ヌメリニガイグチ 

Mucilopilus castaneiceps (Hongo) Har. Takah., Trans. Mycol. Soc. Japan 29(2): 119 (1988)

Basionym(基礎異名、バシオニム):Tylopilus castaneiceps Hongo, J. Jap. Bot. 60(12): 375 (1985)


管孔の色並びに胞子紋はニガイグチ属の定義と一致し、子実体は乾いた状態でもべたつくような独特の粘性があり、柄の表面および肉に黄斑を生じます。世界的に見ても同様の性質を持つ近縁種がなく、類縁関係が特定できない非常にユニークなイグチです。摂氏30℃以上で発生する好熱性のイグチ類と比較してやや低温時 (27℃前後) に多発する傾向があり、通常赤土が露出した斜面の土壌から発生します。関東地方では柄表面の網目模様が不明瞭なタイプがしばしば見られます。


Wuら (Wu et al. 2016) による分子系統解析によれば、ヌメリニガイグチはヤシャイグチ亜科 Austroboletoideae G. Wu & Zhu L. Yang, Fungal Diversity 69: 104 (2014) に近縁であることが示唆されており、Mucilopilus 属との組み合わせが採用されています。Wolfe (1979)の原記載の定義による Mucilopilus 属は基準種の分子系統解析が行われておらず、今のところ Singer (1986)の形態分類によるFistulinella 属のシノニムとされています。

Mucilopilus 属の基準種ニュージーランド産Mucilopilus viscidus (McNabb) Wolfeを分子解析して、ヌメリニガイグチとの類縁関係を検証しないと判りませんが、ヌメリニガイグチはWuらの系統樹ではヤシャイグチ属に隣接した一属一種の単系統群を成しているので、将来的に新属が設立される可能性も考えられます。


分布: 本州を中心とする日本の温帯地域, ネットに掲載されている台湾産 Tylopilus castaneiceps (http://www.bcrc.firdi.org.tw/fungi/fungal_detail.jsp?id=FU200802120134)は、子実体の色が日本産ヌメリニガイグチと異なり、誤同定と思われる。