ISO 19117:2012 Geographic information/Geomatics — Portrayal
現行
履歴
ISO 19117:2005 廃止
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19117:ed-2:v1:en
この国際規格では、描画データ、特に記号と描画関数の概念スキーマを規定する。描画関数は、地図やその他の表示媒体上に地物を描写するために、地物を記号に関連付ける。このスキーマには、地物、描画関数及び記号の構造と相互関係を指定する共通の概念フレームワークを示すクラス、属性、関連付け及び操作が含まれる。ここではデータの内容とそのデータの描画法を分離し、データ集合から独立した方法でデータを描画できるようにする。このフレームワークは、既存の描画実装法の中にある概念から派生したものであると共に、今後行われる実装法検討で使用するための概念規格(たとえば、OGC Symbology EncodingやStyled Layer Descriptor Profile of WMS)を示す。
この国際規格では、描画システムの開発者のために抽象モデルを示し、ユーザー コミュニティにとって意味のある方法で地理データを描画する柔軟性を備えたシステムを実装できるようにする。
この改訂版における主な変更点は、描画規則の概念をより一般的な描画関数に拡張し、記号の定義(パラメータ付きの記号を含む)を含めるとともに、描画関数と記号の両方を描画カタログに含めて、コア描画スキーマ及び専門的なケースの拡張関数を定義することである。
この改訂は、大部分はISO 19117:2005に示された概念の拡張であるが、描画仕様 (操作ではなく記号として)、描画カタログ (記号も含む)、およびルールベースの描画 (複数のルールが許可される) の概念は変更されている。
この国際規格は、記号を記述するための概念スキーマ、地理空間中の地物を記号に写像する描画関数、並びに描画カタログ中の描画関数及び記号の集まりを記述するための概念スキーマを示す。この概念スキーマは、描画システムの設計に使用できる。これにより、地物データを描画データから分離し、データ集合に依存しない方法でデータを描画できるようになる。
この国際規格は、次の事項には適用されない:
— 標準記号集 (例: 国際海図 1 — IHO);
— 記号作画の標準 (例: Scalable Vector Graphics [SVG]);
— 描画サービス (例: Web Map Service);
— 非視覚的描画関数 (例: 聴覚記号論);
— 動的レンダリング (例: オンザフライでの潮汐の等高線描画);
— 描画の仕上げ規則 (例: 総描、オーバープリント(スミノセ)、転位規則);
— 3D 記号化 (例: シミュレーション モデリング)。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO/TS 19103:2005, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19107:2003, Geographic information — Spatial schema
ISO 19109:2005, Geographic information — Rules for application schema
ISO 19110:2005, Geographic information — Methodology for feature cataloguing
ISO 19111:2007, Geographic information — Spatial referencing by coordinates
ISO 19115:2003, Geographic information — Metadata
ISO/TS 19139:2007, Geographic information — Metadata — XML schema implementation
ISO/IEC 19501:2005, Information technology — Open Distributed Processing — Unified Modeling Language (UML) Version 1.4.2
この規格では、次に示す用語と定義が適用される。ISOとIECは、規格化に使用する用語データベースを次のアドレスにおいて維持・公開している。
— IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
— ISO オンライン閲覧プラットフォーム: http://www.iso.org/obp
4.1
annotation
注記
説明を明確にするために図解に付けられるマーク
注記1:注記の例として数字、文字、記号 (4.31)、サインがあげられる。
4.2
class
クラス
同じ属性、操作、メソッド、関係及び意味をもつオブジェクトの集合の記述
注記1:クラスは、自分の外に対し提供する操作の集合を規定するインタフェースの集合を使うこともある。インタフェースの項を見よ。
[ISO/TS 19103:2005 4.27を引用]
備考1)この定義はUML 1.4.2, JC.34にあるが、ISO 19103:2015では以下の文が省略されている。"A class may use a set of interfaces to specify collections of operations it provides to its environment. See: interface."「クラスは、自分の外に対し提供する操作の集合を規定するインタフェースの集合を使うこともある。インタフェースの項を見よ」。この規格では、注記として、この文が付加されている。
4.3
complex symbol
複合記号
異なる種類の異なる記号で構成される記号 (4.31)
例:点 (4.19) 記号が一定の間隔で繰り返される破線記号。
4.4
compound symbol
複合記号
同じ型の複数の記号で構成される記号(4.31)
例:二つの点図形で構成される点(4.19)記号。
4.5
conditional feature portrayal function
条件付き地物描画関数
地物の特性又は属性に対して評価された何らかの条件に基づいて、地物(4.8)を記号(4.31)に写像する関数(4.11)
[+]
4.6
curve
曲線
直線の連続な像を表現する一次元の幾何プリミティブ(4.13)
[ISO 19107:2003 4.23を引用][翻訳はJIS X 7107:2005を引用]
4.7
dataset
データ集合
他と識別可能なデータの集まり
注記1:空間範囲又は地物型のような制約によって区切るとしても、データ集合は、より大きいデータ集合の中に位置する、より小さいデータのグループであってもよい。理論的には,データ集合は、より大きなデータ集合に含まれる一つの地物又は地物属性のように小さくてもよい。ハードコピーの地図又は海図は、データ集合と考えてよい。
[ISO 19115:2003 4.2を引用][翻訳はJIS X 7115:2005 4.2を引用]
4.8
feature
地物
実世界の現象の抽象概念
注記1:地物は型として、又はインスタンス(4.14)として現れる。型又はインスタンスの一方だけを意味するときには、地物型又は地物インスタンスという用語を使うのが望ましい。
[ISO 19101:2002 4.11を引用]
4.9
feature attribute
地物属性
地物の特徴
例1:「色」という名前の地物属性は「テキスト」をデータ型とする「緑」という属性値をもつことができる。
例2:「長さ」という名前の地物属性は、「実数」をデータ型とする「82.4」という属性値をもつことができる。
注記1:地物属性は名前、データ型及び地物属性に関連する値の定義域をもつ。地物インスタンス(4.14)の地物属性にも、値の定義域から与えられた属性値がある。
注記2:地物カタログの中では、地物属性の定義域は示されるが、地物インスタンスの属性値が示されることはない。
[ISO 19101:2002 4.12を参照]
備考1)ISO 19101:2002 4.12には注記3があるが、UMLにおける「属性」の説明なので、ここでは省略されている。
4.10
feature portrayal function
地物描画関数
地物(4.8)を記号(4.31)に写像する関数(4.11)
4.11
function
関数
ある領域(関数の "ソースドメイン" 又は "定義域")の各要素を別の領域("ターゲットドメイン"、"双対領域"又は"値域")の一意の要素に関連付ける規則
[ISO 19107:2003 4.41を引用][JIS X 7107:2005 4.41を引用]
4.12
geographic information
地理情報
地球に関係する場所に暗示的又は明示的に関連づく現象に関する情報
[ISO 19101:2002 4.16を引用]
4.13
geometric primitive
幾何プリミティブ
単一の連結で均質な空間の要素を表す幾何オブジェクト
[ISO 19107:2003 4.48を参照][翻訳はJIS X 7107:2005 4.48を参照]
4.14
instance
インスタンス
クラス(4.2)を実現するオブジェクト
[ISO 19107:2003 4.53 を引用][翻訳はJIS X 7107:2005 4.53を参照]
4.15
layer
レイヤー
要求を受けてサーバーから地図として提供される地理情報の基本単位(4.12)
[ISO 19128:2005 4.6を引用]
4.16
metadata
メタデータ
データに関するデータ
[ISO 19115:2003 4.5を引用][翻訳はJIS X 7115:2005 4.5を引用]
4.17
parameterized feature portrayal function
パラメータ付き地物描画関数
地物(4.8)をパラメータ付き記号(4.18)に写像する関数(4.11)
注記1:パラメータ付き地物描画関数(4.10)は、地物インスタンス(4.14)から関連する属性値を渡して、パラメータ付き記号(4.31)への入力として使用する。
4.18
parameterized symbol
パラメータ付き記号
動的パラメータを持つ記号(4.31)
注記1:動的パラメータは、描画される各地物(4.8)インスタンス(4.14)の属性値に写像される。
4.19
point
点
位置を表現する零次元の幾何プリミティブ(4.13)
[ISO 19107:2003 4.61を引用][翻訳はJIS X 7107:2005を引用]
4.20
portrayal
描画、描画法
人間に情報を提示すること
注記1)この国際規格の適用範囲では、描画は地理情報の描画に限定される。
備考1)この国際標準を見る限り、主として二次元の地図の描画が適用範囲になっていることもあり、"portrayal"は「描画」又は「描画法」と訳している。今後、適用範囲が動画や拡張現実などに拡張された場合は「描写」とするなどの改訂を検討すべきであろう。
4.21
portrayal catalogue
描画カタログ
地物(4.8)カタログのために定義された、描画法(4.20)の集まり
注記1:描画カタログの内容には、描画関数(4.23)、記号(4.31)、および描画環境(4.22)(オプション)が含まれる。
4.22
portrayal context
描画環境
地理データ集合(4.7)に外在する要因によって課せられ、そのデータ集合の描画(4.20)に影響を与える状況
例:描画環境に寄与する要因には、提案された表示又は地図の縮尺、表示条件(昼/夜/夕暮れ)、表示方向の要件(北が必ずしも画面またはページの上部にあるとは限らない)などが含まれる。
注記1:描画環境は、描画関数(4.23)の選択と記号(4.31)の作成に影響を与える可能性がある。
4.23
portrayal function
描画関数
地物(4.8)を記号(4.31)に写像する関数(4.11)
注記1:描画(4.20)関数には、地物の特性に依存しないパラメータ及びその他の計算も含まれる可能性がある。
4.24
portrayal function set
描画関数集合
地物(4.8)カタログ記号集合(4.35)に写像する関数(4.11)
4.25
portrayal rule
描画規則
宣言型言語で表現される特定の種類の描画関数(4.23)
注記1:宣言型言語はルールベースであり、決定文と分岐文を含む。
備考1)宣言型言語とは「何を」実現したいかを記述するプログラミング言語である、例えばSQLは関係データベースへの問い合わせのための宣言的要素を持つし、XSLTはXML文書の変換のための宣言型言語である。
4.26
portrayal service
描画サービス
地物(4.8)を描画するために使用されるジェネリックインタフェース
備考1)ジェネリックインタフェース(generic interface)とは、インタフェースに対して型パラメータを導入して、複数の型に対応することを可能にする仕組みである。例えば地物インスタンスを描画する際に、記号の型のパラメータを与えると、それに対応した描画を行うパラメータ付き記号を返してくれるサービスが実装可能になるであろう。
4.27
render
レンダー
デジタルグラフィックデータを視覚的な形式に変換すること
例:ビデオディスプレイ上に画像を生成すること
4.28
simple symbol
単純記号
合成記号でもパラメータ付き記号でもない記号(4.31)
4.29
spatial attribute
空間属性
座標、数学関数(4.11)及び/又は境界位相関係によって地物(4.8)の空間表現を記述する地物属性(4.9)。
4.30
surface
曲面
局所的に平面領域の連続な像を表す二次元の幾何プリミティブ(4.13)
[ISO 19107:2003 4.75を参照][翻訳はJIS X 7107:2005 4.75を参照]
備考1)ISO 19107:2003では、次の注記が記されている。
曲面の境界は、曲面の限界の輪郭を描く向きを持つ閉曲線である。球面又はn次元トーラス(n次元“把”をもつ位相球面)と同形である曲面は、境界をもたない。このような曲面を輪体と呼ぶ。
4.31
symbol
記号
描画(4.20)プリミティブ。本質的には図形的、聴覚的、触覚的又はこれらの組み合わせになりうる。
4.32
symbol component
記号構成要素
合成記号(4.4)の部品として使われる記号(4.31)
4.33
symbol definition
記号定義
記号(4.31)の技術的な記述
4.34
symbol reference
記号参照
地物型を特定の記号(4.31)に関連付ける地物描画関数(4.10)内のポインター
4.35
symbol set
記号集合
記号(4.31)の集まり
注記1:記号集合は通常、関心をもつコミュニティが、対象となる情報を描画するために設計される。
参考文献
[1] ISO 19101:2002, Geographic information — Reference model
[2] ISO 19128:2005, Geographic information — Web map server interface
[3] ISO 19133: Geographic information — Location-based services — Tracking and navigation
[4] ISO/IEC 10746-3:2009, Information technology — Open Distributed Processing — Reference model: Architecture
[5] Gill, A.: Applied Algebra for the Computer Sciences. Series in Automatic Computation, Prentice-Hall, Inc., Englewood Cliffs, New Jersey, 1976
[6] ISO 19156, Geographic information — Observations and measurements
(2024-09-06)
(2025-01-13) 4.8 修正