ISO 19104:2016 Geographic information/Geomatics
Terminology
現行
履歴
ISO/TS 19103:2005(廃止)
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19104:ed-1:v1:en
序文
共通言語は人間のコミュニケーションにとって不可欠の前提条件である。ただし、語彙に関する簡単な知識だけでは、効果的なコミュニケーションを保証するには不十分である。単語は、使用される文脈に応じて複数の意味をもつことができる。同様に、一つの概念が複数の用語で参照されることがあり、それぞれが異なる意味合いや強調の度合いを伝える。
言語に関連する問題は、日常のコミュニケーションをはるかに超えるものがある。エンジニアリングから料理まで、あらゆる分野の取り組みには独自の語彙がある。あるテーマに関する議論に参加するには、用語とそれらが使用される文脈の両方を理解する必要がある。不正確な使用法(たとえば、実際には明らかに異なる意味を持つ二つの用語を同じ意味で使用するなど)は、不幸な結果を招く可能性がある。
用語をある言語(英語など)から別の言語(北京語など)に翻訳する場合、リスクはかなり複雑化する。文化、言語構造、文字セットが異なるため、両方の言語の用語項目が正確に同じ意味を持つようにすることが困難になる場合がある。
この規格は、地理情報の分野における用語項目の整備に関する要件を示す。その範囲には、概念の整備、用語項目の内容と記述法、用語記録の表現法が含まれる。また、ISO 10241-2 の規定に基づいて、用語項目の文化的および言語的適応に関するガイドラインも含まれている。
この規格は、ISO 19135-1の規定を地理空間概念の登録に適用する。多言語用語レジスターを確立するためのスキーマが提供される。レジスターの管理と保守に関するISO 19135-1の規定も適用される。
適用範囲
この規格は、地理情報の分野における用語の収集、管理、公開に関する要件を示す。
この規格の適用範囲は以下の通りである。
— 概念の選択、概念同士の調和、概念体系の整備、
— 用語項目の構造と内容、
— 用語の選択、
— 定義の提示、
— 文化的および言語学的な調整、
— 与えられた文書のレイアウトと書式設定の要件、および
— 用語レジスターの確立と管理
この規格は、地理情報分野の国際規格及び技術仕様に適用される。
引用規格
ISO 639-2, Codes for the representation of names of languages — Part 2: Alpha-3 code
ISO 690, Information and documentation — Guidelines for bibliographic references and citations to information resources
ISO 704:2009, Terminology work — Principles and methods
ISO 860:2007, Terminology work — Harmonization of concepts and terms
ISO 3166-1, Codes for the representation of names of countries and their subdivisions — Part 1: Country codes
ISO 10241-1:2011, Terminological entries in standards — Part 1: General requirements and examples of presentation
ISO 10241-2:2012, Terminological entries in standards — Part 2: Adoption of standardized terminological entries
ISO 12615, Bibliographic references and source identifiers for terminology work
ISO 19103:2015, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19115-1:2014, Geographic information — Metadata — Part 1: Fundamentals
ISO 19135-1:2015, Geographic information — Procedures for item registration — Part 1: Fundamentals
用語及び定義
この規格では、次に示す用語と定義が適用される。ISOとIECは、規格化に使用する用語データベースを次のアドレスにおいて維持・公開している。
— IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
— ISO オンライン閲覧プラットフォーム: http://www.iso.org/obp
注記:ISO/TC 211による地理情報の国際規格及び技術仕様で規定される用語及び定義の中核的な一覧は<http://www.iso211.org/>で得られる。
備考1)注記にある「中核的な一覧」については、TC211規格のオンライン閲覧プラットフォームであるGeoLexica<https://www.geolexica.org/>がある。
4.1
abbreviation
略語
より長い形式から単語または文字を省略し、同じ概念(4.3)を指定することによって形成される呼称(4.10)
[ISO 1087-1:2000 3.4.9]
4.2
admitted term
許容用語
用語(4.34)の基準に従って使用が認められた、推奨用語(4.21)の同義語として受け入れられた用語
注記1:許容用語は推奨用語の代替として受け入れられた用語である。
[ISO 1087-1:2000 3.4.16]
備考1) 注記1はこの定義で追加されたもので、ISO 1087-1:2000, 3.1.16にはない。
4.3
concept
概念
複数の特徴の独自の組み合わせによって作られた、知識の単位
注記1:概念は特別な言語に結び付けられる必要はない。しかし、異なる分類法によって導かれる社会的及び文化的な背景に影響されることはある。
[ISO 1087-1:2000 3.2.1]
4.4
concept field
概念領域
主題的に関係する概念の非構造の集合
[ISO 1087‑1:2000 3.2.10]
4.5
concept harmonization
概念調和
専門的、技術的、科学的、社会的、経済的、言語的、文化的その他の差異を有する二つ以上の密接に関連する又は重複する概念(4.3)間の対応関係が確立するように、それらの間の小さな差異を排除または軽減する活動。
注記 1: 概念調和の目的は、コミュニケーションを改善することである。
[ISO 860:2007 3.1]
4.6
concept system
概念体系
相互関係に応じて構造化された概念 (4.3)の集合
[ISO 1087‑1:2000 3.2.11]
4.7
data category
データカテゴリー
特定の種類の用語データ(4.36)の仕様化の結果
[ISO 10241‑1:2011 3.1.4]
4.8
definition
定義
関係する概念と区別するための、説明文による概念(4.3)の表現
[ISO 1087‑1:2000 3.3.1]
4.9
deprecated term
不採用語
用語の許容性評価の基準に従って望ましくないと評価された用語(4.34)
[ISO 1087‑1:2000 3.4.17]
4.10
designation
designator
指示子
概念(4.3)を指す記号による表現
注記1:用語集の作業では、記号、呼称、用語という三つの型の指定が区別される。
[ISO 1087‑1:2000 3.4.1]
備考1)本文での用法に合うようにdesignationとdesignatorには同じ「指示子」という訳語を与えている。designationは言葉による表現をするときは「呼称」とする可能性もあったが、non-verbal designationという用法も見られ、又、注記1でも見られるように、記号による表現も考えられるため、誰かが指示して与えるものという意味で「指示子」とした。
[+]
4.11
domain
応用分野
<general vocabulary>用語項目(4.37)が割り当てられる、明確な知識領域
注記1:データベース又は用語集では、一般的に応用分野の集合が示され、その中にある複数の応用分野を特定の概念(4.3)に関連づけることができる。
[ISO 19146:2010 4.9]
備考1)ISO 19146:2010, 4.9の定義中にある用語レコードが用語項目に変更されている。
備考2)一般にdomainは分野、領域又は範囲と訳される。さらに関数の戻り値の値域(range)に対応する、引数の範囲を意味する場合は定義域という。
4.12
hierarchical register
階層型レジスター
格納する項目の範囲を示す構造化されたレジスター(4.26)の集合であり、主レジスター(4.22)及び副レジスター(4.32)の集合からなる。
例:ISO/IEC 6523(全ての部)は階層型レジスターに関連づけられる。主レジスターは複数の組織識別子スキームをもち、それぞれの副レジスターは単一の組織識別子スキームに従う組織識別子の集合をもつ。
注記1:それぞれの副レジスターは、それ自体がレジスターである。
備考1)例えば、国税庁が指定する法人番号の管理において、国税庁はISO/IEC 6523-2 その他の国際規格に従って、ISOに発番機関登録を行っている。この法人番号は、電子商取引などにおいて、データや物の授受の当事者を識別するための企業コードである。法人番号は発番機関コードと組み合わせることによって、国際的に唯一のコードになる。<https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/setsumei/rikatsuyoshokai/>
この場合、ISOは発番機関の主レジスターを維持し、その副レジスターとして、国税庁は国内法人のレジスターを維持していることになる。
4.13
homograph
同形異義語
異なる概念(4.3)を表す別の指示子(4.10)と同じ綴りを持つ指示子
例1:名詞としての同形異議語"die"は、集積回路及び卓上ゲームなど、製造分野によって異なる概念をもつ。
例2:(例えば、飛行場や鉄道の駅において)同形異義の図形シンボルは、その場所の環境に応じて、"上"(例:エスカレータ)又は"直進"を意味する場合がある。
[ISO 10241‑1:2011 3.4.1.4]
備考1)日本語の例としては、空(そら・から・あき・くう)、大人気(だいにんき・おとなげ)などがある。
4.14
homonymy
同形同音異義語
特定の言語において、指示子(4.10)と概念(4.3)の間の関係で、一つの指示子が二つ以上の無関係な概念をあらわすもの
注記1:同形同音異義語の例は次のとおり
bark
1 犬の吠え声
2 木の幹の外皮
3 帆船
注記2:同形同音異義の関係にある指示子の集まりはhomonymsと呼ばれる。
[ISO 1087‑1:2000 3.4.25]
備考1)例えば日本語で「さらさら」は、「笹の葉がさらさらと揺れる」、「人の話を聞く気がさらさらない」など、同形同音で複数の意味をもつ。
4.15
homophone
同音異義語
同じように発音されるが、意味、起源、場合によってはスペルが異なる二つ以上の単語のうちの一つ
例:night(夜)とknight(騎士)
備考1)例えば日本語で「正確」と「性格」、「医師」と「意思」、「橋」と「端」など
4.16
item class
項目クラス
共通の特性をもつ項目の集合
注記1:この文脈では、クラスはインスタンスの集合を指すために使用されており、インスタンスの集合から抽象化された概念を指すわけではない。
[ISO 19135‑1:2015 4.1.7]
4.17
language
言語
コミュニケーションのために使用されるサインの体系。一般に、語い(彙)と規則とで構成される。
注記1:この規格では、特に指定されない限り、言語とは自然言語または特殊言語を指し、プログラミング言語または人工言語を指すものではない。
[ISO 5127:2001 1.1.2.01][翻訳はJIS X 0701:2005 1.1.2.01を参照]
備考1)ISO 5127:2001, 1.1.2.01には注記がない。注記1中の特殊言語(special language)とは、特定の分野で使用される言語を指す。
4.18
language identifier
言語識別子
言語(4.17)の名前を示す用語項目(4.37)内の情報
[ISO 1087‑1:2000 3.8.8]
備考1)言語識別子は、ISO 639-2(JIS X 0412-2)におけるeng(英語)、jpn(日本語)のように、コード(言語名コード)で表現する。
備考2)JIS X 0412-2:2004, 3.3では言語識別子を「言語名を示す情報」と定義づけている。
4.19
non-verbal representation
非言語表現
説明的記述以外の手段によって、概念(4.3)の特徴を明らかにする、概念の表現
注記1:非言語表現とは、化学式、数式、絵文字表現、図、表、あるいは関係する概念の特徴を明らかにするその他の種類の視覚的または非視覚的表現のことである。
[ISO 10241‑1:2011 3.4.2.3]
備考1)ISO 10241‑1:2011, 3.4.2.3には 例への参照が示されているが、ここでは削除されている。
4.20
obsolete term
廃語
現在では一般的に使用されていない用語(4.34)
[ISO 1087‑1:2000 3.4.18]
4.21
preferred term
推奨用語
用語(4.34)の尺度に従って評価された、与えられた概念(4.3)を示す主要な用語として受け入れられた用語
[ISO 1087‑1:2000 3.4.15]
4.22
principal register
主レジスター
階層レジスター(4.12)中のそれぞれの副レジスター(4.32)の説明を含むレジスター(4.26)
[ISO 19135‑1:2015 4.1.8]
4.23
reference environment
参照環境
概念(4.3)が着想され、認識される地理的および文化的な環境
4.24
reference language
参照言語
概念(4.3)の開発と記述のために指定された言語(4.17)
例: ISO/TC 211多言語用語集における参照言語は英語である。
注記1:提出言語の項(4.29)を見よ。
4.25
reference language subregister
参照言語副レジスター
参照言語(4.24)の用語項目(4.37)のみを含む階層型多言語用語レジスター(4.39)の副レジスター(4.32)
4.26
register
レジスター
関連する項目の記述を含む、項目に割り当てられた識別子をもつ記録の集合
[ISO 19135‑1:2015 4.1.9]
4.27
simple register
単純レジスター
単一項目クラス(4.16)の項目を含むレジスター(4.26)
例: 単一の指定された言語による用語項目(4.37)を含むレジスター
4.28
subject field
主題分野
特別な知識の分野
[ISO 1087‑1:2000 3.1.2]
4.29
submitted language
提出言語
参照言語(4.24)ではない言語(4.17)
注記 1: 提出言語で提示される用語項目は、参照言語による同等の用語項目(4.37)から翻訳される。
4.30
submitted language subregister
提出言語副レジスター
単一の提出言語(4.29)の用語項目(4.37)のみを含む階層型多言語用語レジスター(4.39)内の副レジスター(4.32)
4.31
subordinate concept
narrower concept
下位概念
限定概念
特定の概念または部分的な概念のいずれかを示す概念(4.3)
[ISO 1087‑1:2000 3.2.14]
備考1)下位概念と限定概念は同義語として定義されている。
4.32
subregister
副レジスター
情報領域の一部から採られた項目を含む、階層型レジスター(4.12)の一部分
[出典:ISO 19135‑1:2015 4.1.16]
4.33
technical standard
技術規格
<register>登録を必要とする項目クラス(4.16)の定義を含む規格
[ISO 19135‑1:2015 4.1.18]
4.34
term
用語
特定の主題分野(4.28)における一般概念(4.3)の、言葉による指示子(4.10)
注記1:用語には記号が含まれる場合があり、バリエーションが存在する場合がある。例えば、さまざまな形式の綴り方をする場合。
[ISO 1087‑1:2000、3.4.3]
4.35
term equivalent
同等用語
同じ概念(4.3)を表す、別の言語(4.17)の用語(4.34)
注記1:同等用語には、その同等用語と同じ言語表現による、指定された概念の定義(4.7) が伴わなければならない。
4.36
terminological data
用語データ
概念(4.3)またはその指示子(4.10)に関連するデータ
[ISO 1087‑1:2000 3.8.1、修正 — 用語データの項目に付随する注記を省略]
4.37
terminological entry
用語項目
一つの概念(4.3)に関連する用語データ(4.36)を含む用語データ集合(ISO 10241-1:2011、3.1.2)の一部。
注記1:ISO 704 に規定されている原則と方法に従って作成された用語項目は、単言語であっても多言語であっても同じ構造原則に従う。
[ISO 1087‑1:2000、3.8.2]
備考1)ISO 1087‑1:2000 3.8.2に注記はない。
備考2)ISO 704- Terminology work - Principles and methodsは、用語の作成と編纂に関する基本的な原則と方法を定めた規格である。
4.38
terminological entry identifier
用語項目識別子
用語項目に割り当てられる、一意で、明確で、言語的に中立な識別子(4.37)
4.39
terminology register
用語レジスター
用語項目(4.37)のレジスター(4.26)
注記1:用語レジスターは、言語(4.17)及び/又は応用分野(4.11)に従って構造化できる。
4.40
terminology repository
用語リポジトリー
用語(4.34)及びそれに関連する定義(4.8)が保存又は記録される、データの記憶域又は文書
参考文献
[1] ISO 1087-1:2000, Terminology work — Vocabulary — Part 1: Theory and application
[2] ISO 5127:2001, Information and documentation — Vocabulary
[3] ISO 15924:2004, Information and documentation — Codes for the representation of names of scripts
[4] ISO 19108:2002, Geographic information — Temporal schema
[5] ISO/IEC Guide 21-1:2005, Regional or national adoption of International Standards and other International Deliverables — Part 1: Adoption of International Standards
(2024-12-01)