薬学6年制_初国家試験

6年制課程に移行後,初の合格発表が行われた.

とりあえず新卒に限って国家試験の結果を調べてみた.

6年制課程の合格率

大学種別 入学者数 受験者数 合格者数 入学者数に対する合格率 受験者数に対する合格率

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国立 486 484 455 93.6 94.0

公立 220 198 190 86.4 96.0

私立 10614 7902 753 71.0 95.4

総数 11220 8584 8182 72.9 95.3

合格者は総数8641人である.6年制新卒は8584名,6年制以外の「その他」は1202名受験し合格率は38.2%であった.ちなみに4年制課程の最後の試験の合格者数は1万1300人(前年1万0487人)である.

規制緩和による薬学部新設ラッシュのもと,6年制課程がスタートした際,薬剤師大過剰時代の到来が危惧されたが,その心配はないようだ.入学者数に対する合格率をみると,それなりの出口規制がかかっているようである.私大の場合,大量の留年者,卒延者を出しているため,入学者の4人に一人は卒業できていないことになる.

6年制薬学教育の一期生が出た後,第三者評価が実施されることになっている.評価項目では,予備校化を防止するため,国家試験合格率は評価の対象には入っていないが,受験生や父兄に大学をアピールするには合格率しかないので,どこも国試対策に奔走したようである.

設置の際の審査では,真の大学教育が実施されるように卒業研究や卒論発表会等の実施が求められた.はたしてどのくらいの大学がそのための教育をやったかたいへん興味がある.4年制課程の時のような卒業研究の単位を国家試験対策講義で読み替えるようなことをしていたら6年制改革は失敗と言っても過言ではない.4年制課程に実務実習をプラスしただけのものでしかない.

国家試験の内容についても暗記に頼る方式ではなく,応用力,問題解決能力を問う方式に変わると聞かされていた.今回の問題がそれに応える内容であったかも興味がある.予備校化の弊害を克服した真の大学教育がなされたか否かは,卒業生の活躍にかかっている.


追記

共用試験 (CBT, OSCE) の合格率は,かなり高いので,留年は学部試験によるもの,すなわち大学進学時にかなり低偏差値の学生を入学させているためと考えられる.

大学別の合格率をみると,傾向は4年制課程の時の国試結果と類似している.大学教育を重視する大学は合格率が低い事実を考慮すると国家試験自体もさほど変化がないと言えそうである.

不合格者,卒延者の数から判断し当分予備校の役割は続きそうだ.


薬事日報の記事

厚生労働省は3月30日、薬学6年制課程の修了者を対象とした初の薬剤師国家試験の結果を発表した。合格は総数8641人で合格率は88・31%だった。6年制に限ると8182人が合格し、合格率は95・33%となっており、近年の新卒が80%台後半から90%台前半で推移していることを踏まえると、比較的高い水準と言えそうだ。厚労省は「医療現場で薬学教育の成果を存分に発揮されることに期待したい」としている。

国試には1万0644人が出願したが、受験したのは総数9785人で、このうち8583人が6年制だった。

6年制の試験結果を男女別に見ると、男は3432人が受験して3280人が合格、女は5151人が受験して4902人が合格した。合格率は男95・57%、女95・17%となっている。

旧4年制卒を含むその他は、男767人が受験して283人が合格、女435人が受験して176人が合格し、合格率は男36・90%、女40・46%となっている。

なお、今回は不適切問題2問、補正対象問題1問だった。

(2012/4/5)


資料

薬科大学(薬学部)の数と入学定員・入学者数の推移

第97回薬剤師国家試験の合格発表について

真の第97回薬剤師国家試験合格率(各私立大学についての解析が掲載されている)


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2012国家試験大学別.pdf