協力したいと言っていた.

商品によってはユーザ登録カードが入っていてメーカーに直接郵送することになっている.ウエブ登録させるところも増えてきた.昔は近くの個人商店から購入していたため,店主が購入履歴を把握し,機器の調子について常日頃声をかけてくれていたし,リコールがあれば向こうから対応してくれていた.最近は,ネット通販で購入する消費者も多くなった.その場合,ユーザーがユーザー登録しない限りメーカーは利用者を把握できない.また,量販店が独自の修理技術者を抱え,延長保証を含む保証(商品と一緒に購入)を実施するケースもあり,アフターサービスの在り方も変化してきた.

このような状況に加え,商品が正規の流通経路を経ずに消費者へ渡ることがあるため,メーカーはユーザー情報を把握しにくいわけである.販売店のユーザー情報は個人情報であるため簡単には共有することができず,ユーザー情報の分散状態が続いている.

メーカは出荷台数が何万台,何十万台に達したと誇らしげに発表するのに,その行く末は気にならないのだろうか.流通の変化に合ったユーザー管理が必要であることは明白である.東日本大震災によってあらゆる紙情報が消失してしまった.遠隔地でバックアップできるペーパーレス化が必要であることが叫ばれて久しいが,今回改めて認識させられたわけである.それにしてはあまりにも代償が大き過ぎたと言わざるをえない.

私自身,Apple社製ノートPCのバッテリー 交換を経験した.研究室員に指摘されて交換対象品に該当していることを知って交換手続きを行ったが,Appleショップからの連絡はなかった.Appleショップは,大学関係者に関しては,在職証明を含む購入手続き,商品の本人への手渡し等かなり徹底してユーザーの情報を把握しているのに,ユーザー登録が活用されることはなかった.新製品紹介メールはくることから判断すると,元々外資系であるのに日本では縦割り組織になってしまってリコールには活用されないようである.あるいは「寝た子を起こす必要はない」と思っているのであろうか.

このような状況を改善するには,高度情報化社会に対応した発想の転換が必要である.家電品にICタグを組み込み,リコール製品のユーザー把握やリサイクル段階まで含めたライフサイクル管理が計画されているという記事を読んだことがある.ネットワークが家庭の隅々まで張り巡らされた現在,すでに実現可能な段階にきているはずである.現状を知りたいものである.(2011//2/8--2012/8/21)

関連サイト

【経済産業省】製品安全ガイド

fuguai.com - 不具合ドットコム

回収・無償修理等のお知らせ - 独立行政法人国民生活センター

ネット普及率 総務省の統計資料,家庭や企業の情報通信サービスの利用状況を調べた「2009年通信利用動向調査」によると,インターネットの利用者数は,前年から317万人増えて9408万人になり,人口普及率は前年比2.7ポイント増の78.0%に達している.