2023-08 なくなっていく運命か?辞書に雑誌に分厚い

                                                                     





あのウルトラ男が

ウルトラ男: ショワッチ!

本屋の店員: うわっ!びっくり!

ウルトラ男: すこし聞きたいことがある。

本屋の店員: お、お客様、その格好でいらしたのですか?

ウルトラ男:ああ、地下鉄に乗ってきたぞ。このスタイルが、私は一番落ち着く。

本屋の店員: 勇気がありますね。

ウルトラ男:かっこいいだろ?他の乗客たちは私の姿に、みんなエキサイトしていたぞ。

本屋の店員: 暑くありませんか?

ウルトラ男:なんの、これしき。私は子供のころ、日曜の夜7:00から3分だけ出てくるこのヒーローに狂喜乱舞した。

本屋の店員: お客様は60歳代以上ですね?

ウルトラ男:ど、どうしてわかった!?

本屋の店員: そのヒーローのあとの番組「おばけのQ太郎」だったでしょ?

 


休刊、廃刊ラッシュ

ウルトラ男:本を買いたいのだが‥。

本屋の店員: ここは本屋です。何でもご用命下さい。

ウルトラ男:「週刊朝日」がほしいのだが、見当たらないのだ。

本屋の店員: 申しわけございません。先々月、休刊になりました。

ウルトラ男:休刊だと?かってに休むな。では「セブンティーン」をもらおうか。

本屋の店員: 2021年9月で休刊になりました。

ウルトラ男:「週刊パーゴルフ」と「アサヒカメラ」はあるか?

本屋の店員: いずれもここ3年の間に休刊になりました。


ウルトラ男:仕方ないな。では孫に小学館の「小学2年生」と「小学6年生」を買っていってやるかな。あれの「ふろく」は実に楽しい。

本屋の店員: ごめんなさい、もう10年も前に廃刊になりました。

ウルトラ男:学研の「科学」と「学習」がいいな。あれも「ふろく」が素晴らしい。

本屋の店員: 15年前に廃刊です。

ウルトラ男:「ロードショー」はあるか?きれいな写真が素敵だ。

本屋の店員: 2008年に廃刊になってます。

ウルトラ男:うちの女房に「主婦の友」をくれ。家計簿がふろくについてるから、便利だと言ってた。

本屋の店員: 16年ほど前に廃刊になりました。

ウルトラ男:ニューズウィークはどうだ?ニュートンはどうだ?玉木塾においてあるぞ!

本屋の店員: 実はニューズウィークは2013年から電子版に移行していて、別の出版社が印刷物にして提供している状態ですし、ニュートンも存続はしているのですが、2017年に出版元が民事再生手続きに入っていてゴタゴタの状態です。

ウルトラ男:では今日の毎日新聞の夕刊はあるか?帰りの電車で読むぞ。

本屋の店員: 夕刊は地方新聞を中心に、多くが廃止になっています。


少年ジャンプ、マガジン、サンデー

ウルトラ男:私の大好きなマンガが載ってる「少年サンデー」が、ずいぶん薄っぺらになってしまったようだが。

本屋の店員: はい、「名探偵コナン」ががんばり続けてはいますが、ちょっと中身がうすくなってきました。

ウルトラ男:今、少年誌は、何がどれくらい売れているのだ?

本屋の店員: 少年ジャンプが147万部、少年マガジンが57万部、少年サンデーは14万部ほどに落ち込んでいます。

ウルトラ男:ページ数が少なくなってしまうということは‥‥

本屋の店員: はい、出版業界では「少年サンデーは危ない」とうわさになっています。



六法全書も

ウルトラ男:ようし気分を変えて、今日は六法全書を買って帰ることにしよう。

本屋の店員: 岩波書店の六法全書は、2013年を最後に刊行を終えました。

ウルトラ男:ど、どうしてだ!

本屋の店員: 法学部生以外の大学生が六法全書をほとんど買わなくなってしまったからです。

ウルトラ男:ば、ばかな!六法全書だぞ!

本屋の店員: 三省堂と有斐閣(ゆうひかく)という出版社が刊行していますが、部数は多くありません。

ウルトラ男:何でそんなことになってきたのだ?

本屋の店員: 六法全書をインターネットで調べられるようになったのです。

ウルトラ男:ネットで?

本屋の店員: そうです。五十音で調べたり、事項別で引き出したり、さらに六法別でも法令集を調べられるので、たいそう便利だそうです。

ウルトラ男:紙に書いてないと‥‥。

本屋の店員: 法令データの更新を頻繁に行えることと、データを調べることが簡単なこと、さらに、条文の読み上げ動画はYouTubeでも視聴することができます。

ウルトラ男:六法全書をデジタル化したというのだな?

本屋の店員: そうです。デジタル六法全書はもちろん、音声を聞いて六法全書を覚える「おしゃべり六法全書」というのも人気があります。

ウルトラ男:なんだか、重みがないな。

本屋の店員: 総務省が、法令データ提供システム「e-Gov」(イーガブ)というサイトを運営していて、だれでも法律が調べられるようになっています。

ウルトラ男:代金はいくらだ?

本屋の店員: 無料です。

ウルトラ男:べ、便利やないか。

本屋の店員: ウルトラマンさん、関西の出身だったのですね?

ウルトラ男:動揺すると、なまるのや。

本屋の店員: 書籍になっている六法全書を新品で6冊セットで買うと16,000円ほど、e-Govで全ての法令データをダウンロードすると無料で圧縮ファイル275MBでOKです。 


電話帳、広辞苑、卒業アルバム

本屋の店員: 50音別電話帳「ハローページ」も2020年に発行が終了しました。

ウルトラ男:私などは、電話帳で自分と同じ苗字の人が何人いるか数えて、夏休みの自由研究で発表したぞ。

本屋の店員: そんなふうに使っていたのですね。ハローページは個人情報がモロに出てしまいます。女性の名前だと一人暮らしが知れ渡ってしまったり、いたずら電話の標的になったり、さらには暗証番号を予測されたりするからと、自分の情報を載せること自体が大幅に敬遠されるようになってしまいました。

ウルトラ男:私の小さかった頃は「個人情報」という考え方自体が希薄だったぞ。どこでも氏名や住所、電話番号が一覧表になっていたし、卒業アルバムや学級名簿には連絡先はもちろん、保護者の職業まで書いてあった。

本屋の店員: ウルトラ男さん、最近では固定電話を家に置かない家庭も増えています。「家の電話」の番号を調べる本など、意味がなくなってきたのです。

ウルトラ男:広辞苑も私の好きな本の一つなのだが‥。

本屋の店員: 広辞苑は最も新しいものでも2018年製、10年に一度ほどしか発行されていません。

ウルトラ男:広辞苑の発行は、10年に一度?

本屋の店員: はい。したがって最近ではLGBTの表現など、微妙なニュアンスの訂正が必要なものが生じ始めています。

ウルトラ男:なるほど。時間の経過と共に、表現や定義が微妙に変化してしまうものなどは、「紙に印刷されたもの」では、適応に時間がかかりすぎるだろうな。

本屋の店員: 卒業アルバムも、最近は「デジタルブック」で作成する学校が増えてきました。

ウルトラ男:デジタルブック?

本屋の店員: 写真がデータで保存されていますから朽ちません。さらにその中の運動会の写真をクリックすると「動画」を見ることができるような卒業アルバムまででてきました。

ウルトラ男:えらい時代やな。

 


本屋を苦しめているのは

ウルトラ男:仕方ない。今日のところは道路地図でも買って帰るかなぁ。

本屋の店員: 地図の「ワラジヤ」は2002年に倒産しました。

ウルトラ男:なんだと?じゃぁ、歌を覚えるのに「平凡」でも買って帰るかなぁ。

本屋の店員: 昨年、廃刊になりました。

ウルトラ男:おいおい、じゃぁ、株価をみるのに「オール投資」でも買って帰るかなぁ。

本屋の店員: 2012年に休刊になりました。

ウルトラ男:うおお、じゃぁ、旅行に出かけるのに「ぴあ」でも買って帰るかなぁ。

本屋の店員: 10年以上前に廃刊になりました。

ウルトラ男:えげつない。じゃぁ、コンピューターの勉強するのに「週刊アスキー」はある?

本屋の店員: 10年前に廃刊になりました。

ウルトラ男:冗談だろ?じゃぁ、競馬の予想するのに「競馬ニホン」でも買っていくよ。

本屋の店員: 6年前に廃刊になりました。

ウルトラ男:あのな、これほど本屋と出版界を苦しめているモノは、いったい何だ?

本屋の店員: スマホで調べれば、すぐにわかると思います。

文責 玉木英明