2023-03 下がる日本の出生率。減少していく、若者が人口が
地獄のエンマ様が
エンマ: おい、番人!
番人: これはこれはエンマ様、今回は迫力を増してのご登場ですね。タマキタイムズには1年半ぶりでしょうか。
エンマ:そんなこと、どうでもよい。ちょっと聞きたいことがあるのじゃが‥‥。
番人: おお、地獄のぬきうち検査ですね。大丈夫、管理室の「ヘルズメーター」はすべて正常値を示しております。
エンマ:まだ、その体重計のような呼び名を使ってるのだな。
番人: 三途の川の船頭たちは、渡し船の電動化を進めておりますし、なます地獄の鬼たちも、セラミクスの包丁を使うようになって、研ぐ回数がずいぶん減りました。
エンマ:いや、そういうことではなくて‥‥。
番人: わかっております、わかっております。地獄の門でのゼロコロナ対策は、廃止しました。今までは37.5度以上の罪人は、地獄への入場を固くお断りしておりましたが、2回のワクチン接種証明さえあれば、PCR検査なしで地獄へ自由に入ってくることができるようになりました!
エンマ:これから地獄にくる奴に、ワクチン接種証明が必要か?
番人: 地獄の門もNECの顔認証システムを導入しましたから罪人の通関もスムーズです。そうそう、GoToトラヘルを再開しました。罪人たちは、三途の川の渡航代金と地獄クーポンが補助されます。
エンマ:「ヘル」とつければ、何でもいいと思ってないか?
番人: マスクも、個々が必要と考える場合のみ着用するように通達を出しました。これで鬼たちもキバが見せられると喜んでおります。
エンマ:よくしゃべる奴だ。あのな、日本人の出生率が下がってて、地獄に落ちてくる奴も、今後どんどん減っていくといううわさを耳にしたぞ!
番人: エンマ様は‥。やっぱり地獄耳ですね。
20年後の成人の数
エンマ:今年の出生率はどれくらいだ?
番人: 夫婦一組あたり、1.3人です。
エンマ:夫婦に2人以上の子供がいないと、人口は減る一方だぞ。
番人: おっしゃる通りです。
エンマ:今、20歳の若者は何人いるのだ?
番人: 日本に117万人います。
エンマ:では、生まれたての赤ん坊は?
番人: 77万人ほどです。
エンマ:ということは、20年後の20歳人口は、今の3分の2になるというのか?
番人: その通りでございます。
エンマ:若者の数の減り方が、えげつないのとちゃうか。
番人: エンマ様は関西のご出身だったのですね?
エンマ:動揺すると、ナマるのだ。
若者が減る!
エンマ:若者の数がそんなに減ると、ヤバくないか?
番人: はい、会社などは「新人」を十分に採用できなくなります。
エンマ:若い世代が少ないと、議論をするのが中高年の同じメンバーで、
似たようなアイデアしか出ないだろう?
番人: 動きは、にぶくなるでしょうね。
エンマ:職場に若者が入ってこないということは、高齢者が働かねばならんぞ。
番人: はい、特に製造業で、65歳以上の労働者はここ20年で2倍に増えました。今後さらに増える予定です。
エンマ:外国の人に、日本に来てもらえないのか?
番人: 円安なので、日本に来ても高い収入になりません。それに韓国やドイツなどの方が待遇が良いということもあって、優秀な外国の人たちの目がなかなか日本に向きません。
エンマ:地獄のエンマが心配することでもないのだろうが、こんな状態で日本の技術は承継していけるのか?
番人: 地獄の門番の私が答えるのも変ですが、日本の誇る零細企業や小規模企業の熟練の技は、世代交代で伝えられていかなければ、行き詰まるでしょうね。
新しい企画が埋もれていく?
エンマ:日本の技術が世界の中に埋もれ始めたのは、この「少子化」「高齢化」が原因か?
番人: 大きな要因の一つだと言われています。
エンマ:日本の中高年や老人は、アイデアに乏しいのか?
番人: 新しいニーズを取り込む力が弱いと言われています。
エンマ:ほう、例えば?
番人: エンマ様は「ルンバ」をご存知ですか?
エンマ:ああ、あの米国製のロボット掃除機だな?日本人が作りそうなものなのに。
番人: 日本のメーカーでも、動く掃除機のアイデアは若い開発者から出ていました。ところが、仏壇のろうそくを倒して火事にならないかとか、小さな子にケガをさせたらどうするのかという議論が先行して、外国より先にロボット掃除機を作り上げることが遅れ、市場も奪えなかったといわれます。
エンマ:残念な話だ。
番人: ドローンについても同じようなことが言われています。
エンマ:ドローンが?
番人: そうです。頭の上に落ちてくることばかりが恐れられて悪者になってしまい、ドローンの運用を定める役所も、開発する企業も世界の様子ばかり見て、日本では遅れています。自動運転のバスや自動車も、念には念を入れる日本ではがんじがらめです。
エンマ:なるほど。便利さよりも、万が一の場合に「誰がどう責任をとるのか」が、先走るのじゃな。
建設業界
番人: 日本中の橋やトンネル、港湾岸壁が老朽化してきていて、72万カ所の半分以上を今後つくり直す時期にきているのに、労働者が足りません。
エンマ:建設業は、若者がいないと動きがとれないぞ!
番人: さらに、2024年度からは建設業の労働環境をよくするために、改正労働基準法が適用される予定です。
エンマ:ほう、法律で長時間のきつい労働をなくそうというのだな?
番人: はい。その影響で、新しく21万人の労働力を確保しなければならず、今年の20歳の60万人ほどの男性の3分の1を建設業にまわさなくちゃならないという計算です。
エンマ:むちゃな話や。
鉄道・水道・都市ガス
エンマ:人口が減れば、電車に乗る人も減るのじゃないか?
番人: はい、列車の定期券の購入は、15年後は今より2割は減ると試算されています。
エンマ:ただでさえ、最近はテレワークが増えて、通勤に列車を使う割合が減ったじゃろ?
番人: 高齢者が増えて、自宅周辺で過ごすことが多くなって、毎日鉄道に乗る必要のない人が確実に増えています。
エンマ:あぶないのは、鉄道だけか?
番人: 実は、人口減少は水道事業にも影響を与えます。水の使用量が減って水の単価が上がることはもちろんですが、水道管や浄水場などの老朽化も問題です。現在、日本国内では年間2万件を超す漏水や破損事故をおこしています。水道施設を新しくするには、130年という時間と多大な費用がかかると計算されています。
エンマ:水道料金を値上げせねば仕方がないな?
番人: はい、EY新日本有限責任監査法人と水の安全保障戦略機構がまとめた「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?」2021版によれば、2043年度までに水道料金の値上げが必要になるのは全体の94.3%におよび、今後20年で水道料金は1.5倍にもなる予定です。全国193の都市ガス会社のガス事業についても同様だそうです。
自衛官、警察官、海上保安官、消防士
エンマ:おい、若者の数が減るということは、元気でぴちぴちした奴が少なくなるということだな?
番人: おっしゃるとおりです。
エンマ:若い自衛官が少なくなるというのは、トルコやウクライナを見ると心配だ。
番人: 警察官も人材が十分に確保できなくなってきます。
エンマ:領海侵犯を繰り返す他の国の奴らを監視してくれている、海上保安官が高齢者ばかりというのも困るな。
番人: 消防車や救急車で駆けつけてくれる人たちが高齢者ばかりというのも‥‥。
安心して子どもを育てられる社会
エンマ:なんで日本は、こんなに少子化が進んできたのだ?若い夫婦はお金がないからか?
番人: 日本は、出産や育児、子どもの医療費など、比較的優遇されているはずですが。
エンマ:給食費が問題か?
番人: 日本の給食費は、質と量を考えれば安いと言えます。
エンマ:ならば、どうして出生率が低いのだ?
番人: 15歳以上の教育費のかかり方が大きいのです。
エンマ:なるほど。大学進学で親の負担が一気に増えるというのは本当なのだな。
番人: さらに、日本のマスコミにも責任の一端があるようです。
エンマ:どういうことだ?
番人: 子どもの存在が夫婦の自由を少なくするとか、ベビーカーがバスにいやな顔されたとか、登校拒否やひきこもり、児童虐待やいじめ、将来の就職や経済力に対する不安など、様々な情報が「子供を持つことは煩わしい」と夫婦に少なからず感じさせているようです。
エンマ:暗い報道ばかりするからいかんのだ。そんな奴は、舌をぬいてやれ。
番人: このまま少子化が続けば、地獄もジリ貧の状態になってしまいます。
エンマ:家庭に子どもがいることは幸せなことだと、若い夫婦に知らせねばならんのう。
番人: エンマ様、地獄の私たちにも、何か子育ての手伝いはできないものでしょうか?
エンマ:この地獄を、子供たちの悪行を戒める「教育テーマパークUSJ」として公開してはどうだ?
番人: 教育テーマパーク USJ?
エンマ:そうだ。USJ、ウソツキハ・サンズノカワト・ジゴクガマツデという施設さ。
文責 玉木英明