ISO/TS 19166:2021 BIM to GIS conceptual mapping (B2GM)
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履歴
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:ts:19166:ed-1:v1:en
建築情報モデリング(BIM)には、ドア、壁、窓、MEP(機械設備、電気設備、配管設備)などの建物要素に関する豊富な情報が含まれている。さらに、BIMモデルには、建築物以外の地物に関する情報も含まれており、これらはGISと関連している。GISの観点から見ると、BIM情報をGISアプリケーションで活用することには多くの利点がある。例えば、以下の点が挙げられる。
a) 緊急管理(経路案内、火災時の避難経路案内など)のような屋内サービスの実装。
b) シームレスなナビゲーションのような屋内外連携サービス。
c) GISに基づく、BIM関連オブジェクトを考慮した、効果的な施設・エネルギー・環境管理。
BIMモデルに含まれる豊富な情報を収集し、GISで活用する試みはいくつか行われてきたが、二つのモデリング世界の間で情報要素をマッピングするための確立された方法は存在しない。適切なマッピング手法が明らかに必要である。しかし、情報マッピングを実装する前に、BIMからGISへ、適切な情報要素を連結するためのマッピングメカニズムを明確に定義する必要がある。さらに、これらのマッピングメカニズムが連携して機能するためには、BIMとGIS間の公開標準に基づくマッピングプロセスの概念枠組みを確立する必要がある。
この規格では、BIM から GIS への情報マッピング及び必要なマッピングメカニズムの概念枠組みを示す。
それぞれのマッピングメカニズムの簡単な説明を次に示す。
— BIMからGISへの観点定義(B2G PD):都市施設管理(UFM)などの特定の要件に応じる観点情報表現を利用可能にする。「観点(perspective)」はユースケースによって異なる。例えば、都市施設を管理するには、BIMモデルを含む様々なデータソースから必要なデータを収集し、ユーザー固有の観点で表現できるように変換する必要がある。PDでは、必要なデータを抽出し、様々なデータソースから情報を変換するためのデータビューを定義する。
— BIMからGISへの要素マッピング(B2G EM):BIMモデルからGISモデルへの要素マッピングを利用可能にする。BIMモデルとGISモデルのスキーマは異なるため、B2G EMでは、BIMモデルからGISモデル要素への変換方法を指定するマッピングルールが求められる。
— BIMからGISへのLODマッピング(B2G LM):BIMモデルからGISモデルへのLODマッピングを利用可能にする。GISにおけるLOD(詳細度)とは、可視化などの特定のユースケースを満たすために、モデルに含める/除外するデータを意図的に選択することである。対象となるGISモデルに必要なLODに関連する形状情報やその他の情報は、BIMモデルから抽出/問い合わせ(query)する必要があります。これは、LODマッピングの規則集合によって定義できる。
この規格は、都市施設管理業務などの情報検索サービスに適用可能である。GISにおけるBIMオブジェクトの可視化や、現実世界又は仮想世界におけるBIM及びGISオブジェクトの関係性に基づいた問い合わせ処理を必要とするさまざまなアプリケーションサービスは、この文書で定義されたメカニズムを用いて、両システム間で必要な情報要素をマッピングすることができる。この規格では、BIMからGISへの情報要素のマッピング全般について説明しているが、本規格の主な目的は、可視化のためにBIMモデルをGISモデルにマッピングすることである。
この規格で定義される概念マッピングのメカニズムは、地理マーク付け言語 (GML) (ISO 19136-1) やインダストリー・ファウンデーション・クラス (IFC) (ISO 16739-1) といった既存の国際標準規格を採用している。Open Geospatial Consortium (OGC) の土地・インフラ概念モデル標準 (LandInfra) (OGC 15-111r1) は、道路などのインフラの情報モデルを定義している。LandInfra は BIM コミュニティと GIS コミュニティの間で共通の概念モデルに基づいて設計されているため、LandInfra BIM モデルから LandInfra GIS モデルへの情報の転送は比較的容易である。したがって、この文書では、LandInfra に基づかない BIM モデルからのマッピングに焦点を当てる。
この規格では、特定のユーザー要件に基づいて必要な情報にアクセスするために、情報要素を建築物情報モデリング (BIM) から地理情報システム (GIS) にマッピングするための概念枠組み及びメカニズムを提示する。
BIM情報をGISにマッピングするための概念枠組みは、以下の三つのマッピングメカニズムによって定義する。
— BIMからGISへの観点定義(B2G PD)
— BIMからGISへの要素マッピング(B2G EM)
— BIMからGISへのLODマッピング(B2G LM)
本規格では、BIMモデル及びGISモデル間の物理スキーマの統合又はマッピングについては説明しない。これは、2つの異種モデル間の物理スキーマの統合又はマッピングは非常に複雑であり、様々な曖昧性の問題を引き起こす可能性があるためである。BIMとGIS間で統一された情報モデルを開発することは望ましい目標であるが、本規格の適用範囲外である。
この規格の適用範囲は以下のとおりである。
— BIMからGISへの概念マッピング要件の定義。
— BIMからGISへの概念マッピング枠組みとコンポーネントの定義。
— あるスキーマから別のスキーマへのエクスポートのためのマッピングの定義。
— definition of coordinate system mapping between BIM and GIS.
以下の概念は適用範囲外である。
— 特定のマッピングアプリケーションの要件及びメカニズムの定義。
— BIMとGIS間の双方向マッピング方法。
— BIMとGIS間の物理スキーママッピングの定義。
— BIMとGIS間の座標系マッピングの定義。
注: GIS に基づいて 、BIM モデルの位置と方向を提供するための地理参照に関連する要件が含まれるケースでは、ISO 19111 や、地理参照 BIM に関する buildingSMART の情報配信マニュアル (IDM) など、他の標準が存在する。
— BIMとGIS間の関係マッピングの定義。
— 応用スキーマの実装。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO 19103, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19107, Geographic information — Spatial schema
ISO 19109, Geographic information — Rules for application schema
この規格の目的に応じて、次の用語及び定義が適用される。
ISOとIECは、規格化に使用する用語データベースを次のアドレスにおいて維持・公開している。
— IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
— ISO オンライン閲覧プラットフォーム: http://www.iso.org/obp
3.1
application
応用、応用システム
利用者の要求に応えるために行われるデータの操作及び処理
[ISO 19101‑1:2014 4.1.1を引用][翻訳はJIS X 7109:2009 4.1を引用]
3.2
application schema
応用スキーマ
一つ以上の応用システム(3.1)によって要求されるデータのための概念スキーマ
[ISO 19101‑1:2014 4.1.2を引用][翻訳はJIS X 7109:2009 4.2を引用]
3.3
class
クラス
<UML> 同じ属性、操作、メソッド、関係及び意味をもつオブジェクト(3.9)の集合の記述
[ISO 19103:2015 4.7を参照 — <UML>分野タグを追加]
3.4
complex feature
複合地物
他の諸々の地物 (3.6) から構成される地物
[ISO 19109:2015 4.3を引用][翻訳はJIS X 7109:2009 4.3を引用]
3.5
element
要素
<BIM> BIM又はGISモデル(3.8)中の幾何、特性、メソッド、関係を含む構成部品。
例:BIMでは、敷地、建物、壁、ドア、部屋などが要素の例だが、GISでは、敷地、建物、壁、道路などのインフラストラクチャに伴う部屋、橋などが要素の例になる。
3.6
feature
地物
実世界の現象の抽象概念
注記1:さまざまな地物で構成される地物は「複合地物」(3.4)と呼ばれる。
[ISO 19101-1:2014 4.1.11を参照 —注記1は変更した][翻訳はJIS X 7109:2009 4.8を参照]
3.7
level of detail
LOD
詳細度
特定の基準に基づいて様々な忠実度で示す、オブジェクト(3.9)を代替的表現
注記 1: CityGML の詳細度の概念は、市場及び科学コミュニティで広く受け入れられている。「LODX モデル」 (X = {0, 1, 2, 3, 4}) という用語は、既存の都市モデルの複雑性 (3.8) と特定の応用システムへの適合性 (3.1) に対処するために頻繁に使用される。建物は、屋根又はフットプリントのレベルで、垂直でないポリゴンで表現される。LOD1 では、建物などの立体オブジェクトは、垂直壁と水平の「屋根」を持つ角柱ブロックモデルとして一般化された方法でモデル化される。LOD2 では、建物の (プロトタイプの) 屋根の形状が表現されるほか、主題別の地面、壁、屋根面に加えて、バルコニーや屋根窓などの追加構造も表現される。LOD3 は、オブジェクトの最も外側の形状に関する最も詳細なレベルである。建物の場合、開口部が主題別オブジェクトとして追加される。 LOD4 では、最も正確な外部表現に内部構造 (部屋など) が追加される。これは LOD4 と呼ばれるが、LOD3 の外部表面とほぼ同じである。
注記2:GISにおけるLOD(詳細度)という用語とBIMにおけるLOD(開発度)という用語を区別することが大事である。GISにおけるLODとは、視覚化を含む特定のユースケースを満たすためにモデルに含める/除外するデータを意図的に選択することである。BIMにおけるLODとは、モデル化された現実世界のオブジェクトの計画プロセスの成熟度を指す。
[ISO/IEC 18023-1:2006 3.1.8を参照 —注記1及び2を変更した]
3.8
model
モデル
実世界の幾つかの側面の抽象概念
[ISO 19109:2015 4.15を引用][ 翻訳はJIS X 7109:2009 4.14を引用]
3.9
object
オブジェクト
<UML>適切に定義された境界と識別性をもつ実体で、状態と振る舞いをカプセル化するもの
[ISO 19103:2015 4.25を参照 — <UML>分野タグを追加]
3.10
package
パッケージ
<UML> 要素(3.5)をグループ内で組織化する、汎用的な仕組み
[ISO 19103:2015 4.27を引用]
3.11
perspective
観点
<BIM> ユースケースのコンテキストに必要なデータと動作の定義
注記1:建設業界全般、特に建設モデリングにおける透視図(perspective)は、一般的な辞書の定義に近い。つまり「3次元のオブジェクト(3.9)を2次元の表面に表現し、それらの高さ、幅、奥行き、および互いの位置関係を正しく示す技術」。
注記2:この規格で使用されている「観点」は、BIMの概念である「モデルビュー」に似ている。「モデルビュー定義」とは、「特性を識別し、交換要件を指定する仕様」、つまり、その段階で顧客がモデル(3.8)求め、かつ、必要としていることである。
3.12
runtime
<BIM>元になる要素のコンパイルによって生成されたコード及びデータで構成される要素(3.5)
ランタイム
[ISO/IEC 1989:2014 4.168を参照]
備考1)一般にランタイムは例えばJavaランタイムのように、「プログラムの実行に必要なソフトウェアやライブラリ群」を指す。
3.13
system
システム
アプリケーション(3.1)、サービス、IT資産を取り扱う他の構成要素
[ISO/IEC 29134:2017 3.13を参照][翻訳はJIS X 9251:2021を参照]
3.14
system property
システム特性
モデルの自動作成時に使用されるカスタマイズされたシステム(3.13)設定項目
例:GUID
備考1)"GUID"は "Globally Unique Identifier"の略語であり、データに一意性を持たせるために使用される128ビットの識別子である。一般的に、GUIDはシステムやソフトウェアがローカルで与える。128ビットの整数値であり、数字の組み合わせが非常に多いため、重複する可能性も非常に低くなるとされる。
https://learn.microsoft.com/ja-jp/dotnet/api/system.guid?view=net-8.0
[1] ISO 13537, Space data and information transfer systems — Reference architecture for space data systems
[2] ISO 16739-1, Industry Foundation Classes (IFC) for data sharing in the construction and facility management industries — Part 1: Data schema
[3] ISO 19101-1:2014, Geographic information — Reference model — Part 1: Fundamentals
[4] ISO 19104, Geographic information — Terminology
[5] ISO 19136-1, Geographic information — Geography Markup Language (GML) — Part 1: Fundamentals
[6] ISO 19150-2, Geographic information — Ontology — Part 2: Rules for developing ontologies in the Web Ontology Language (OWL)
[7] ISO/IEC 1989:2014, Information technology — Programming languages, their environments and system software interfaces — Programming language COBOL
[8] ISO/IEC 18023-1:2006, Information technology — SEDRIS — Part 1: Functional specification
[9] ISO/IEC 29134:2017, Information technology — Security techniques — Guidelines for privacy impact assessment
[10] ISPRS 2016, Proposal for a New LOD and Multi-representation Concept for CityGML
[11] OGC 12-019, City Geography Markup Language (CityGML version 2) Encoding Standard
[12] OGC 15-111r1, Land and Infrastructure Conceptual Model Standard (LandInfra)
(2025-09-17)