議事録がない?

議事録がない?

原発事故の原因とその対応についての検証が進んでいる最中,議事録が存在しないことが大きく報道されている.

本当だろうか.絶対にそんな筈はないと思う.議事録のもとになる音声録音データはあるはずである.

大学の会議なども全部録音されていた.その事実を初めて知ったときは違和感を覚えたが、陪席する事務官が議事録を作成することは彼等にとっては当たり前のルーチンワークであるようだ.世の中を実質的に支配している官僚がそんなドジをやるはずがない.持っていても出さないのだろう.

私が,大学事務方が会議を録音している事実を知ったのはちょっとした偶然からであった.当時,私は情報処理センターから離れた薬学部キャンパスへ光ケーブルを敷設する世話人をしていた.そのため,学内外の工事の詳細を教授会で説明する必要があった.情報処理技術といえばアナログ電話モデムあるいはFAXしか知らない人達,その中にはパソコン端末など必要ないと本気でまくし立てる教授がいる状況で,なるべく分かりやすく説明しても技術用語やインターネットの概念を理解してもらうことは難しかった.ルーター,TCP/IP,HUB,情報コンセント,ノード,パケット,ルーティング等の横文字用語は何回説明しても理解して貰えなかった.会議の度毎にいちいち説明していては捗らないので略語で説明していたら.会議後,事務係がやって来た.いろいろ補足説明している際に録音されている横文字IT用語が聴き取れないということから「録音」されている事実を知った.最近は録音に磁気テープを使うことはない.回転駆動の必要のないICメモリー記録方式へ変化したため非常に小型化され,録音されていることに気付くことはほとんどない.修士の院生が研究打ち合わせの際,録音していたこともあった.メモをとらない訳である.国立大学法人定年後,新設の私立大学へ異動した後も,講義の際に最前列の男子学生がICレコーダーで録音していた(他の教員とことなり有機化学をフロンティア軌道論を用いて教えていたため,聞きなれない用語が出てくることもあり,復習のためと言っていた).教授会はマイクの必要のない狭い部屋にも係わらず議長マイク,移動マイク等の音響機器が揃っていたが,拡声目的ではなく録音装置として準備されていた.ところで,かなり以前からデジカメや携帯電話にも録音機能が付いている.高集積度メモリーが極端に安価になったことが拍車をかけた.最近は2GBのメモリーで1151時間録音できるICレコーダーが三千円程度で入手できる.このような時代,「誰も録音していなかった」ことなど考えられない.ちなみに,小沢元代表の一連の裁判でも取り調べられた秘書は検事とのやりとりをこっそり録音していた.

今は「こっそり録音していた」と言えないのだろう. (2012/3/11)


追記

ICレコーダー(2GB)の場合,電池がもてば20時間以上の音声が記録可能である.音質によっては70時間録音できるものもある.

私の所有しているコンパクトデジタルカメラには動画撮影/ボイスレコード(音声記録)モードの切り替えがあり,ポケットに入れたまま録音することができる.ボイスレコードは最長連続180分の記録ができる(電池とメモリー容量に依存).

携帯電話ではツールの中に短時間の音声記録のためボイスレコーダーという機能がある.