2024-04 太陽光パネル。日本での普及の速度は

                                                                     



太陽神アポロンと

                    天文の神ウラニアが

ウラニア:ねえアポロン。

アポロン:うん‥なんだい?‥。

ウラニア:さっきから、何してるのよ?

アポロン:この月桂冠を通して人間たちのようすを見ていたんだ。

ウラニア:人間たち?

アポロン:そうだよ。彼らが太陽の光を集めて、必死に電気を得ているのだ。

ウラニア:化石燃料に頼らない方法を、ようやく真剣に考え始めたようね。

アポロン:そのようだね。

ウラニア:もっと早くから太陽光でエネルギーを得ていれば、地球もあんなに温室みたいにはならなかったでしょうね。

アポロン:いまや二酸化炭素の影響で、世界中が異常気象だ。

ウラニア:ねえアポロン、われら太陽神と天文神に漫才をさせるなんて、タマキタイムズの作者も、ちょっとやるじゃない?

アポロン:さし絵の雰囲気が、先月のハクション大魔王とちがって、シックな雰囲気だ。

ウラニア:いや、ハクション大魔王も、読者には評判だったそうよ。

アポロン:この落差が、タマキタイムズが15年以上も続く原動力だね。

 


太陽は巨大なエネルギー源

ウラニア:アポロン、太陽光のエネルギーって、本当にたよりになるの?

アポロン:失礼なことをいうなよ。地上で利用できる太陽光だけで世界のエネルギー消費量の約50倍もあるんだよ。

ウラニア:どういうこと?

アポロン:下の地図のWorldの四角に太陽電池を敷き詰めれば、全人類のエネルギー需要量をまかなう電力が得られるのさ。

ウラニア:え?じゃその右のEU-25に太陽電池を敷き詰めれば、ヨーロッパ中に電力が行きわたるってこと?

アポロン:そのとおりさ。

ウラニア:半世紀ほど前は、世界中を太陽電池でおおっても電力は全然足りないってみんないってたじゃない?

アポロン:太陽電池の性能が、飛躍的に向上したのさ。

ウラニア:太陽電池をつくる原料は、十分あるの?

アポロン:シリコンを用いる太陽電池の原料は、無限だ。

ウラニア:シリコン?

アポロン:ケイ素を含む樹脂のことさ。地球の表面に無尽蔵にある。

ウラニア:それじゃ安心ね。その原料を使って、太陽電池をガンガン作ればいいじゃない?

アポロン:それはそうなんだけれど‥。



太陽電池をつくる国

ウラニア:太陽電池を世界で一番たくさん製造してるのは、どこの国?日本?アメリカ?

アポロン:60%を越える太陽電池が、中国製だよ。

ウラニア:どうして?日本製の方が優秀でしょ?

アポロン:中国製は、とにかく安い。

ウラニア:どうして、そんなに中国製ばかりが、もてはやされるのよ!

アポロン:発電効率が10%悪くったって、太陽電池の値段が半分以下なら中国製を10%多く並べるほうが安い。

ウラニア:だから、どうしてそんなに中国製は安く作れるのよ!

アポロン:シリコンを生成するのにたくさん電力が必要なのだけれど、日本は電気代が高いのさ。

ウラニア:だって、中国は10年ほど前まで再生可能エネルギーゼロの国だったのでしょ?

アポロン:中国の大気汚染やPM2.5なんてのは知ってるでしょ?

ウラニア:知ってるわよ。太陽が曇るような写真もよく見るし、中国の都市での健康被害はよく聞く話よね。

アポロン:その中国政府が、古い石炭火力発電所を強制的に閉鎖して、再生可能エネルギーへの方向転換を進めてるのさ。

ウラニア:そんなことできるの?

アポロン:2016年から2020年までの5年間で、中国政府は太陽光発電の普及推進に17兆円を出した。

ウラニア:凄まじいわね。それで、中国は成功したの?

アポロン:爆発的な導入で、中国全土344都市で再生可能エネルギー導入に成功しているよ。

ウラニア:ちょっと聞いてもいい?

アポロン:なんなりと。

ウラニア:私の大好きな日本はどうなの?日本は、太陽光パネルの生産・導入量世界一って、2000年ころに聞いたわよ。

アポロン:いまでは中国、マレーシア、台湾、ベトナム、韓国で全体の9割以上を生産してる。日本の生産量は、今では世界の1%ほどになっちゃったのさ。

 


日本の太陽光発電は

ウラニア:日本国内では太陽光発電が進まないの?

アポロン:発電所から各家庭まで「電線」がすでにきっちりとつながっていることが「太陽光発電」が進みにくい原因でもあるのさ。

ウラニア:どういうこと?

アポロン:日本は、自分の家の屋根の上で太陽光で発電しなくても、電線をつなげば良質な電力を豊富に得られる国だ。

ウラニア:電気を使えない人って、世界でどれくらいいるの?

アポロン:5人に一人さ。

ウラニア:ええ?20%も?

アポロン:そう。その人たちが電力を得るのに、「太陽光」は救世主になる。

ウラニア:日本で屋根の上に太陽光パネルを設置している家は「電線」はつながってないの?

アポロン:そんな家はほとんどないよ。逆に、屋根の上で太陽電池で発電した人はそれを電力会社が買い取りましょうという制度を導入した。

ウラニア:それが電力の「固定価格買い取り制度」ね。 

アポロン:ところが、その買い取り金額が年々下がってきて、2012年の当時の4分の1ほどの値段に下がってきた。まだ下がりそうだ。

ウラニア:ええ?10年で4分の1?

アポロン:そうだよ。

ウラニア:あかんやないの。

アポロン:あきまへん。

 


日本の太陽光発電を後押しするもの

ウラニア:太陽光発電は、日本ではどんどん増えていくの?

アポロン:実は、太陽光発電が飽和状態になっている地域もあるのさ。

ウラニア:それは、どこ?

アポロン:九州だ。大規模産業用太陽光発電がたくさんある地域だ。タマキタイムズの2011年4月号を見るとわかるね。

ウラニア:電力は貯めておけないの?

アポロン:少量なら蓄電池にためられるのだけれど、大きな地域で考えると、正直なところ、電力は使う電力量を見ながら発電すべきものなんだ。

ウラニア:なるほど。昼と夜、風の有無に左右されずに、安定して電力を得られるようにすることが大切なワケね。

アポロン:地域で使う電気の需用量に対して、例えば太陽光による電力の供給が多すぎてもこまるのだ。送電線の関係で、日本では九州で発電した電気を北海道で消費することもできない。

ウラニア:東日本大震災や中東情勢、ウクライナとロシアの状況も含めて化石燃料や原子力にたよらない、電力に対して日本が自給自足の割合を増やすことが、日本がエネルギーにおいて自己防衛する手段なのね。

 

大量の廃棄太陽光パネル

ウラニア:太陽光パネルのゴミが、大量に出はじめているって聞いたわ。

アポロン:もともと太陽光パネルは厳しい自然環境に耐えられるように頑丈に作られているので、リサイクルが難しいのさ。

ウラニア:せっかく、たくさんの電力を使って作ったのに?

アポロン:そう。ざんねんだけれど、世界中で放置や不法投棄も大量に出はじめた。

ウラニア:分けて再利用できないの?

アポロン:ガラスの部分を貝殻などを混ぜて焼き固めて、イチゴの栽培用の土に混ぜ合わせて保水性と通気性の高い土壌をつくるなど、いろんな方法が試されてはいるけれど、まだ決め手がないようだ。

ウラニア:発電できる塗料、ペロブスカイトへの転換はどうなの?

アポロン:よく知ってるじゃないか。

ウラニア:タマキタイムズの100号記念は、ペロブスカイトについてだったでしょ?たしか、201712月号だったはずよ。

アポロン:日本の技術力が世界に先駆けて開発した「発電できる塗料」のことだね。

ウラニア:そうよ。その塗料を使えば、太陽光パネルのリサイクルや廃棄を考えなくてもいいのじゃない?

アポロン:とりあえず、どこにその塗料をぬろうか?

ウラニア:そうね。古くなって廃棄しなくちゃならない太陽光パネルを塗装してみてはどう? 

文責 玉木英明