あの仮面のライダーが
ライダー:へーんしん!とうっ!
バイク屋:あっ、またあのおじさんだ!派手な自転車で走りながら両手をハンドルから離したぞ!・・・ああ、こけた!
ライダー:おい、そこのバイク屋!
バイク屋:わ、私ですか?
ライダー:そうだ。今のは見なかったことにしといてくれ。
バイク屋:・・・今日は自転車での登場ですね。なかなか、派手なお姿ですね。
ライダー:ああ、今日のは、だれのコスチュームかをあててみろ。言っておくが、月光仮面(げっこうかめん)でも隠密剣士(おんみつけんし)でもないぞ。
バイク屋:知ってますよ。仮面ライダーアマゾンさん。
ライダー:・・・どうしてわかったのだ?
バイク屋:仮面ライダーの中でも、生後間もなく南米アマゾンで遭難して、野獣の中で育ったという設定の主人公は新鮮でした。
ライダー:よく知ってるじゃないか。
バイク屋:仮面ライダーがかみついたり引っかいたりする攻撃をするのは「アマゾン」だけでしたよね。
ライダー:ううう・・・うれしいじゃないか。ようやく私のコスチュームを理解してくれたか。
バイク屋:泣かないでくださいよ。それにしても、よくそんな自転車を用意しましたね。
ライダー:ま、まだオートバイの免許を取得できてないのだ。
バイク屋:そのスタイルで街の中を走るとは、勇気がありますね。
ライダー:沿道の庶民たちが私を見て沸き立っていた。きっとヒーローの登場に酔いしれていたのだと思うぞ。
バイク屋:タマキタイムズの著者も、よくぞ自転車をベースにこの形を仕上げましたね。
ライダー:時間がかかったそうだ。
バイク屋:著者の大きな意欲を感じますね。
アマゾンの干ばつ
バイク屋:ところで、いつも元祖・仮面ライダーのスタイルで登場するおじさんが、どうして今回は「アマゾン」なのですか?
ライダー:これを見てくれ。
バイク屋:おお、船が陸地に上がっているではありませんか。どうしたのですか?
ライダー:これはブラジル、アマゾンの支流だ。
バイク屋:アマゾン?熱帯雨林の?
ライダー:そう、アマゾン川の支流の水位が1902年の観測開始以来で、最低になっているのだ。
バイク屋:干上がっているではありませんか。
ライダー:舟が陸にあがってしまうほど、ひどい干ばつだ。
バイク屋:雨が降らないのですか?
ライダー:アマゾン上流では、雨量ゼロの月が150日以上続いているそうだ。
バイク屋:みんなが歩いているこの写真の場所は、川底ですか?
ライダー:そう、ブラジル北部マナウスという場所だ。川底が広い範囲で露出している。
バイク屋:いつからこんな状態なのですか?
ライダー:ここ数年ほど雨が極端に少なくなり始めたのだが、こんなにひどい状況になったのは去年からだそうだ。
バイク屋:こんな状態だと、ブラジルの経済に大きな影響が出ているでしょう?
ライダー:アマゾン川は水量が豊富で深さも十分だったから、大きな船が航行できた。
バイク屋:大きな船?
ライダー:そう、遠洋航海用の船でも、河口から4000km上流まで航行できた。
バイク屋:これでは、モノを運べないでしょう?
ライダー:ああ、ブラジルに高速道路がなくなったのと等しい状況だそうだ。
バイク屋:アマゾン川の水位は、もとにもどるのですか?
ライダー:むつかしい。それどころか、水位がさらに下がっていく可能性もあるそうだ。
バイク屋:ひどい状態ですね。
ライダー:ブラジル各地で、乾燥による森林火災も相次いでいる。
3倍の価格、オレンジジュース
バイク屋:農産物は・・・
ライダー:大きな打撃をうけ始めている。
バイク屋:オレンジジュースがスーパーマーケットからなくなっているとききましたが。
ライダー:ああ、値段もここ2年で3倍に跳ね上がっているよ。
バイク屋:コーヒー豆は、どうですか?
ライダー:去年11月29日に、半世紀ぶりの高値をつけたそうだ。
バイク屋:むちゃくちゃやないですか。
ライダー:あんた、関西の出身だったのだな?
バイク屋:動揺するとなまりますのや。
原始林がどうして
バイク屋:どうしてアマゾン川のようなもともと雨がたくさん降る地域が干ばつになってきたのでしょうか?
ライダー:地球温暖化の影響らしい。
バイク屋:温暖化で何が変わるのですか?
ライダー:植物の蒸散量が増える。
バイク屋:なるほど、暑いから植物が水分をたくさん蒸散するわけですね?
ライダー:さらに、地表からの水の蒸発量が増える。
バイク屋:蒸発量が多くなったって、雨がたくさん降れば、水は地面にもどるでしょ?
ライダー:それが、空気が冷える原因がなくて、水蒸気が雨になって降らないのだそうだ。
バイク屋:そうか。水蒸気を含んだ空気も、冷えなければと水滴はできないということですね。
ライダー:そう、そしていったん雨がふらなくなれば、蒸発した水分が地表にもどらない。戻らなければ、植物が枯れ、砂漠化が進む。雨がふらないので、気温ばかりが上昇していく。さらに雨量が減る。干ばつが深刻化する。
バイク屋:仮面のライダーさん、今回すごくシリアスですね。
地球温暖化だけが原因?
バイク屋:干ばつの原因は地球温暖化だけですか?
ライダー:実はアマゾンの熱帯雨林の大規模な伐採も原因だと言われてるよ。
バイク屋:乱開発というやつですか?
ライダー:そう、ヒトが大豆の栽培のために木を切り倒して畑にかえているのだ。
バイク屋:光合成をおこなってくれる大量の木々が、どんどん消えているわけですね。
ライダー:そうだ。熱帯雨林が二酸化炭素を吸収して、地球の肺の役目をしていてくれたのに、それが小さくなっていって、機能が急速に衰えているのだ。
バイク屋:アマゾン川は世界一大きいのでしょう?
ライダー:長さはアフリカのナイル川の方が少し長いのだが、流域面積は南米のアマゾンが世界一だ。700万平方キロメートルという流域面積は、日本の面積の18倍にもなる。
バイク屋:日本の18倍?
ライダー:これはオーストラリア大陸の面積に近い広さだ。
ショッカーが
バイク屋:おじさんは、よくアマゾンのことをご存知ですね。
ライダー:私は正義の味方、仮面のライダーだ。特に今回はアマゾンのスタイルで登場したからには、アマゾンを放っておけない。
バイク屋:そういえば、昨日はショッカーの皆さんも当店にいらっしゃいましたよ。
ライダー:な、なんだと!ショッカーの連中がやって来ただと?
バイク屋:はい、アマゾンの干ばつ被害を支援するために、ショッカーの方々はブラジルへ行く計画を立てていらっしゃいましたよ。
ライダー:支援だと?あいつら、悪だくみをしているにちがいない!
バイク屋:はたして、そうでしょうか。ショッカーの皆さんはオートバイで荒れ地を走り回ることが得意なので、アマゾンの奥地までオートバイで支援物資を届けたり、医薬品を運ぼうじゃないかと言ってましたよ。
ライダー:わ、わたしだって、オートバイで物資を届けにいく意思があるぞ!どうすればいい?
バイク屋:おじさんは、まず免許をおとりください。そして、運転ができるようになったなら、オートバイを1台お買い求めいただき、アマゾンの奥地まで走っていけるよう練習を始めましょうか。
文責 玉木英明