2021-12 COP26。エネルギー資源のない日本の道は
雷神と風神が
雷神:のってけ、のってけ、のってけサーフィン、な~みに、な~みに、な~みに、のれのれ…
風神:あのなぁ、そんな古い歌、最近の若者は知らないよ。
雷神:比較的新しいぞ。1964年にはやった「太陽の彼方(かなた)」だ。タマキタイムズの読者なら、みんな知ってるはずだ。
風神:それもそうだな。ところで、おぬし、何してるのだ?
雷神:見ればわかるだろ?室内自転車こいでるのさ。
風神:室内自転車?雷神がダイエットか?スマホで撮って、YOU-TUBEにアップしてもいいか?
雷神:じゃましないでくれ。こうやって、わしはかみなり用の電気を発電してるのだ。
風神:雷神が自転車こいで発電しなくても…
雷神:イギリスでグラスのコップが熱くなり続けてる話、知らないのか?
風神:…なんだって?
雷神:だから、塩通が増えて気がおかしくなる話だ。
風神:なんだ?その「しおつう」ってのは?
雷神:要するに塩の味にうるさい食通なんだろな。
風神:…あのなぁ、イギリスのグラスゴーで開かれたコップ26で、CO2がこれ以上増えると気候が極端に変動してしまうから、これを止めようという話だろ?
雷神:そうそう、それそれ。知ってるなら早く言え。いじわるなヤツだ。
京都議定書
雷神:だいたい、1997年に決めた京都議定書を世界中が守れば、こんなに暑くならなかったんだ。
風神:いや、あの京都議定書でCO2の削減目標を決めたのは先進国だけだよ。
雷神:発展途上国の削減目標は?
風神:削減義務はなかったよ。
雷神:…それで、先進国は削減できたのか?
風神:アメリカが2001年に京都議定書体制からの離脱を宣言した。
雷神:えげつないやないか!アメリカいうたら世界最大のCO2排出国やないか!
風神:おぬし、関西出身だったのだな?
雷神:動揺するとなまるのだ。いずれにせよ、アメリカが抜けなきゃ温暖化は止まったのだろ?
風神:いや、京都議定書の中に示してあったのは、2012年までの削減目標であって、それ以降の取り組みは白紙の状態だったんだ。
雷神:先進国のお手本があれば…
風神:それまで「途上国」だった中国とインドが、CO2排出量をぐっと上げてきて、「先進国」になってきたのさ。
パリ協定
雷神:ということは、京都議定書の中身を考え直さなきゃいけなくなったのだな?
風神:そう、そこで2015年のパリ協定COP21さ。
雷神:世界が力を合わせる時がきたのだな?
風神:いや、そのパリ協定でも各国の合意が優先された内容だったから、あいまいな表現でそのルールが決められたんだ。
雷神:なんだと?パリ協定でも具体的な内容は定められなかったのか?
風神:ああ、詳細なルールは後々に決めようということになってたのさ。
雷神:それで今年のCOP26で、ようやく決めにかかったということだな?
風神:そう。産業革命の時の1.5度の上昇で温暖化をくい止めようという目標になったのだ。
石炭火力発電を止めろ
雷神:どうやれば、そんなことができるのだ?
風神:まずは2030年~2040年までに石炭火力発電をとめようというのだ。
雷神:なんで石炭なのだ?
風神:発電する時に、最も二酸化炭素を出すからさ。
雷神:そうか。それじゃぁ石炭火力発電はやめた方がいいな。まさか、石炭火力発電の廃止に反対した国はなかっただろうな。
風神:中国やアメリカは賛同しなかった。
雷神:なんちゅう国や!いっぺん、しばいたらなあかんな!
風神:だいぶ動揺してるな。実は、日本も賛同しなかった。
雷神:…な…なんやて?
風神:実は、日本は発電の石炭依存度が32%もあるのだ。
雷神:知らなかった…。石炭は日本にとって重要なのだな。
風神:そのとおりさ。フランスやイギリスが2024年、アメリカが2035年、石炭への依存度の高いドイツでも2038年までに、石炭火力をすべて廃止すると宣言した。
雷神:に、日本は?
風神:2030年までに石炭依存度を19%まで下げて…将来も使い続ける方針だ。
日本が電力を得る方法
風神:よく考えてみろよ。日本は電力をどうやって手に入れる?
雷神:原子力発電は賛成すれば袋だたきの状態だし、天然ガスも石油も石炭も海外からの輸入にたよってるな。
風神:何しろ、いろいろなことをして少しずつ電力を手に入れないと、日本がなりたたない。だから、今回の「石炭」の廃止にも賛成の手をあげなかったのだ。
雷神:わかる気もするな。風力や太陽光発電を増やせばいいじゃないか。
風神:せまい国土の日本は、太陽光パネルや風力発電機の設置場所の確保も難しいし、民家に近いところでは低周波の音による害などを気にする必要もある。現在ドイツやイギリスの半分ほどしか発電量がない。今のペースで風力発電機や太陽光パネルを増やしていっても、2030年までに必要なエネルギーの3分の1にもならないのさ。
雷神:電力は、外国から買えないのか?
風神:ヨーロッパは発達した送電網があるので、国どうしで電力のやりとり、売買ができるのだけれど、広い海に囲まれた日本は「島の中」で発電するしかない。
雷神:水素を燃料に使えばどうだ?CO2を排出しないぞ。
風神:水素は、液体で貯蔵しようとすると-250℃以下に保つ必要があって扱いにくい。
アンモニア
雷神:アンモニアはどうだ?常温で貯蔵できて、日本では研究が進んでると聞いたぞ。
風神:アンモニアは日本になくて、ほとんどを輸入に頼ってるよ。日本が石炭火力の20%をアンモニアに置き換えるだけで、世界中のアンモニアをかき集めなくちゃいけないくらい大きな量だ。
雷神:でも、日本はアンモニアを脱炭素の切り札にしてると聞いたぞ。
風神:確かに、天然ガスと石炭を100%アンモニアに置き換えれば、電力を得る時に発生するCO2の5割が減らせる。
雷神:半分だけ?
風神:そう、現状ではアンモニアをつくりだすのに天然ガスが必要なのだ。
雷神:天然ガス?
風神:アンモニアはNH3だ。この水素をほとんど天然ガスから得なくちゃならなくて、その過程で大量のCO2が出るのだ。
雷神:水を電気分解すれば、水素が得られるじゃないか?
風神:その電気分解の電力、どうする?
雷神:…なんだか、「切り札」としては、アンモニアは押しが弱いな。
風神:そうだ。だから、日本は脱炭素に消極的だとして、国連の環境NGOが日本に対して、「化石賞」なんて賞を出したよ。
雷神:エネルギー資源のない日本は、どうすればいいのだ?
風神:わしも、一部ではあるが、日本を手助けしてやるとするか。
雷神:風神のおぬしが、どうやって?
風神:日本政府に、沿岸の海上にできる限り大量の風力発電用のプロペラを設置させろ。
雷神:洋上風力発電か?
風神:そう。そこに、わしが、しこたま風をおくってやる。
雷神:あまり、リキむなよ。竜巻がおこるから。
文責 玉木英明