2024-03 花粉の量が半分以下で生育速度が1.5倍。エリート秋田杉

                                                                     



大魔王が‥

少年 :は~、は~、は~‥はくしょん!

大魔王:呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!

少年 :うわっ!びっくりした!誰だ、おまえは?

大魔王:私をご存知ありませんか~?

少年 :アラジンと魔法のランプに出てきたあの‥あの‥

大魔王:残念、アラビアンナイトとは関係ありません。

少年 :その声、聞いたことがあるぞ!わかった「笑ウせるすまん」だ!

大魔王:黒い服は着てないでしょ!

少年 :マグマ大使だ!いや、スーパーマンだ!もしかすると、おらぁグズラだどかな?いや、ガッチャマンの南部博士!ううん、カバトット!ちがう、かいけつタマゴンだ!

大魔王:古い作品まで、よく知ってるなぁ。

少年 :とんでも戦士ムテキングのタコキチ!いや、ワン・ピースのガイモン!

大魔王:よくそんなに大平透(おおひらとおる)の声の作品をあげたものじゃ。亡くなられた大平さんも喜んでるじゃろうな。

少年 :わかってますよ。ハクション大魔王さん!

大魔王:なんだ、知ってるのなら初めから言ってくれればいいのに。いじわるな少年じゃ。

少年 :くしゃみで壺からでてくる、あの大魔王でしょ?この前は、タマキタイムズに201811月号で登場したのじゃなかった?

大魔王:読んでてくれたのじゃな。うれしいではないか。あの時はゲーム依存症についての内容じゃった。

少年 :タマキタイムズに出てくるヒーローは、少し古くない?

大魔王:ハクション大魔王の最初の放映は1969年じゃったが、2020年に新作が放送されたのじゃよ。

少年 :なんと、4年前に放映されたばかりじゃないの!

大魔王:そうじゃ。タマキタイムズでとりあげられると、新作が放送になるのじゃよ!

 


くしゃみは呪文?

大魔王:この季節、花粉症のヒトが多いので、わしは毎日毎日、何十回もつぼから出てこなくてはいけないのじゃよ。

少年 :くしゃみのことを英語でコフ(cough)って言うのでしょ?

大魔王:それは咳(せき)じゃ。くしゃみはスニーズ(sneeze)じゃよ。

少年 :スニーズ?なんだか、鼻水をすすってるような感じの言葉だね。

大魔王:日本語の「くしゃみ」も、もとは「くっさめ」という呪文だったのじゃよ。

少年 :呪文?

大魔王:そうじゃよ。くしゃみをした時に早死にしないように唱えた呪文じゃ。

少年 :くしゃみは縁起の悪いことだったの?

大魔王:そうじゃ。くしゃみは「凶事の前兆」と考えられておったのじゃよ。

少年 :「くっさめ」ということばは、くしゃみの音に似てるね。

大魔王:ベトナム語でくしゃみは「ハッホイ」じゃ。老人の大きな声のくしゃみそのものじゃろ?

少年 :おもしろいなぁ。擬声語だね。

大魔王:英語でくしゃみの音は「アチュー」だし、ドイツ語「ハッシー」、ベンガル語では「ハッチ」、ポーランド語で「キハッチ」、タガログ語で「ブマヒン」じゃ。

少年 :タガログ語は口を閉じて我慢していたあとでくしゃみをした感じがするね。

大魔王:トルコ語で「ハプシマック」などは、日本のハクションとよく似ておるぞ。

 


くしゃみの原因「スギ」だけ?

少年 :くしゃみの原因は「スギ」だけなの?

大魔王:実はスギだけじゃなくて、ヒノキ花粉、コナラ花粉、ヨモギ花粉、ヒルガオ花粉、シダ植物の胞子なども原因なのじゃよ。

少年 :そうすると、スギばかりが悪者じゃないってこと?

大魔王:ああ、そうなんだ。しかし日本アレルギー学会の調査によると、鼻水や目のかゆみ、喉の痛みなど日本人の30%がスギ花粉症の症状を経験しているそうじゃ。

少年 :スギ花粉はいつ飛ぶの?

大魔王:2月~4月がスギの花粉量が最大じゃ。

少年 :誰が、日本にこんなにたくさんスギを植えたの?

大魔王:明治時代以後の日本の国策じゃった。

少年 :建築材としてヒノキは優秀でしょ?なんでヒノキは植えられなかったの?

大魔王:ヒノキは成長がおそいのじゃ。スギは成長が早い。ただ、ヒノキ花粉も花粉症の原因じゃよ。

少年 :ああ誰か、花粉を飛ばさないスギの木をつくりだしてくれないかなぁ。

大魔王:実は、花粉の飛散量が半分以下というスギを、秋田県が開発したんじゃ。

少年 :ええ?ほんとうに!?

大魔王:ああ、その名も「エリート秋田杉」じゃ。

少年 :えり抜きってこと?

大魔王:そうじゃ。人間のために有益なものだけえり抜かれたスギじゃから「エリート」という名称がつけられておるのじゃよ。

少年 :どうして「エリート秋田杉」は、花粉が少ないの?

大魔王:花粉を出す「雄花」が極めて少ないのじゃよ。


16000本の中の10本

少年 :どうやってそんな品種をつくったの?

大魔王:たくさんのスギの中から選び出したのじゃよ。

少年 :一本一本、その性質を確かめながら?

大魔王:そう、秋田県が16000本の中から、大きさや材質の優れたスギ、成長のスピードが速くて花粉を出す雄花の少ないスギを選び出し、まず47本だけに絞り込んだ。

少年 :ええ?たった16000本の中から、47本?たいへんな時間がかかったでしょ?

大魔王:ああ、6年がかかったそうじゃ。えげつないほど長い時間や。

少年 :大魔王は、関西人だったんだね?

大魔王:感動すると、なまるのや。

少年 :エリート秋田杉は、16000分の47の選りすぐりなんだね?

大魔王:いや、さらにその中から「エリート秋田杉」として合格したのは10本だけで、その10本のスギから苗木をつくり出したのじゃよ。

少年 :大変な作業を秋田県の林業関係者は積み重ねてきたのだね?

大魔王:そうじゃよ。さらに今、秋田県は厳しい冬でも順調に成長できるかどうか検証して、3年でエリート秋田杉の種の販売を始めようとしているのじゃ。

 


1.5倍速で成長するスギ

大魔王:このスギのすごいところは、通常の1.5倍以上早く成長するのじゃ。

少年 :おお、そうすると苗木を植えてから伐採するまでの期間が短いということだね?

大魔王:そうじゃ。さらに、成長が早いことで木を植えた後に周辺の雑草などを除く「下刈り」の回数が減るので、伐採・出荷までの費用が半分になると見込まれておる。

少年 :木の背丈が高くなるのが早いの?

大魔王:いや、幹が太くなるのがはやいのだ。だから、製品として売れるようになるのが早いのじゃ。

少年 :育つのが早いということは‥

大魔王:ああ、「大めし食らいのスギ」ということにもなる。

少年 :どういうこと?

大魔王:木が大きくなるのに、何をつかう?

少年 :ええと、理科の時間に習ったけれど‥光合成するのに水と二酸化炭素をつかって‥

大魔王:そうじゃ。エリート秋田杉が通常の1.5倍以上の速度で生長するということは、二酸化炭素の吸収量も1.5倍以上になるということじゃ。

少年 :ということは、この杉をたくさん植えれば、地球上の二酸化炭素を減らすことに貢献するってこと?

大魔王:そのとおりじゃ。

 


すべての木を「エリート」に

少年 :スギだけじゃなくて、山に生えている木をすべて「エリート」にできないの?

大魔王:脱炭素社会をつくるのに役立つということで、実は日本は2021年5月に「みどり戦略」を策定して、2030年までに林業用の苗木の3割、2050年までに9割以上を「エリートツリー」にしようと意気込んでいるのじゃよ。

少年 :実現すれば、たのもしい日本の山になるね。ただ、日本中が「エリート」ばかりになると、花粉があまり飛ばなくなるから、くしゃみをする回数が減ってしまわない?

大魔王:そうじゃのう。そうなれば、花粉も減ってくしゃみをする人の数も減るから、私の出番も激減してしまうのう。

少年 :壺が「くしゃみ」に反応するのではなくて、「楽しい笑い声」に反応するようにしてはどう?

大魔王:楽しい笑い声に反応して登場する大魔王‥「ばくしょう大魔王」じゃな?

少年 :なんだか、魅力的な大魔王だね。

大魔王:スギの名前も「エリート」なんてしゃれた名前より、わしならもっとお茶目な名前をつけるのじゃが。

少年 :どんな名前?

大魔王:「できスギ」じゃ。

少年 :それって、調子に乗りスギとちがう?

大魔王:わっはっはっはっはっは。

少年 :笑いスギだよ。

文責 玉木英明