仮面をつけたライダーが
ライダー:へんしん!とうっ!
バイク屋:あっ、またあのおじさんだ!電動キックボードに乗ってるぞ!ハンドルから手をはなして変身のポーズをとったぞ!大丈夫か?・・・ああ、こけた。
ライダー:いたた・・おい、バイク屋。いまのは見なかったことにしといてくれ。
バイク屋:おじさん、このごろよくいらっしゃいますね。
ライダー:おじさんではない。私の名は・・・
バイク屋:・・・どうしましたか?
ライダー:い、いや、4月はアマゾンで今回は・・・ええっと、最近もの忘れがはげしくて・・・
バイク屋:もしかして、シン仮面ライダーとちがいますか?
ライダー:そ、それだ!シン仮面ライダーだ!ヒーローだ!
バイク屋:もの忘れするヒーローというのも、めずらしいですね。
ライダー:ほっといてくれ。弱いところがある正義の味方の方が、親近感がわく。
素敵な乗り物
バイク屋:ところで仮面ライダーさん、今日はモダンな乗り物でいらっしゃいましたね。
ライダー:ふっふっふ・・・。二輪免許を取得していない私のために、国土交通省が新しい乗り物を用意してくれたのだ。
バイク屋:まだ自動二輪の免許をとってないのですね?
ライダー:そこだけ大きな声でいうな!
バイク屋:電動キックボードに仮面ライダーを配するところなど、タマキタイムズの著者も、なかなか手がこんできましたね。
ライダー:ああ、作りこみに時間をかけているらしいぞ。
バイク屋:なんでまた、電動キックボードなのですか?
ライダー:簡単だ。免許がいらないオートバイだからだ。
バイク屋:これは、オートバイなのですね?
ライダー:い、いや、正確には、特定小型原動機付き自転車だ。
バイク屋:速度は20km/hでしたよね?
ライダー:そうだ。自転車として十分な速さだ!
バイク屋:歩道は走れるのですか?
ライダー:ふっふっふ・・・驚くなよ。こいつは、歩道を走ることも許されている、特例特定小型原動機付き自転車なのだ!
バイク屋:舌をかみそうな名前の乗り物ですね。
消極的な?日本企業
ライダー:ようやく日本の町を電動二輪が走れるようになってきたな。
バイク屋:上海などでは、もう10年も前から電動二輪ばかりが走ってますよ。
ライダー:私の特例特定小型原動機付き自転車は中国製だ。
バイク屋:ホンダやヤマハは作ってませんね。
ライダー:ああ、ほとんど作ってない。
バイク屋:スズキやカワサキも二輪を作るのは得意でしょ?なのに、作っていませんよね。
ライダー:ああ、研究開発はしているらしいが、作っていない。なんでなのか・・・。
バイク屋:法律ができて1年半になりますが、日本製はほとんど走っていませんね。
ライダー:私の電動キックボードは、安かったぞ。
バイク屋:中国のXiaomi(シャオミ)やSegway-Ninebot(セグウェイ・ナインボット)などは非常に安い小型原付自転車を販売していますよね。
ライダー:安いことはいいことだろ?
バイク屋:日本メーカーが品質と安全性にこだわって製造すれば、高いものになってしまうでしょうね。
ライダー:ハーレー・ダビッドソンが特例特定小型原付を売り出せば・・・
バイク屋:安価で消耗品的に使われやすい電動キックボードが、ハーレーの企業イメージと合っているでしょうか。
ライダー:特定小型原付は、ヘルメット不要だぞ。16歳以上なら免許がなくても乗れるのだぞ!
バイク屋:だれでも乗れるということは、マナーの悪い人たちも使いますから、歩道走行や事故も増えるにちがいありません。状況を、大きな企業は様子見をしているとも考えられますね。
ライダー:でも、こいつはスーパーカブやスクーターに代わる乗り物としては、便利だぞ!
バイク屋:逆に、本田やヤマハがすでに持っている小型のスクーター市場とは、食い合いになる可能性もありますね。
日本的なきまりの作り方
ライダー:フランスやイギリスで、若者たちが電動キックボードで、軽快に走っているのを見て、私も日本で乗ってみようと思ったのだが、正直なところ、日本の電動キックボードは、何だかゴツイな。
バイク屋:はい、バックミラーやライトはもちろん、ウインカー、ナンバープレートまでついています。方向指示器、ブレーキランプがついていて、自分で持つには軽自動車税とか自賠責保険にもお金を払わねばなりません。
ライダー:もっと、手軽に乗れないのか?
バイク屋:日本では、運転者の責任、電動キックボードを作った製造者の責任、法律を制定する側の責任、保守メンテナンスをする人の責任、さらには転倒した時や水の中に飛び込んだ時の安全性など、様々な責任の「かずけ合い」が発生します。
ライダー:日本では、新しいことは動きが遅いな。
開発を断念させるものは
ライダー:この電動キックボード、学生が学校に通うのに使わせてやれないか?
バイク屋:安全に使えば便利でしょうね。
ライダー:禁止ばかりを考えてないで、発想を180度転換すべきだな。
バイク屋:そうですね。地域でフレキシブルな法律を制定してもよさそうですね。
ライダー:過疎地で、足腰の弱った老人たちが、買い物や通院するのに使えないか?
バイク屋:役に立つでしょうね。老人向けの3輪か4輪の安定した乗り物、超小型モビリティも有効でしょうね。
ライダー:日本のメーカーなら作れるだろ?
バイク屋:トヨタが2015年の東京モーターショーで超小型モビリティ「i-ROAD」を発表したのですが、国交省の「安全性」も責任がうやむやで生産にまで至りませんでした。
ライダー:なんとも、もったいない話だな。
バイク屋:認可も販売も「見合わせる」という、あの日本独特の表現です。
ライダー:何を見合わせるというのだ?
バイク屋:顔です。目です。
ライダー:顔を見合わせて、「今認めたら、認めた自分が責任とらなあかんから、とりあえずやめとこか」というやつだな。
バイク屋:そうです。日本の意気地のない法体制に業を煮やし、実は、そのi-ROADを開発したエンジニアはトヨタをやめて自分で起業し、Lean Mobility という会社を愛知県豊田市に設立しました。そして今年2025年に、台湾で電動小型モビリティ「マイクロEV」の販売を始めました。
ライダー:なんだ、日本でなくて、台湾で売り出すのか?
バイク屋:はい、台湾の方が、日本よりフットワークが軽いからです。
ライダー:日本でそのマイクロEVを逆輸入すれば、同じように乗れるのだな?
バイク屋:残念ですが、台湾のようには使えません。
ライダー:どういうことだ?
バイク屋:日本では、マイクロEVのような電動小型モビリティは、1人乗りと決まっています。2人乗りできません。
ライダー:どうしてだ?
バイク屋: 前例がないからです。開発者は、何をどうすればいいのか基準をつくる作業からおうかがいをたてながら進まねばなりません。
ライダー:オートバイでも、二人乗りできるのだぞ!
バイク屋:新しい乗り物を普及させようという気概は、役人たちには・・・。
ライダー:・・・あかんやないか。
バイク屋:仮面ライダーさんは、関西出身だったのですね?
ライダー:腹が立つと、なまるのや。
動きのはやい台湾から
ライダー:日本では二人乗りの超小型モビリティーは使えないのだな?
バイク屋:はい、役所が認可しないわけですから、多くの中小企業が開発を断念しています。
ライダー:超小型モビリティーなら年老いた人でも動かしやすいし、二人乗りができたら、老夫婦でも病院にも行きやすいだろうに。
バイク屋:そうですね。運転免許証の返納ばかりを求めるのではなくて、老人たちが雨風をしのいで快適に移動できるような道具を、日本人が世界に先駆けて作り出せるように制度づくりを始めなきゃだめですね。
ライダー:台湾で、マイクロEVが成功すればいいな。
バイク屋:そうですね。台湾でマイクロEVが成功すれば、頭の固い日本の役所も気が付くかも知れませんね。
ライダー:視野の固まっている人たちにやわらかい発想をうながすには、どうすればいいだろうか?
バイク屋:つよい衝撃を与えるべきですね。
ライダー:衝撃だと?
バイク屋:そうです。あなたが強いショックを与える人になればいいのです。
ライダー:ついに私が、ショッカーか。
文責 玉木英明