診療報酬の不正受給

最近の医療関連ニュースの中で,もっとも怒りを覚えるもののひとつは,愛知県豊橋市の医療法人「豊岡会」が50億円の不正受給をしていたという事件である.

報道された時は呆れ果てるが利己主義的な大人の子どもじみた犯罪が次々に起こるので,その重大性がすぐに忘れられてしまう.マスコミによると,今回の不正請求額は50億円と過去最大級ということである.今回と書いたのは,豊岡会は昨年、25億円を超える介護報酬の不正受給が発覚し,愛知県などが患者の一時受け入れ停止などの処分をしているからである.

今回の不正発覚に関して,氷山の一角との見方が多い.1973年に設立されたというからその間の不正はかなりの額になるだろうと疑われても不思議ではない.長年不正を見抜けなかった行政側のチェック態勢も厳しく検証されるべきである.恐らく人手が足りないということに帰着するだろう.

豊岡会は看護師の数を水増しし、よりランクの高い診療報酬を受け取っていたと報道されている.請求が正しく行われているかどうかは請求書に添付された看護師の勤務表を確認することでチェックしているというが,医療機関との信頼関係を前提に成り立っている制度は通用しない“想定外”の社会になってしまったと言っても過言ではない.

勤務状態の把握方法も高度IT化社会にしては超アナログ的な対応である.出勤したとされた看護師,その他の医療関係者は「世直し」と思って勇気をもって内部告発すべきである.

一方,法人は不正受給額を返還すると言っている.万引きした人が警備員に捕まり品物を返したら許されるだろうか.客が品物を選びレジへ持って行き精算する方式は,逆に言えば万引きをする機会を提供しているようなものである.そのため万引きできないように監視カメラが用意され,品物には万引き防止タグが付けられ,警備員が配置されている.これは性悪説を前提にした措置である.

医療機関との信頼関係で成り立つ性善説を利用した犯罪であることを知らしめ,防止する対策が必要である.(2012/3/29)

追記

監督官庁の天下り組が不正請求の指南をしていたというようなことにならないことを祈りたい.