ひろみと、お蝶夫人が
レイカ:ひろみ、今日の試合、がんばろうね!
ひろみ:もちろんよ、レイカ!やるわよ!
レイカ:それにしても、ひろみはいつまでも若いわね。
ひろみ:レイカこそ、高校生だった1973年と少しも変わらないわ。
レイカ:53年前に高校生だった私たちが、今、何歳になっているかというと、ええと・・・
ひろみ:やめて。年齢の話、私はきらいよ。
レイカ:タマキタイムズの読者たちは、私たちが「エースをねらえ」の、岡ひろみと竜崎麗香であることを知っているかしら?
ひろみ:きっと大丈夫よ。お父さんかお母さんに聞けばわかるはずよ。
レイカ:「おじいちゃんかおばあちゃん」じゃない?
ひろみ:・・・そうね。ただ、あの人たちは研究熱心よ。アマゾンプライムですぐにチェックしてくれるわ。
レイカ:それにしても、私たちのテニスのスタイル、ちょっと古くない?
ひろみ:何が古いというのよ。
レイカ:だって、日差しの強い日にノースリーブ(そでのないワンピース)のスコートに、ウッド(木製)のラケット、こんなスタイルの女性、今、どこのテニスコートにもいないわよ。
ひろみ:どんなスタイルなら、現代風だといえるの?
レイカ:女性は、フェイスカバーにサングラスをつけて、帽子をかぶるのよ。
ひろみ:なんだか、オートバイに乗って登場した1960年代のヒーローに似ているわ。
レイカ:だれ、それ?
ひろみ:月光仮面よ。
レイカ:あのね、それもまたまた古い話ね。アマゾンプライムで見ることができる?
ひろみ:2週間なら無料お試し期間よ。
中国から来た対戦相手
ひろみ:ところで、あれはだれ?
レイカ:え?どの人?
ひろみ:あそこにいる私たちの今日の対戦相手よ。
レイカ:あれが中国から来たという、うわさの人型ロボット、G1よ。
ひろみ:ロボット?
レイカ:そうよ。テニスをするロボットよ。
ひろみ:今日の対戦相手は、ロボットなのね?
レイカ:そうよ。わくわくするわ。
ひろみ:誰が、操縦するの?
レイカ:AI(人工知能)が、自分で考えて動くらしいわ。
ひろみ:ええ?AIが自分で?
レイカ:そうよ。
ひろみ:でも、テニスはとても動きがハードで瞬時に考えなきゃならないことが多いスポーツでしょ?ロボットにそんなことができるの?
レイカ:ほら、あの練習風景を見て。
ひろみ:うわ、あのロボット、ステップを踏みながらボールの飛んでくる方向に移動して、相手のコートに返球してるじゃないの!
レイカ:そう、からだを傾けながらかがんで、ボールを打つ姿はまるで人間よ。
※人型ロボットのテニス動画 https://youtu.be/XIDd7h0bNHw?si=kiVrMRqeT0HM6jJL
ホンダのアシモ
ひろみ:私は「アシモ」を見たことがあるわ。
レイカ:ホンダの開発しているロボットよね。
ひろみ:そうそう。宇宙服の少年がランドセルを背負ったような姿がかわいいわ。
レイカ:時速9kmで走るし、両足ジャンプもできるし、片足ジャンプ(ケンケン)をする姿も見たことがあるわよ。
ひろみ:アシモは水筒をにぎってフタを開け、紙コップに水を注ぐことができるのよ。あの繊細さは見事だわ。
レイカ:ただ、アシモに比べて、あの中国のロボット選手は、ずいぶんスリムよ。
ひろみ:どれくらいの体重なの?
レイカ:35kgと発表されてるわ。軽いわ。
ひろみ:アシモは48kgでしょ?4分の3以下の体重じゃない?
レイカ:そうなのよ。だから、とても敏しょうに動けるのよ。
ひろみ:使う電力も少なくてすむということにもつながるでしょうね。
レイカ:そうね。さらに、このG1は「見て動く」能力がすごいのよ。
ひろみ:どういうこと?
レイカ:テニスをするのに大切な、周囲を360°立体的に認識する能力と、距離測定をする深度カメラの能力が高いのよ。
ひろみ:・・・ロボットのくせに、ごついやないの!
レイカ:ひろみ、関西出身だったの?
ひろみ:動揺するとなまりますのや。
レイカ:さらに「ロボットのくせに」というのは、言葉が適切じゃないわ。
ひろみ:どういうこと?
レイカ:この中国製のロボットはPMSMと呼ばれる高速応答モーターと高精度ベアリングが使われていて、膝(ひざ)のトルクなんて、90N・mもあるというのよ。
ひろみ:ど、どないやて?わかりやすうに説明してんか!
レイカ:動揺がひどいようね。
ひろみ:はよ、ほよ、説明して!
レイカ:ほとんど人間に近い滑らかさで動き、しかも人間を越える強い力で跳ね回るということよ。
ロボットコンテスト
ひろみ:日本のロボットコンテストは、ちょっと地味じゃない?
レイカ:どういうこと?
ひろみ:中国のRoboMaster(ロボマスター)というコンテストを見たことがあるのだけれど、大きな会場に登場するロボットの、見事な動きは、脅威すら感じたわ。
レイカ:NHKの学生ロボコンは、学生の創造力や発想力を重視して、限られた条件で工夫することに評価ポイントが置かれているのよ。
ひろみ:ええ、わかっているわ。教育としての要素の大きいロボコンよね。
レイカ:中国のロボマスターでは、キックボクシングの対戦をするロボットだとか、サッカーの試合をするロボットだとか、階段を駆け上るイヌのような形をしたロボットだとか、とても派手でその規模や資金では中国のロボコンの方がすごいようにみえるわね。
ひろみ:でしょ?毎年You-Tubeで中国のロボコンを見るのが楽しみだもの。
レイカ:世界中から100以上のチームが参加して、数百万円規模の賞金もあるらしいわ。
ひろみ:本格的なロボット戦争の様相よね。
レイカ:日本の教育的で・創造性を重視したロボコンと、中国の産業、実践技術の競技としてのロボコン、本質的に比べる部分が違うのだけれど、それでも世界の目は中国のロボコンにくぎづけね。。
ヒトはいつまで勝てる?
ひろみ:今日のロボットとのテニスの試合は、勝てるかしら?
レイカ:まあ、今日のところは大丈夫そうね。でも・・・
ひろみ:でも・・・?
レイカ:将棋などの対戦では、もうすでに人間の方が負けてるし、卓球ではすでにロボットが中級者に勝つようになったらしいわ。
ひろみ:そうか。AIがプロの動きやボールの打ち方、戦術などを学習すれば、人間の能力をはるかに超えるものになるということね。
レイカ:その通り。AIは昼夜休むことなく、しかも大量に学習するからね。
ひろみ:今このロボットが、テニスの球を打ち返せる確率、返球率はどれくらいなの?
レイカ:97%らしいわ。
ひろみ:うわぁ、かなり高いわね。このロボットに弱点はあるの?
レイカ:いまのところ、親切に返してもらった球は上手に打ち返せるレベルだけれど、イレギュラーバウンドした玉とか、風の中でのプレイとか、スピンのかかった打球などには、まだ弱いらしいわ。
ひろみ:あと何年くらいで、ロボットがプロのテニスプレイヤーに勝つようになるかしら?
レイカ:10年以内だとみんないうわ。
ひろみ:年齢の話はしたくないのだけれど、私たちは10年後には・・・
レイカ:80歳をこえるでしょうね。
ひろみ:私たち、テニスを続けていられるかしら?
レイカ:がんばらなきゃだめよね。
ひろみ:そのころ、私たちの返球率は何%くらいになっているかしら?
レイカ:返球率ねえ・・・。
ひろみ:何よ、そのうかない顔は。
レイカ:80歳を越えた私たちの「生存率」を調べた方がよさそうな気がするのだけれど。
文責 玉木英明