投稿日: Jan 05, 2011 7:2:7 AM
長男と次男に、一緒に飲みにいこうと声をかけた。
それぞれとは何度も飲んだり食べたりしていたが、三人というのは初めてだった。
私の働く曜日が変更になるので、多分三人一緒に飲むのは難しくなると思ってのことだった。
馴染みのカラオケスナックへ行ったら、なんと貸切になっていた。
残念と引き返したが、せっかく三人そろっているので、近くにあった食事処(以前長男と食事をしたことがあり酒も飲ませた)で、ここにしようと入った。
まずはビールで乾杯したあと、長男がポケットから細長い箱を取り出した。
「時計だよ」よと一言いった。
箱を開けると男物の腕時計だった。
贈り物なんて初めてのことだったのでビックリしたが嬉しかった。
「ゴルフの景品か。腕につけるのはあまり好きじゃないんだ」
「ポケットにでも入れればいいよ」
しまった、余計なことを言った、と後悔した。
ゴルフの景品などではなく、純粋に私のために贈り物として買ってくれたことが分ったからだ。
離婚したあとでも、ごくたまに様子を見に来てはいたが、私ががんになってからは、長男と次男は頻繁に訪ねて来るようになった。
一緒に酒を飲み、食事もしたが贈り物は初めてだった。
その時計をつけてみようと、箱から取り出して手首に回したが、付け方がわからず四苦八苦した。
付けてみると意外に重たかった。
左手首が別の物になったみたいだ。
これから外出の時は必ず付けていこうと思った。
今、外出している。
息子の思いが左手首の重さにある。
(本村幸広)