ISO 19155:2012 Geographic information — Place Identifier (PI) architecture
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対応OGC標準:なし
対応JIS規格:JIS X 7155:2011 地理情報―場所識別子(PI)アーキテクチャ
備考1)JIS X 7155は、この規格の元になったJIS規格であるが、ISO規格にする際に内容が変更されたこともあり、対応規格ではない。
備考2)この規格のタイトルは「場所識別子(PI)アーキテクチャ」としているがこの場所は"location"ではなく、"place"である。したがってPlace識別子(PI)と言わないと混同してしまう可能性があるが、JIS X 7155:2011に倣い、この文書では「PI」とする。識別子という用語と共に使用するときは「場所識別子」という。識別子ではない一般的な表現を行うときは「所」と表記する。
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19155:ed-1:v1:en
情報技術の急速な発展により、現実世界と仮想世界の境界は曖昧になり、容易に切り離すことは不可能になっている。人間は両方の世界に存在する所(ところ)を参照し、容易に区別することができる。しかし、コンピュータがこれらの所を明確に区別するには、両者の間に整合性のある接続関係の集まりがあることが求められる。
地理学の分野では、空間は通常、地球の表面を指す。しかし、他の分野では、空間は異なるパラダイムを指すことがある。建築学では、空間は部屋や建物の範囲を指すことがある。数学では、空間は構造を持つ集合として定義される。ワールド・ワイド・ウェブの文脈では、空間はウェブページを識別するURL/URIの集まりによって定義される。
この国際規格では、「空間」は、位置又は場所によって要素が識別される、構造を持つ集合である。
現在、ISO/TC 211の対象領域には、座標又は地理識別子を用いた正確な測位及び位置特定に関する標準が存在する。しかし、PI(place identifier)は位置(position)及び場所(location)の両者より広い概念である。「PI」は、座標を用いて特定される場合は「位置」と呼ばれる。同様に、「PI」は地理識別子を用いて特定される場合は「場所」と呼ばれる。しかし、ISO/TC 211で定義されている既存の標準は、Webサイトなどの仮想的な「PI」を表現するメカニズムや、他の種類の識別子を参照するために使用できる「共通基盤」として機能する構造を提供していない。
この国際規格では、「所」は、任意の空間における識別可能な部分として定義される。これには、現実世界だけでなく仮想世界に存在するところも含まれる。「所」は、座標による「位置」、地理識別子による「場所」、又はURIのような「仮想世界識別子」のいずれかを使用して識別される。
この国際規格では、「所」の識別子を場所識別子(PI)と呼ぶ。単一の「所」は、複数の別々の場所識別子を用いて識別される場合がある。これらの関係を明確にしたものが図1である。
図1 PI(場所識別子)、位置、場所及びURIの関係
PIの記述は情報検索に用いる。実際には、これらの識別子は多くの場合同じ所を指している。現状では、これらの関係を機械が正しく区別することが困難であり、情報の発見と検索を妨げている。この国際規格で定義される概念アーキテクチャ及び参照モデルは、これらの問題を解決するためのメカニズムを提示する。
このアーキテクチャが実装されると、標準化された方法としてPIを使用して、「所」の記述にアクセスし、共有できるようになる。
参照モデルでは、「所」の記述はPIを用いて定義される。PIは、参照系(RS)、値、及びその値の有効期間で構成される。
値の内部形式及び内容は、各コミュニティ又は分野によって決定される。値の内容は、本国際規格によるいかなる標準化や統一の対象にもならない。RSは各コミュニティによって定義され、複数のコミュニティ間で一意である必要がある。したがって、場所識別子は各RS内で一意である。ただし、場所識別子の値が、複数のコミュニティ間で類似している場合や、同一である場合もある。この分散コンセプトにより、各コミュニティは独自の場所識別子を維持できる。適切に形成された場所識別子は、コミュニティ間で共有できる。
この国際規格で定義されたアーキテクチャの主要なアイデアは、世界的に一意の識別子の種類の枠組みを指定するのではなく、難しい変換やコミュニティ間の調整を必要とせずに、オリジナルな所の記述を簡単に維持できるようにすることである。
この国際規格では、地理マーク付け言語(GML)(ISO 19136:2007)に基づく符号化方式の使用を必須として定義する。さらに参考として、いくつかの代替符号化方式が示される。選択した符号化方式に応じて、その符号化方式の要件に基づいて、グローバルに一意の場所識別子が作成される場合がある。
「位置が特定された地物」を場所識別子に変換する方法は、本国際規格の範囲外である。PIアーキテクチャ及びその他の空間データ基盤(SDI)との直接的な関係は記述しないが、PIアーキテクチャの実装はSDIの一部とみなすことができる。場所識別子の保存には、レジストリやデータベースなど、様々な構造が利用可能である。場所識別子の柔軟な構造により、一般的な地理情報システムに保存されているデータを容易に場所識別子として登録することが可能になるが、これらの手順の設計と実装は本国際規格の範囲外である。
この国際規格は、場所識別子の符号化方法を含む参照モデルを定義するアーキテクチャを規定する。この国際規格における「所(place)」の概念には、現実世界だけでなく仮想世界における「場所」も含まれる。これらの「所」は、座標識別子、地理識別子、又はURIなどの仮想世界識別子を用いて識別される。この国際規格では、所の識別子を場所識別子(PI)と呼ぶ。
参照モデルは、複数の場所識別子を同じ所に一致させるメカニズムを定義する。さらに、データ構造及び一連のサービスインターフェースも定義する。
この国際規格は、座標及び、地理又は仮想世界の識別子を使用して「所」の記述を表現するために、特定の分野間で共通のアーキテクチャを必要とする位置情報サービス、危機管理サービス、及びその他の応用分野に適用される。
この国際規格は、特定の「所」の記述を作成することを目的とするものではなく、住所コード体系など、定義された場所の一意の標準化された説明を定義することも目的とするものでもない。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO/TS 19103:2005, Geographic Information — Conceptual schema language
ISO 19111:2007, Geographic information — Spatial referencing by coordinates
ISO 19112:2003, Geographic information — Spatial referencing by geographic identifiers
ISO 19136:2007, Geographic information — Geography Markup Language
この規格の目的に応じて、次の用語及び定義が適用される。
4.1
client
クライアント
サーバーからの操作を起動させることができるソフトウェア部品
[ISO 19128:2005 4.1を引用]
4.2
coordinate
座標
点の位置を指し示す数の列のうちの一つ
注記1:空間座標参照系 (4.4) では、座標を示す数は単位によって修飾される。
[ISO 19111:2007 4.5を参照]
備考1)ISO 19111:2019 3.16の備考を参照のこと。
4.3
coordinate operation
座標演算
一対一の関係に基づいて、元の座標参照系 (4.4) の座標をターゲットとなる座標参照系の座標 (4.2) に変更する処理。
注記1:これは座標変換及び座標換算の上位型である。
[ISO 19111:2007 4.7を引用]
備考1)ISO 19111:2019 3.1.8では異なる定義が与えられている。
4.4
coordinate reference system
座標参照系
原子によってオブジェクトに関連付けられた座標系
注記1:測地及び鉛直原子にとっては、オブジェクトは地球である。
[ISO 19111:2007 4.8を引用]
備考1)ISO 19111:2019 3.1.9では異なる注記が与えられている。
4.5
gazetteer
地名辞典
位置に関する何らかの情報を含む地物のクラスのインスタンスの要覧。
注記1:位置の情報は,必ずしも座標である必要はなく,記述的なものでもよい。
[ISO 19112:2003 4.2を引用][翻訳はJIS X 7112:2005 4.2を引用]
備考1)ISO 19111:2019 3.1.1では異なる定義及び注記が与えられている。
4.6
geographic identifier
地理識別子
場所の識別のための、ラベル又はコードの形式による空間参照
例:"日本"はラベル(国名)の例である。"102-0083"はコード(郵便番号)の例である。
[ISO 19112:2003 4.3を引用][翻訳はJIS X 7112:2005 4.3を参照]
4.7
interface
インタフェース
実体の振る舞いを特徴付ける、名前の付いた操作の集まり
[ISO 19119:2005 4.2を引用]
4.8
place
所、場所
任意の空間における識別可能な部分
備考1)所は「ところ」と読む。
4.9
Place Identifier
PI
場所識別子
PI
所(4.8)を識別するための参照情報
4.10
Place Identifier application
PI application
場所識別子応用システム
PI 応用システム
最終ユーザ (4.21) 又はその他の応用システムに対する、場所識別子 (4.9) を使ったサービス (4.17) を提供する応用システム
備考1)"PI application" は略語であるが、ここでは"PI応用システム"を、翻訳された略語とした。
4.11
Place Identifier matching
PI matching
場所識別子マッチング
PIマッチング
場所識別子(4.9)が所(4.8)を指定する場合に、同じ所を識別する別の種類の場所識別子と対応づけること
注記1:ソース場所識別子(PI)は、複数のターゲット場所識別子とマッチングすることができる。
注記2:場所識別子マッチング(4.11)は、座標(4.2)、地理識別子(4.6)、及びURIなどの仮想世界における識別子間で行うことができる。
備考1)"PI matching" が略語であるが、ここでは"PIマッチング"を、翻訳された略語とした。
4.12
Place Identifier platform
PI platform
場所識別子プラットフォーム
PIプラットフォーム
PIマッチングに使用される、サービス群(4.17)インタフェース(4.7)及びデータ構造(4.11)
備考1)"PI platform" が略語であるが、ここでは"PIプラットフォーム"を、翻訳された略語とした。
4.13
registration
登録
項目に永続的、一意的、及び明確な識別子を割り当てこと
[ISO 19135:2005 4.1.12を引用]
4.14
request
要求
クライアント(4.1)によって、操作を起動させること
[ISO 19128:2005 4.10を引用]
4.15
response
応答
サーバー(4.16)からクライアント(4.1)に返される操作の結果
[ISO 19128:2005 4.11を引用]
4.16
server
サーバー
サービスをする特定のインスタンス
[ISO 19128:2005 4.12を引用]
4.17
service
サービス
インタフェース (4.7) を通じて、実体によって提供される機能の個別の部分
[ISO 19119:2005 4.1を引用]
4.18
service metadata
サービスメタデータ
サーバー (4.16) で利用可能な操作及び地理情報を記述するメタデータ
[ISO 19128:2005 4.14を引用]
4.19
spatial reference
空間参照
実世界における位置の記述
注記1:これは、ラベル、コード又は座標(4.2)組の形態をとってもよい。
[ISO 19111:2007 4.43を引用][翻訳はJIS X 7111:2014 4.43を引用]
4.20
spatial reference system
system for identifying position in the real world
[SOURCE:ISO 19112:2003, 4.6]
空間参照系
実世界における位置を識別するための体系
[ISO 19112:2003 4.6を引用][翻訳はJIS X 7112:2005 4.6を引用]
備考1)ISO 19112:2019にはこの用語の定義は示されていない。
4.21
user
使用者、ユーザー
システムへのサービス要求を開始する能動オブジェクト
注記1:ユーザーは通常、システムの機能にアクセスする人々の代理(proxies)として機能するオブジェクトである。
注記2:これらのオブジェクトはPI応用システム (4.10) 又はPIマッチング (4.11) 表及び参照系の生成システムとすることができる。
備考1)注記2は、ISO 19132:2007 4.58にはない。
[1] ISO 19108:2002, Geographic information — Temporal schema
[2] ISO 19109:2005, Geographic information — Rules for application schema
[3] ISO 19119:2005, Geographic information — Services
[4] ISO 19125-1:2004, Geographic information — Simple feature access — Part 1: Common architecture
[5] ISO 19128:2005, Geographic information — Web map server interface
[6] ISO 19132:2007, Geographic information — Location-based services — Reference model
[7] ISO 19135:2005, Geographic information — Procedures for item registration
[8] ISO/IEC 19501:2005, Information technology — Open Distributed Processing — Unified Modeling Language (UML) Version 1.4.2
[9] The Concise Oxford Dictionary of Current English. Thompson, D. (Editor), ISBN 0198613202, Oxford University Press, USA, 9 ed. 1995
[10] Internet Engineering Task Force (IETF). 2005, ‘tag’ URI Scheme RFC 4151, The Internet Society, Washington D.C. Available at http://www.ietf.org/rfc/rfc4151.txt
(2025-04-17)