2022-04 電動自転車。便利な乗り物をシェアすれば
仮面の男が…
ライダー : へん…しん!とうっ!
バイク屋 :あれれ? あなたは以前オートバイを買いにきたおじさんですね?
ライダー : 「おじさん」ではない!私は…
バイク屋 :そうそう、月光仮面さんでしたね。
ライダー : ちがう!毎回いってるだろ?このかまえは…
バイク屋 :七色仮面(なないろかめん)!隠密剣士(おんみつけんし)!いや、鞍馬天狗(くらまてんぐ)だったかな?
ライダー : ふりがななしでは読めないような大瀬康一主演の古いヒーローばかり、よくあげたな。
バイク屋 :わかった、ハリマオだ!
ライダー : 「ま~っかな太陽~、もぉえ~ている~」あ、あのな、おもわず歌ってしまったじゃないか。
バイク屋 :タマキタイムズの登場人物は実に多彩ですね。
ライダー : 言っておくが、ハリマオが乗っていたのはバイクじゃない、馬だ!
バイク屋 :わかってますよ、仮面のライダーさん。
ライダー : なんだ、知ってるのなら早く言ってくれ。いじわるなヤツだ。
免許不要の便利さ
バイク屋 :ところでライダーさん、自動二輪の免許はとれたのですか?
ライダー : い…いや、それが、まだなのだ。
バイク屋 :2014年11月号で、初めて私の店にいらしてから、もう7年以上たちましたよ。
ライダー : 原付免許はとったぞ!
バイク屋 :いばらないで下さい。今日こそは単車をお買い求めいただけるのでしょうね?
ライダー : いや、実は最近、自転車でもいいのではないかと思うようになってきたのだ。
バイク屋 :自転車は、自分でこがなきゃなりませんよ。
ライダー : 最近の「電動自転車」は、楽チンだときいたぞ。
バイク屋 :でも、仮面ライダーが電動自転車で登場したら、ファンは絶対にがっかりしますよ。
楽チンの代償
ライダー : 電動自転車は、乗るのに免許はいらないのだろ?
バイク屋 :はい、免許は不要です。
ライダー : バッテリーの充電には、いくらくらいかかるのだ?
バイク屋 :1回10円ほどです。
ライダー : オートバイよりずっと安上がりじゃないか。
バイク屋 :この部分だけみれば、その通りですね。
ライダー : 車体は、いくらくらいするのだ?
バイク屋 :かっこいいスポーツタイプだと25万円ほどします。
ライダー : …自転車にしては、かなり高いな。ふつうのママチャリタイプならば…
バイク屋 :日本製だと十数万円です。
ライダー : …まあ、よしとしよう。一回の充電で走れるきょりは?
バイク屋 :20~30kmです。
ライダー : ちょっと短くないか?
バイク屋 :坂道ばかりだと、さらに短くなります。
ライダー : ショッカーの秘密基地まで、往復できるのか?
バイク屋 :予備の電池を持っていれば安心ですよ。
ライダー : オートバイは、1回の給油で200kmは走るぞ。
バイク屋 :それなら10個ほど電池の予備をもっていればOKです。
ライダー : 電池1個の重さは?
バイク屋 :3kgほどです。
ライダー : 10個積めば30kg、まるで石を運んでいるようなもんだな。
バイク屋 :これでも最近は軽く小さくなってきた方ですよ。
ライダー : 電池一個の値段は?
バイク屋 :一個3万5000円ほどです。
ライダー : うぉぉ、高い!
バイク屋 :しかも、3~4年で能力は半減します。
電動自転車をシェアすれば
バイク屋 :中国では、乗り捨て自由のシェア・サイクルが全盛ですよ。
ライダー : シェア・サイクル?
バイク屋 :どこから乗り出して、どこで乗り捨ててもいい電動自転車です。
ライダー : どうやって料金を払うのだ?
バイク屋 :スマホで支払います。
ライダー : 私でも使えるのか?
バイク屋 :支付宝(アリペイ)や微信支付(ウィチャペイ)につながったクレジットカードがあれば、OKですよ。
ライダー : …便利じゃないか。
バイク屋 :便利です。さらに電動自転車は「自転車」です。速度計やウィンカーなどの、単車には必要なものがついていないので、シンプルです。
ライダー : 最寄りの駅まで電車で移動しておいて、そこから先をシェア・電動サイクルで行けば、ショッカーのアジトも簡単にいけるわけだな?
バイク屋 :その通りですね。その格好で電車に乗る勇気があれば、ですが…。
ビジネスチャンス
ライダー : うっふっふっふ…
バイク屋 :ど、どうしたのですか、うすきみ悪い笑い方をして?
ライダー : ちょっと思いついたのだが、これは大きなビジネスチャンスだぞ。
バイク屋 :どういうことですか?
ライダー : 人口の多い中国で、シェア・サイクルの事業を始めてはどうかと思うのだ。
バイク屋 :ええ?仮面ライダーさんが?
ライダー : そうだ。限りなく単車に近い性能の「電動自転車」を大量に作って、人口の多い中国のいろんな都市に置くのだ!大もうけできるぞ!
バイク屋 :実はそう考えて、多くの人たちがこの事業に参入しました。
ライダー : …そ、そうか。もうそんな奴らがいたのだな。うまくいったか?
バイク屋 :顧客の獲得争いで大量に自転車を投入しすぎて、その多くが廃棄されてます。
ライダー : 廃棄?
バイク屋 :まあ写真をみてください。
ライダー : うぉぉおお!これは!
バイク屋 :中国湖南省の長沙(cháng shā)というところです。約40万台あります。
ライダー : こんなにたくさん、どうしたのだ?
バイク屋 :6.5万台だけ残して、あとはすべて処分するそうです。
ライダー : …シェア電動自転車を作りすぎたということか?
バイク屋 :そのとおりです。飽和を通り過ぎて、救急車や消防車が町を走れないくらい邪魔な「ゴミ」になってしまったのです。
ライダー : 投資した自転車の車両代金はどうするつもりだ?
バイク屋 :ofo(オフォ)という会社などは、投資家やユーザーに出資をつのって1650万人からお金を集めて電動自転車をつくったので、今の遅いペースでその出資者たちにお金を返していくとなると、988年かかるそうです。
最新型マシン
ライダー : なあバイク屋、仮面ライダーが自転車で登場したのじゃ、やっぱりカッコつかないだろうか?
バイク屋 :そうでしょうね。
ライダー : おっと、そこに‥‥あるのは何のカタログだ?
バイク屋 :今年の最新型モデルのカタログです。
ライダー : ほ、ほんとうか?どこのメーカーのマシンだ?
バイク屋 :スズキですね。ちょっと待って下さい。袋を開けてみますから…
ライダー : あの「ハヤブサ」や「カタナ」を製造しているオートバイ・メーカーだな!
バイク屋 :そうです。
ライダー : ああ、ワクワクする!何という名前のマシンのカタログだ?
バイク屋 :Senior… と袋には書いてありますね。
ライダー : セニョール…?スペイン語名のバイクをスズキは発売するつもりだな?
バイク屋 :ちょっと…待ってください…
ライダー : はやく見せてくれ!じれったいぞ!
バイク屋 :ううむ、これは!
ライダー : な、なんだ?
バイク屋 :これはいい!新型の…
ライダー : 新型の?
バイク屋 :セニアカーですね。
文責 玉木英明